2017 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫病の新規原因遺伝子ホスホリパーゼD4の機能解析
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16K09891
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秋月 修治 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (50626637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺尾 知可史 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (60610459)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / 全ゲノム関連解析 / ホスホリパーゼD4 |
Outline of Annual Research Achievements |
全ゲノム関連解析(GWAS)は従来の手法では困難であったヒト多因子疾患の遺伝要因を、ゲノム全体をカバーし同定することを可能とした。これら疾患感受性遺伝子は機能既知と機能未知のものが含まれる。Phospholipase D4(PLD4)はGWASにより関節リウマチ、強皮症の疾患感受性遺伝子として報告されるが、生化学的・生物学的機能は未知である。申請者はPLD4欠損型変異マウスを解析し、ヒト全身性エリテマトーデスに類似した自己免疫現象を自然発症することを見出した。PLD4変異マウスは対照マウスに比してB細胞の生存・成熟に関連するサイトカイン、BAFFを過剰産生し、幼少期よりB細胞分化の異常、胚中心の過形成、高ガンマグロブリン血症、抗DNA抗体等の自己抗体産生を示す。また、末梢リンパ組織における炎症性サイトカイン(IL-6、IL-12、IFNγ)の過剰産生、腎糸球体における免疫複合体の沈着、インターフェロン関連遺伝子の高発現など、免疫異常を背景とした臓器障害が発生する。本研究を通じ、機能未知であったPLD4が生物種を超え生体レベルで免疫自己寛容の維持、特に抗核抗体の産生に代表される全身性自己免疫疾患の発病に関わることが示され、今後の細胞レベル、および生化学的機序の解明を追求する背景が確立されたと考えられる。また、一般にGWASで同定される他の機能未知なヒト免疫疾患の感受性遺伝子に関しても精査を促す結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① PLD4変異型欠損マウスのヒト全身性エリテマトーデス(SLE)に類似する表現型に関し、その病態機序を精査した。アポトーシス細胞のクリアランス障害はヒト、マウスでSLEの発病要因に関連する。PLD4変異マウスの脾臓よりマクロファージを単離し、インビトロでアポトーシス細胞の貪食効率を評価したが、対照と差異は見出されず、PLD4が神経膠細胞、ミクログリアの貪食能に関わるとする既報に反する結果であった。PLD4変異マウスはBAFFの過剰産生、B細胞の分化異常を示し、その表現型はBAFFトランスジェニックマウスに類似する。PLD4変異マウスにおけるBAFFの関わりをインビボで示すため、その産生を制御するインターフェロンα(IFNα)を特異抗体により中和し、B細胞分化をフローサイトメトリーで評価した。結果、抗IFNα抗体投与群、対照群で差異は確認されなかった。また、脾臓、骨髄内のリンパ球、骨髄球よりmRNAを抽出し、RT-PCRでBAFFの発現を定量したが、BAFFの産生源となる責任細胞は同定されなかった。 ② 生体レベルで、臓器・細胞ごとに機能評価するため、PLD4コンディショナルノックアウトマウス(Pld4-flox)を樹立した。B細胞特異的Creレコンビナーゼ発現マウス(Mb1-Cre)と交配し、定量PCRによりB細胞に特異的なPLD4遺伝子欠損を確認した。B細胞特異的PLD4欠損マウスで、PLD4変異マウスに類似する胚中心B細胞数が増加する傾向があり、今後、組織切片による裏付け、抗体産生能など精査を予定する。
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Strategy for Future Research Activity |
① PLD4変異マウスで認められる免疫異常機序について精査を進める。PLD4は免疫系細胞、特にB細胞、樹状細胞、マクロファージで高発現する。前述のPLD4コンディショナルノックアウトマウスを用い、樹状細胞、マクロファージ特異的なPLD4欠損マウスを樹立し、細胞系譜ごとにPLD4の機能意義を検討する。 ② PLD4は既知のphospholipaseD活性を有さず、その触媒経路を含め生化学的特性は未知である。既報、およびマクロファージ細胞株(THP-1)を用いた強制発現系の自験により、細胞内の核、粗面小胞体、ゴルジ体、リソソームで局在が確認されている。加えて、申請者は膜脂質アレイ(Echelon Biosciences Inc.)の予備実験でPLD4の会合脂質を探索し、2種の候補脂質を得ている。また、細胞株を用いたヒトPLD4の強制発現系、miRNAによるノックダウン系を樹立しており、脂質メタボロミクスの手法によりPLD4の触媒脂質候補を追求する。これら知見を基に、PLD4の触媒候補脂質に対する代謝活性をインビトロで検証する。 ③ PLD4はヒト、マウスで免疫系に偏在し、特にB細胞、樹状細胞、マクロファージに高発現する。樹状細胞ではI型インターフェロンの主要な産生源であり、SLEの病態に関わりが深い形質細胞様樹状細胞で特に発現が高い。申請者は臨床研究室に所属しており、ヒト患者検体を用い、PLD4の発現と各種の臨床像との対比が可能である。昨年度は抗ヒトPLD4多クローン抗体を作出したが、特異性の問題よりタンパクレベルでの評価は困難であった。単クローン抗体の作出を試み、ヒト患者検体におけるPLD4発現を評価し、臨床意義を探索する。
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