2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K09906
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
金子 祐子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60317112)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脊椎関節炎 / 早期診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎関節炎は,全身性の腱付着部炎を特徴とする自己炎症性疾患で,体軸関節炎および末梢関節炎に加え,乾癬,炎症性腸疾患,虹彩炎など全身性多臓器障害をきたす.世界的にはHLA-B27が疾患感受性遺伝子であることが知られているが,日本人では保有率が低いことから脊椎関節炎有病率も0.01%未満とされてきた.近年,生物学的製剤によって有効かつ安全な治療が可能となったこと,およびMRIなど高感度画像検査によって診断が疾患に関する認知度が上昇し,日本人有病率も従来考えられていたよりも高い可能性が指摘されてきた.本研究では,当院消化器内科の通院中の炎症性腸疾患患者,皮膚科に通院中の乾癬患者を対象として炎症性腰背部痛および末梢関節痛の有無についてアンケートを行った.脊椎関節炎と診断または疑われている患者を除外後,255名 (炎症性腸疾患161名、乾癬94名)のアンケートが収集された.うち86名(33.7%)が腰背部痛を自覚しており,そのうち41名が ASASにおけるexpert criteriaで定義された炎症性背部痛が3ヶ月以上持続していた.そのうち少なくとも5名が身体所見およびMRIを含む画像検査から体軸型脊椎関節炎の新規診断となった.炎症性背部痛陽性患者86名で,体軸型脊椎関節炎と診断された患者はそうではない患者との比較で,背部痛による夜間覚醒頻度が有意に多く(60% vs 14%, P=0.03),スクリーニングとして有用性が高いと考えられた.また,末梢性関節炎について尋常性乾癬患者94名について検討すると,腱付着部炎および虹彩炎既往比率が有意に高く(13.6% および 9.1% vs 0.0%, P = 0.01,0.05).また,これら患者においてHLA-B27陽性患者は一人もおらず,日本人におけるB27保有率の低さが再確認され,日本人では他のHLAを含めた遺伝学的特徴を検討する必要が考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多科にまたがる疾患であり倫理委員会承認時間がかかったため開始が遅れたこと,および患者来院間隔などから患者登録に想定よりも時間を要したため,研究開始が遅延した.またASAS による診断基準では,日本では保険適応のないHLA-B27やMRI所見が含められていることから,患者同意やMRI予約等に時間がかかり,確定診断までに時間を要することも一因であった.これらは研究としても改善すべき点である反面,日本の実臨床において診断遅延の原因となっている可能性があるため,情報を詳細に収集する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
患者集積をさらに継続し,脊椎関節炎および脊椎関節炎疑い患者コホートから末梢血リンパ球サブセット解析や早期診断に有用なバイオマーカー探索も行う予定である.また,整形外科で機械的腰背部痛とされている患者の中にも脊椎関節炎が隠れている可能性が高いことから,アンケート対象を拡大することを検討中である.現在アンケート質問事項は,NY criteria,Berlin criteria,ASAS criteriaにおける炎症性腰背部痛の定義を網羅する形で構成されているが,これまでの検討の中で夜間覚醒する背部痛の特異度が高いことが想定されており,簡便かつ高感度高特異度の質問票作成を行う.
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Causes of Carryover |
やや進捗に遅れが認められたことに伴って、本年度の血液解析、HLA解析などの個数が減少したことにより、次年度に繰越となった。次年度には患者登録促進が進むことが見込まれるため、次年度での解析に使用予定。
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