2017 Fiscal Year Research-status Report
成人T細胞白血病(ATL)におけるDNA修復機構異常の解明
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16K09848
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 正行 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (90513820)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | HTLV-1 / DNA修復異常 / NRF-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、HTLV-1ウイルス蛋白HBZによる転写因子NRF-1の阻害によって起こるDNA修復異常の解析 2、 DNA修復異常がもたらすゲノム不安定性の解析 3、ATLにおける修復異常に基づいた新規抗がん剤の組み合わせの検討 について我々は研究を進めている。1に関して、我々は修復遺伝子TDP-1がATLで著明に低下していることを以前報告し、この低下に関して転写 因子NRF-1がTDP-1の主要な制御因子であることを見出し、さらにそのNRF-1の制御にHTLV-1のウイルス蛋白であるHBZが関わっていることを発見した。この知見は昨年度Scientific Reportsにおいて論文掲載がなされた(Sci Rep. 2017 Oct 9;7(1):12849.)、NRF-1は様々な遺伝子制御にかかわる主要な転写因子の一つだが、この転写因子が修復関連遺伝子、特にミスマッチ修復にかかわる遺伝子の制御にかかわっている可能性のあることをデータベースを用いて認めた。ATLでは従来ミスマッチ修復に異常があることが報告されており、 我々はこの点に注目し今後の研究を進めていく予定である。2についてはウイルス蛋白HBZの発現するJurkat細胞にてマイクロサテライト不安定性検査を施行したところ、コントロールのJurkat細胞と比べ、マイクロサテライト不安定性があることを認めた。またHBZ transgenic miceの脾臓細胞において、コントロールマウスと比べマイクロサテライト不安定性があることも確認した。HBZ単独でgenomic instabilityを誘導することが可能であることが示唆された。この知見に関しては昨年度の第4日本HTLV-1学会学術集会で報告した。今後引き続き解析を続けていく予定である。3に関してはまだ十分な成果が上がっておらず、引き続き解析を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年の研究計画に挙げたHTLV-1ウイルス蛋白HBZによる転写因子NRF-1の阻害によって起こるDNA修復異常の解析に関しては新たな知見を見出し論文発表することができた。さらにその知見から新たに成人T細胞白血病に関する修復異常が分かりつつある。DNA修復異常がもたらすゲノム不安定性の解析に関してもウイルス蛋白単独でのゲノム不安定誘導の知見を 得ており、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ATLにおけるミスマッチ修復の破綻についての研究をウイルス蛋白の関連も含めて進めていく。HBZが単独でゲノム不安定性を誘導し、その原因としてミスマッチ修復がかかわっていることを示唆するデータを見出しており、この点を特に進めHBZのターゲット遺伝子の同定まで研究を進めていきたい。ATLにおける修復異常に基づいた新規抗がん剤の組み合わせの検討も取り組んでいく予定である。特に研究計画の変更はない。
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Causes of Carryover |
端数のため次年度に繰り越しました。物品等で使用予定。
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