2018 Fiscal Year Research-status Report
C57BL/6背景のSKGマウスを用いたSLEの病態解明
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16K09890
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 求 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60512845)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / 濾胞性ヘルパーT細胞 / 補助刺激分子 / 自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、TCRシグナル伝達系ZAP70 分子に点突然変異を有し、BALB/c背景で関節炎を発症するSKGマウスの遺伝的背景をC57BL/6(B6)背景にかえたC57BL/6 ZAP70 skg/skgマウス(B6SKG)マウスがループス様の腎炎を発症する分子メカニズムの解明を試みた。B6SKGマウスでは、抗DNA抗体の産生や腎糸球体におけるC3やIgGの沈着がみられ、ループス様腎炎が発症していることが認められた。B6SKGマウスでは、wild typeのB6マウスやBALB/cマウス、SKGマウスなどと比較して、脾臓にGerminal Centerが自然と発達しており、Germinal Center B細胞(AA4.1-,GL7+)やB細胞からの自己抗体の産生をヘルプするfollicular helper T 細胞(Tfh)(CXCR5+, Bcl6+, ICOS+, PD1high)が有意に増大していた。またTh17やTh1、Tregもwild typeに比べ増大しており、Tregの機能分子であるCD25の発現が低下していた。BALB/c背景でなくB6背景のSKGマウスで特にTfhが増大する分子メカニズムを解明するため、Tfhの分化にかかわるサイトカイン(IL-6, IL-21)や補助刺激分子(CD80/86, ICOSL, OX40Lなど)の発現を、wild typeのBALB/cマウスとB6マウスで比較した結果、B6マウスではBALB/cマウスに比較して、樹状細胞(DC)上の補助刺激分子CD80/86とICOSLの発現が有意に亢進していることを見出した。さらに、これらの補助刺激分子をブロックすることで、Tfhの分化やループス様腎炎の発症が有意に抑制された。以上より、B6背景においては、DC上の補助刺激分子の発現が亢進していることが一因となり、Tfhの分化が誘導されやすい環境にあり、その結果、ループス腎炎などの自己抗体に依存する全身性自己免疫疾患が発症しやすいとの知見をまとめ、論文投稿した(Matsuo, Hashimoto et al. J. Immunol 2019 In press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B6SKGマウスにTfhが増大している分子メカニズムとして、BALB/cと比較してB6マウスでは、CD80/86、ICOSLの発現が亢進していることを見出した。さらに、これらの補助刺激分子を阻害することで、Tfhの分化を抑制でき、さらにはループス様腎炎の発症も抑制することができることを示した。このことで、B6背景のSKGマウスにおいて、自己抗体依存性の自己免疫疾患が発症しやすい分子メカニズムの一端として、補助刺激分子の発現亢進があることを見出し、論文発表した(Matsuo, Hashimoto et al. J. Immunol 2019 In press)。このように、B6SKGマウスにおけるTfhの分化誘導メカニズムについては順調に研究が進捗した。一方、当初のもう一つの研究仮説であったNETosisの抗DNA抗体産生誘導やループス様腎炎発症への関与については、今後さらに研究をすすめていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
TCR刺激伝達系の低下は、ヒトSLE患者をはじめとしてリウマチ性疾患でよくみられる遺伝子変異であるが、それがどのようにTfhの増大や自己抗体産生を全身性自己免疫疾患の発症につながるか、ということは明らかになっていなかった。本研究により、TCR刺激伝達系の近位部にシグナル低下(ZAP70 変異)をもつSKGマウスが、BALB/cの遺伝的背景では関節リウマチを発症し、B6背景ではSLEを発症すること、さらにB6背景でSLEを発症する分子メカニズムの一端として、樹上細胞上のCD80/86、ICOSLなどの補助刺激分子の発現亢進があることを示した。このことで、TCRシグナル伝達低下が遺伝的背景によって2つの異なった自己免疫疾患の共通の原因となることがしめされた。また、SLEの発症を抑制するためには、follicular helper T細胞(Tfh)やその分化を促進する補助刺激分子をターゲットとすることが有効である可能性が示唆された。なお、B6SKGマウスでは、上記のTfh以外にもIL-17産生細胞(Th17)も増多している。近年Th17に関連するサイトカインの阻害がSLEの治療に有効であるとの治験結果がでてきており、今後、B6SKGにおけるTh17細胞とNetosisおよびそれらが抗DNA抗体産生やループス様腎炎発症へ与える影響について、研究をすすめたい。
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[Journal Article] Strain-specific manifestation of lupus-like systemic autoimmunity caused by ZAP70 mutation2019
Author(s)
Takashi Matsuo, Motomu Hashimoto, Shimon Sakaguchi, Noriko Sakaguchi, Yoshinaga Ito, Masaki Hikida, Tatsuaki Tsuruyama, Kaoru Sakai, Hideki Yokoi, Mirei Shirakashi, Masao Tanaka, Hiromu Ito, Hajime Yoshifuji, Koichiro Ohmura, Takao Fujii, and Tsuneyo Mimori
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Journal Title
The Journal of Immunology
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed