2016 Fiscal Year Research-status Report
成人T細胞白血病・リンパ腫の進展におけるエピゲノム異常の網羅的解析
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16K09850
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
末岡 榮三朗 佐賀大学, 医学部, 教授 (00270603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 研介 佐賀大学, 医学部, 准教授 (10332793)
荒金 尚子 佐賀大学, 医学部, 准教授 (20321846)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌 / HTLV-1 / 成人T細胞白血病・リンパ腫 / メチル化 / フローサイトメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
当院HTLV-1専門外来を受診した110名のHTLV-1ウイルス感染者の同意を得てHas-Flow法を行いCADM1/TSLC1, CD7、CCR4、FoxP3、Taxなどの発現に関して評価を行った。これまで110名の症例について、Has-Flow法とHTLV-1プロウイルス量を同時測定しているが、臨床病期分類ではキャリアと判定される群においても一部CADM1/TSLC1陽性分画やプロウイルス量が高い症例が存在した。くすぶり型、慢性型症例においても同様であるがCADM1/TSLC1陽性分画とHTLV-1プロウイルス量は非常に強い相関をみとめた。一方、CADM1/TSLC1陽性分画と末梢血異常リンパ球、および可溶性IL-2R値との相関はプロウイルス量と比較すると弱いことも明らかとなった。 Has-Flow法を応用し、末梢血リンパ球をCADM1/TSLC1, CD7発現パターンからP,N,D分画を分離し、DNAメチル化を、網羅的に解析した。現在まで健常者、くすぶり型、慢性型、急性型ATL患者計10名におけるP,N,D分画から抽出したDNAを用いてDNAメチル化の網羅的解析を行っている。これまでの解析ではP,N,D分画特異的なメチル化状態が見出されており、病期の進展(P:D、D:N)やウイルス感染(P:D+N)特異的な遺伝子群の同定を進めている。く また、くすぶり型、慢性型患者を追跡し、CADM1/TSLC1陽性分画の変化と臨床病態との関連を評価した。病勢が変化したり、病期が進展した際には、各分画におけるメチル化の変化も同時に解析している。これらの解析からメチル化の異常と関連して発現が変化している遺伝子群から、細胞増殖やリンパ球の分化に関連する遺伝子を絞り込み、脱メチル化剤により、発現量が変化するかについても解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)HTLV-1ウイルス感染者(キャリア、くすぶり型、慢性型、急性、リンパ腫型ATL症例)におけるCADM1/TSLC1陽性分画と臨床情報との関連の評価:HTLV-1専門外来を設置以来、220名の受診者について身体所見、白血球数、異常リンパ球を含む血液検査の評価を行った。そのうち110名については、Has-Flow法とともに、HTLV-1プロウイルス量の測定を行い臨床病態との関連の解析を行った。キャリアと診断される群においても、CADM1/TSLC1陽性分画やプロウイルス量が多い症例があり、一部の症例ではくすぶり型や慢性型へ進展する場合があることを確認した。また、CADM1/TSLC1陽性分画とHTLV-1プロウイルス量、末梢血異常リンパ球、および可溶性IL-2R値がよく相関することを確認した。 (2)CADM1/TSLC1, CD7発現パターンからP,N,D分画を分離し、DNAメチル化を、網羅的に解析した:国立がん研究センター 牛島俊和部長との共同研究により、キャリア、くすぶり、慢性型の症例に関して各分画をソート後、DNAメチル化の網羅的解析を行った。これまで10名の解析の結果、P,N,D分画において特異的なメチル化状態が見出されており、病期の進展(P:D、D:N)とともにメチル化状態は亢進することを見出した。 (3)脱メチル化剤によるATL細胞内で生じるメチル化状態の変化と抗腫瘍効果との関連について解析を開始した。:病期の進展とともにメチル化の変化を認める遺伝子について、発現量との関連が高い遺伝子群を見出している。これらの遺伝子のうち、Azacytidineなどの脱メチル化剤を処理した際の、細胞増殖抑制や細胞周期の変化に関連する遺伝子の機能解析を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)HTLV-1ウイルス感染者のHas-Flow法による解析とP,N,D分画の分離によるメチル化状態の網羅的解析は継続して実施する。メチル化状態の表現型に関しては、因子ごとの解析を各症例において検証する。それらの検証の結果、再現性が高いと思われる分子に関しては、ATL細胞株における変化が再現できた細胞株において、ノックダウン、トランスフェクションによる機能解析に加えて、阻害剤が報告されている分子については、阻害剤による細胞形質への影響を解析する。 (3)臨床経過をフォローアップしている患者において各分画におけるメチル化状態の変化を経時的に記録し、連続的に変化する因子を抽出する。くすぶり型や慢性型症例に関しては異常リンパ球の増加やプロウイルス量の増加、可溶性インターロイキン2受容体の増加を指標として、病勢の変化を反映する因子の同定を計画する。 (4)動物モデルを用いた抗腫瘍効果の検討:ATL細胞株および患者末梢血リンパ球を高度免疫不全マウスであるNOJ(NOD/SCID/JAK3null)に移植し、移植後のP,N,D分画の生着能とそれに伴う、遺伝子発現やメチル化状態の変化を解析する。このマウスモデルにAzacytidineおよび新規脱メチル化剤を用いて、治療効果を解析する。 これらの課題のうち、病期に伴うメチル化異常の蓄積や遺伝子発現パターンの変化については、症例数が限られるため必要に応じて関連施設とも共同研究を行う必要がある。また、動物モデルにおいて腫瘍細胞量の評価や治療効果の判定については、末梢血におけるフローサイトメトリー、PCR法によるHTLV-1プロウイルスDNA同定、MRIなどの画像診断等を組み合わせる必要があり、これらについては、共同研究実施施設における解析を予定している。
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Research Products
(1 results)