2017 Fiscal Year Research-status Report
C/EBPαの新規C末端機能領域を介した顆粒球系細胞分化経路の分子機構の解明
Project/Area Number |
16K09879
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
下川 敏文 日本大学, 医学部, 研究員 (10339327)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 血球分化 / 好中球 / bZIP / RINGフィンガードメイン / タンパク質-タンパク質相互作用 / ポリコーム抑制複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度,好中球誘導因子C/EBPαのC末端に同定した新規機能領域に会合する細胞内因子として,ポリコーム抑制複合体1(PRC1)の主要構成因子であるRING1Bを同定し,C/EBPαがRING1B のN末端と相互作用することを明らかにした.RING1BはPRC1の中でユビキチン転移酵素として働き,造血幹細胞の自己複製を制御しているBMI1とヘテロダイマーを形成してヒストンH2Aをモノユビキチン化することで,標的遺伝子の転写を抑制すると考えられている.C/EBPαが会合するRING1BのN末端には,2個の亜鉛原子を含む特徴的な構造のRINGフィンガードメインが存在し,その構造が上記BMI1との会合やE2ユビキチン結合酵素との相互作用に寄与する.これらの相互作用とC/EBPαとの相互作用の関連を明らかにする目的で,RING1Bの各種アミノ酸置換変異体を構築して会合能を検討したところ,亜鉛原子が結合するアミノ酸に変異を導入してRINGフィンガー構造を破壊しても, C/EBPαとの相互作用が保持されることが明らかになった.この知見から,C/EBPαとRINGlBの会合がPRC1の複合体形成に関し競合しないこと,したがって,ポリコーム抑制複合体の機能を損なうことなしにC/EBPαとの会合能のみが欠損するRING1Bアミノ酸置換変異体をデザインできることが示唆され,C/EBPαの新規C末端機能領域の顆粒球系の特異的遺伝子発現や細胞分化における役割とその分子機構を解明する上で大きな足がかりとなることが期待される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RING1Bは,ポリコーム抑制複合体を形成して機能することから,C/EBPαのインターラクターとして同定した当初から研究計画を変更する必要が生じた.特にC/EBPαの新規C末端機能領域が会合するRING1BのN末端には,ポリコーム抑制複合体の構成因子であるBMI1やE2ユビキチン結合酵素も会合するため,C/EBPα特異的な会合部位の同定を本年度の第一の目標として研究を進めた.その結果,BMI1やE2ユビキチン結合酵素の会合に必須なRINGフィンガードメイン構造非依存的にC/EBPαがRING1Bに相互作用することが明らかになった.今回得られた知見は,ポリコーム抑制複合体の機能を損なうことなしにC/EBPαとの会合能のみが欠損するRING1B置換変異体のデザインするための大きな足がかりとなると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
1.C/EBPαがRINGフィンガードメイン構造非依存的にRING1BのN末端と相互作用することが明らかになったため,この知見を基にC/EBPαとの会合に関与するアミノ酸を同定し,ポリコーム抑制複合体の機能を損なうことなしにC/EBPαとの会合能のみが欠損するRING1B置換変異体のデザインする.2.1でデザインしたRING1B変異体を細胞に導入し,レポーター解析によりGABP-C/EBPαによる相乗的転写活性への影響を検討する.また,誘導型C/EBPαを導入したK562細胞の安定樹立株(樹立済み;Shimokawa et al. Biochim Biophys Acta 2013)に強発現し,好中球分化への影響を検討する. 3.ポリコーム抑制複合体にはいくつかの異性体型が知られている.FcαRやG-CSFレセプター遺伝子などの顆粒球分化のマーカ遺伝子 のプロモーターに関し,クロマチン沈降方を用いて,C/EBPαとともに沈降するポリコーム抑制複合体の構成因子を同定することにより,C/EBPαがどの異性体型と会合しているかを明らかにする.
|
Causes of Carryover |
1.前年度の結果から,BMI1やE2ユビキチン結合酵素の会合に必須なRINGフィンガードメイン構造がC/EBPαとRING1Bの相互作用にも必須であると予想し,これらの競合による機能解析を予定していたが,C/EBPαとの会合能のみを欠損した変異体を用いた機能解析ができる可能性が浮上したため,この変異体をデザイン後に機能解析する計画に変更した.このため予定していた試薬や培地が一旦不要になったため.2.研究成果を発表した学会の開催地が東京近郊だったため,計上した交通費ならびに宿泊費が不要となったため
(使用計画) 平成29年度の未使用額を含めた使用計画は次の通りである.ポリコーム抑制複合体の機能を損なうことなしにC/EBPαとの会合能のみが欠損するRING1Bアミノ酸置換変異体をデザインするため,他のポリコーム抑制複合体構成因子との関連も解析する必要があり,これらの発現ベクターを構築するための試薬や抗体の購入に平成29年度の未使用額を使用する予定である
|