2017 Fiscal Year Research-status Report
T細胞系列とB細胞系列間の排他的頑健性の分子機構の解明
Project/Area Number |
16K09870
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 喬子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (40565777)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | T前駆細胞 / ポリコーム / Pax5 / 系列決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において、前年度までにCdkn2a欠損かつT細胞系列でポリコーム遺伝子を欠損するマウス(Cdkn2a-/-; Lck-cre; Ring1A-/-; Ring1B fl/flマウス)の胸腺において、DN3段階の細胞がT/B系列共存細胞に転換することを確認し、T前駆細胞において、Pax5やEbf1といったB細胞系列遺伝子のプロモーター領域に対してポリコーム遺伝子複合体が結合していることやH3K27がトリメチル化されていることを示した。さらにこれらのマウスをPax5fl/flマウスと交配させることで、ポリコーム遺伝子に加えてPax5も欠損したマウスの胸腺を解析すると、T細胞は正常に分化することを示した。T前駆細胞においてPax5がポリコームによって抑制されることが必須であることが示され、これらの結果から、T系列もしくはB細胞系列の系列頑健性は、転写因子やエピジェネティック制御機構に依存することによって保たれていると考えられた。 平成29年度はこのマウスを用いて、ポリコーム遺伝子欠損T前駆細胞におけるミエロイド系列への分化能を検証した。すなわち、Cdkn2a-/-; Lck-cre; Ring1A-/-; Ring1B fl/flマウスの胸腺からDN3段階の細胞を単離し、ストローマ細胞と共培養を行った。すると、T細胞への分化を支持する環境下においてミエロイド系列細胞が出現した。また表面抗原の発現状態から、T前駆細胞がポリコーム遺伝子欠損によって一度はB細胞系列に向かうものの、最終的にはミエロイド系列へ分化する可能性を示唆する結果を得た。これらの結果は、各T系列とB系列の頑健性を解明する上で重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はCdkn2a-/-; Lck-cre; Ring1A-/-; Ring1B fl/flマウスを用いて、ポリコーム遺伝子欠損T前駆細胞におけるミエロイド系列への分化能について詳細な解析を行った。これまではこのマウスの胸腺を生体で解析することにより、DN3段階以降でB細胞マーカーの発現が見られた。このことはT細胞分化経路においてポリコームがPax5遺伝子の発現を抑えている事を示している。しかし、ミエロイド系への分化能はどのように抑えられているかは不明であった。そこでミエロイド系列への分化能を解析するために、このマウス胸腺からDN3段階の細胞を単離し、ストローマ細胞と共培養を行った。すると、T細胞への分化を支持する環境下においてミエロイド系列細胞が出現した。次に、ポリコーム欠失によるPax5の発現がミエロイド系列細胞の生成に関与するかどうかを調べた。前述のように、ポリコーム遺伝子に加えてPax5も欠損したマウスの胸腺ではT細胞は正常に分化するが、このDN3段階の細胞をストローマ細胞と共培養すると、一部の細胞がミエロイド系列に分化することが分かった。また表面抗原の発現状態から、ポリコーム遺伝子欠損によってT前駆細胞が一度はB細胞系列へ分化し、その後ミエロイド系列へ分化する可能性を示す結果を得た。これらの結果は、T前駆細胞においてミエロイド系列への分化能もポリコームによって抑えられていることを示すものである。 これらの知見は各T系列とB系列の頑健性を解明する上で重要な知見となる。これらの知見が得られたため、研究は概ね順調に進捗していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までの研究により、T前駆細胞においてポリコーム遺伝子やPax5を欠損するとミエロイド系列細胞が分化したことから、これらの遺伝子がミエロイド系列への分化を抑制していることが分かった。他のエピジェネティック機構が働いている可能性として、DNAメチル化機構に着目した。そこでT細胞でDNAメチル化を欠失させるためにLck-CreマウスとDnmt1 fl/flマウスを交配し、これらの胸腺細胞の解析をすすめる。DN3段階の細胞がミエロイド系列への分化能を有するのか、これらの細胞から生成したミエロイド系列細胞は貪食能を有するのか、またTCR遺伝子の再構成は起こっているのかどうかなどを重点的に解析する。また分化転換のメカニズムを調べるためにCdkn2a-/-; ERT2-cre; Ring1A-/-; Ring1B fl/flマウスを作製し、このマウスの胸腺細胞にタモキシフェンを作用させ、in vitro実験系でミエロイド系列への分化過程を経時的に解析する。 これらの実験によって系列決定におけるエピジェネティック制御機構を明らかにし、系列決定後にどのようなメカニズムで系列が維持されているかを検証する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Recurrent SPI1 (PU.1) fusions in high-risk pediatric T cell acute lymphoblastic leukemia.2017
Author(s)
Seki M, Kimura S, Isobe T, Yoshida K, (13 authors), Masuda K, Kawamoto H, Ohki K, Kato M, Arakawa Y, Koh K, Hanada R, Moritake H, Akiyama M, Kobayashi R, Deguchi T, Hashii Y, Imamura T, Sato A, Kiyokawa N, Oka A, Hayashi Y, Takagi M, Manabe A, Ohara A, Horibe K, Sanada M, Iwama A, Mano H, Miyano S, Ogawa S, Takita J
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Journal Title
Nature Genetics
Volume: 49
Pages: 1274-1281
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] NK Cell Alloreactivity against KIR-Ligand-Mismatched HLA-Haploidentical Tissue Derived from HLA Haplotype-Homozygous iPSCs.2017
Author(s)
Ichise H, Nagano S, Maeda T, Miyazaki M, Miyazaki Y, Kojima H, Yawata N, Yawata M, Tanaka H, Saji H, Masuda K, Kawamoto H
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Journal Title
Stem Cell Reports
Volume: 9
Pages: 853-867
DOI
Peer Reviewed
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