2017 Fiscal Year Research-status Report
リンパ球の分化・増殖におけるアナモルシンの役割の解明
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16K09871
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柴山 浩彦 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (60346202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金倉 譲 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20177489)
織谷 健司 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70324762) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アナモルシン / コンディショナルノックアウトマウス / Bリンパ球 / Tリンパ球 / 鉄・硫黄クラスター / アポトーシス / p38MAPK |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らが、抗アポトーシス分子としてクローニングしたAnamorsin(AM)は、その後の継続した研究により、鉄・硫黄(Fe-S)クラスターを形成する分子として機能していることが示されている。In vivoでの種々の細胞におけるAMの機能を解析し、それらの細胞において、重要な働きをしているFe-Sクラスター蛋白を明らかにする目的にて、AMコンディショナルノックアウトマウス(AM Flox/Floxマウス)を作製した。本研究では、Bリンパ球、Tリンパ球特異的に、AMを欠損させたマウスを作製し、それらのフェノタイプの解析をおこなった。 まずは、Bリンパ球特異的にAMを欠損したマウスを、CD19 Creトランスジェニック(Tg)マウスとAM Flox/Floxマウスを交配し作製したところ、脾臓に局在するFOLⅠの分化段階のBリンパ球が極端に減少していることが明らかとなった。また、その分化段階にて、アポトーシスの亢進がみられることも確認した。その分化段階のAM欠損Bリンパ球と正常Bリンパ球の遺伝子発現の違いをRNA seqをおこない比較し、発現に差のあった分子群のシグナルパスウェイ解析をおこなったところ、AM欠損Bリンパ球では、p38MAPKの活性化が起こっていることが予想された。その後、フローサイトメトリー法を用いた細胞内リン酸化蛋白の検出法(ホスホフロー)をおこない、p38MAPKのリン酸化状態の差を比較検討している。 次に、Tリンパ球特異的にAMを欠損したマウスを、CD4 Cre TgマウスおよびLck Cre Tgマウスと交配し作製したところ、両方とも、胸腺の委縮、末梢血中のTリンパ球の減少を認めた。それらの細胞を用いてAM欠損Tリンパ球内で何が生じているか、RNA seqなどをおこない、検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Bリンパ球特異的AM欠損マウスにおいて、明らかに差を認めたのは、Bリンパ球の最終分化段階に近いFOLⅠという分化段階の細胞が有意に減少していることであった。この分化段階の一つ前の分化段階のFOLⅡは、細胞数に差を認めなかった。以上のことから、正常およびAM欠損FOLⅠおよびFOLⅡの細胞を用いて、遺伝子の発現パターンの差をRNA seqをおこない、差のある遺伝子群から、パスウェイ解析をおこなったところ、p38MAPKがAM欠損Bリンパ球において亢進していることが予想された。それを証明するために、ウェスタンブロットをおこなったが、細胞数が少ないため、決定的な結果が得られなかった。別の方法を検討した結果、ようやく、フローサイトメトリーにて、細胞内の蛋白リン酸化の変化を検出する方法(ホスホフロー)によって、安定したデータが取れるようになった。 Tリンパ球特異的AM欠損マウスの解析においても、AM欠損細胞は数が減少するため、解析するのが困難となるという問題があったが、上記の方法を用いることで、少ない細胞においても、細胞内のシグナル蛋白のリン酸化の変化を検出することが可能となったため、研究が進展すると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
Bリンパ球特異的AM欠損マウスにおいて明らかな減少がみられたBリンパ球の最終分化段階に近いFOLⅠ細胞において、フローサイトメトリー法(ホスホフロー)を用いてp38MAPKのリン酸化がAM欠損Bリンパ球において亢進していることを示す。また、p38MAPK以外のシグナル伝達分子(MAPKやNF-kBなど)についても、同じ手法を用いて、活性化の違いの有無を検討する。さらに、これらのシグナル伝達分子の活性化に関わる鉄・硫黄(Fe-S)クラスター分子の候補について、文献的な検索を含め、検討する。 Tリンパ球特異的AM欠損マウスの解析においても、Bリンパ球でおこなった実験手技を用いて、減少している分化段階のTリンパ球において、どのような遺伝子発現が起きているか、RNA seqを用いた網羅的解析をおこない、差のあった遺伝子群から、シグナルパスウェイ解析によって、上流のシグナルを予測する。実際に、そのシグナル伝達分子のリン酸化に差が認められるかどうかは、ホスホフローによって確認し、最終的には、活性化に差のあったシグナル伝達分子を制御するFe-Sクラスター分子を明らかにする予定である。
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