2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンスによる再発難治性急性白血病のゲノム構造の解析
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16K09836
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野澤 真弘 北海道大学, 医学研究科, 助教 (70455632)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DNA二重鎖切断 / ゲノム修復 / 白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト細胞株を用いCRISPR/Cas9で特定部位に導入したDNA二重鎖切断(DNA-DSB)がどのように修復されるかを検討した。回収したbulk細胞からゲノムを精製し、切断部位を挟むプライマーにより増幅したPCR産物をディープシークエンスすることで、DNA-DSBがどのように修復されるかを網羅的に解析できる系を確立した。1度に10万リード以上を解析することができ、CRISPRによる切断部位に一致した多数の欠失配列と挿入を検出した。欠失修復/挿入修復比は1.5~3.1であり欠失による切断修復が多かった。欠失、挿入修復の大部分(70-80%)は20bp以内の比較的短い変化だった。CRISPR/Cas9は発現ベクターを使用しており、挿入配列の多くは、切断部位に数10~数100bpのベクタープラスミド断片を取り込むものだった。一方、一部の挿入配列は他の染色体上の配列など、遠隔の鋳型配列挿入が起きることを確認した。 抗がん剤や放射線照射によるゲノム損傷を網羅的に解析するため、ヒト白血病細胞株をEtopocide、放射線照射で処理した上で、限界希釈により細胞を撒き、これらの処置を生き延びた娘細胞を1細胞由来のクローンとして樹立し、親株とともに全ゲノムシークエンスを行った。当初構造変異(SV: Structural variation)データに着目して、娘細胞特異的な変異を解析する計画だったが、構造変異の長い配列(数100bp)の相同性は、わずかな塩基置換でも、異なるものとして解析されるため、ほとんどの構造変異が親株と娘株で一致しなかった。そこで、比較的短い(<50bp)挿入欠失データ(Indel)に着目したところ、娘細胞データから親細胞データをサブトラクションすることで、Etopocide、放射線照射によるゲノム損傷部位を網羅的に抽出することができた。現在データ解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1000人ゲノムプロジェクトデータの解析から、“ゲノム損傷部位の配列挿入による修復”が、ヒト遺伝多型として存在することを確認し、ヒトゲノムの挿入配列多型についての総説を報告した(Onozawa M. Front Chem. 2016 Nov 16;4:43)。 CRISPR/Cas9による特定部位のDNA損傷修復を網羅的に解析する方法を確立した。CRISPR/Cas9をプラスミドベクターで発現させたところ、CRISPRによるゲノム損傷部位に、プラスミドベクターが取り込まれる現象を認めた。より生理条件でのゲノム修復を解析するため、今後、プラスミドベクターではなく、Cas9タンパクを用いてゲノム損傷を導入し実験を行う。 細胞株を用いた検討で、抗がん剤や放射線照射によるゲノム損傷部位を網羅的に解析している。本邦では全ゲノムシークエンスのコストが高止まりしている事、解析に新たな手法の開発が必要なことから、経時的なシークエンス、解析コストの低下が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
全ゲノムシークエンスは高コストであり、複数の臨床サンプルで行うのは困難である。このため、特定部位のdeep sequenceで変異の数やクローンの数など、ゲノム全体のDNA損傷の代理マーカーとなる部位を検討する。
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Causes of Carryover |
予定額に1925円満たなかったが、少額であり次年度繰越とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に試薬購入目的で使用予定。
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Research Products
(1 results)