2017 Fiscal Year Research-status Report
Layilin依存性上皮間葉移行を中心とした関節リウマチ滑膜細胞の制御
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16K09910
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
加藤 智啓 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80233807)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 滑膜線維芽細胞 / 関節リウマチ / 上皮間葉移行様変化 / ライリン |
Outline of Annual Research Achievements |
関節滑膜細胞におけるライリンの上皮間葉移行(EMT)様変化との関連を含めその機能を明らかにするためにin vitro及びin vivoの両面から検討した。 in vitro研究では、滑膜線維芽細胞株(SF)で、TNF-α存在及び非存在下でRNAi干渉によるライリンの発現抑制が細胞の蛋白質発現にどのように影響するか網羅的に調べた。ライリン特異的siRNA(siL)を用いてライリン発現を抑制したSF及びコントロールsiRNAを導入したSFを作製した。抽出した蛋白質を蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動解析システムに供した。検出された蛋白質スポット1092個のうち、無刺激及びTNF-α刺激時でsiLによりスポット強度が±1.3倍以上変化した蛋白質スポットがそれぞれ53個及び34個であった。それらを質量分析に供し、24個のスポットの蛋白質が同定された。そのうち15スポット(62.5%)で同定された蛋白質が、EMT関連蛋白質であった。ライリンはSFでEMT関連蛋白質の調節に深く関与していることが示唆された。 in vivo研究では、ライリン欠損マウスの作製を進めた。CRISPR/Cas9法によりライリン遺伝子に欠損変異(DM)を導入した受精卵より誕生したF0マウスのうち、♂6匹を対象に次世代シークエンスに供した結果、どのマウスも複数のDMを保有するモザイク状態であった。その中で、ライリン遺伝子70bpDM(L70DM)を含むマウスと野生型を交配した。誕生した22匹のF1マウスの遺伝子型判定の結果、L70DMのみをヘテロに有する(LAYN+/-)マウスは12匹であった。次にそのLAYN+/-マウス同士を交配した。誕生した30匹のF2マウスの遺伝子型判定の結果、L70DMのみをホモに有する(LAYN-/-)マウスが7匹得られた。現在本マウスを繁殖させており、次年度に表現型解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関節滑膜細胞におけるライリン依存性上皮間葉移行(EMT)様変化を含め、ライリンの機能探索をin vitro及びin vivoの両面から検討した。平成29年度計画に記した内容と照らし合わせると、in vitro及びin vivoの両面とも、その内容に沿った形で研究遂行されたと考えられるのでおおむね順調に進行しているとする。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitro 研究として、前年度に引き続き、以下を検討する。 1)平成28年度にTNF-α刺激の有無に関わらず、滑膜繊維芽細胞株(SF)ではライリン発現抑制によりSnailの発現は増加した一方で、RA患者由来滑膜細胞では減少したという結果が得られている。また、平成29年度にSFでライリン発現抑制により影響をうける蛋白質を網羅的に解析し同定した結果、同定蛋白質の62.5%がEMT関連蛋白質であった。しかし現段階でライリンがEMTにどのように影響するかは決定できておらず、今後EMTにおけるライリンのより正確な役割を明らかにする必要がある。これらの点については引き続き細胞株種または手術検体数を増やして検討を続ける。2) 動物骨片を使用し、TNF-α誘導性EMT 様変化後の滑膜細胞が骨浸潤能を獲得する(Tolboom,2004)か否かを決定する。3) TNF-αからライリン への経路についてNF-κB を介しているか否かを検討する。4) ライリンの下流経路の探索として、ライリン の強発現によりEMT 様変化が起こるか否か(Voulgari, 2009)を決定する。5)滑膜細胞にライリン 依存性EMT 様変化を起こすサイトカイン等がTNF-α以外にあるか否かを検討する。 in vivo 研究として、前年度に引き続き、以下を検討する。 6) 系統化されたホモ型のライリン欠損マウスを繁殖させ、そのフェノタイプの解析を行う。7)コラーゲン誘導性関節炎における発症率と重症度を、野生型マウスとライリン欠損マウスで比較し、ライリンの関節炎発症における役割を明らかにする。 以上の過程で、知的財産に相当するものは所属大学のTLO(株式会社MPO)を通して特許出願を行う。また、適時、成果を論文としてまとめ、国際的学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
本研究で作製した遺伝子改変動物の系統化および繁殖が予定よりも数週間遅くなってしまったため、請求書の到着が年度を跨いでしまった。その結果、次年度に支払うことになった。
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Research Products
(2 results)