2016 Fiscal Year Research-status Report
カルバペネム耐性E. cloacaeの薬剤耐性機序と分子疫学に関する研究
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16K09931
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
八木 哲也 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (70333573)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カルバペネム耐性 / Enterobacter cloacae / カルバペネマーゼ / IMP-60 / MLST |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 2012年1月から2015年12月に名大病院で検出されたカルバペネム耐性Enterobacter cloacae(CREC)は合計40株で、その中でカルバペネマーゼを産生する株(CPEC)は19株、非産生株21株であった。CPECと非産生株で検出された患者の背景を比較したところ、前者は19例中10例、後者は21例中8例は保菌で、入院から検出されるまでの期間がCPECでは有意に長かった(31日vs13日: p=0.01)。両群ではリスクとなる臨床背景、患者予後について差は見られなかった。 2. CPECについてカルバペネマーゼ遺伝子のシークエンス解析を行ったところ、我が国で報告の多いIMP-6と異なり、すべてIMP-60であった。名大病院で分離されるCPECでは異なる型のカルバペネマーゼ産生菌が多いことがわかった。 3. DiversiLab法による分子疫学的解析で85%の相同性で区切ってみると、CPECは大きく分けて5つのグループ(A-E)に分けられた。それぞれのグループにはCPECが A: 1株、B: 1株、C: 10株、D: 2株、E: 5株属していた。C, D, E群の菌株は検出時期が離れていたが、何らかの形での水平伝播が考えられた。またA,C,Eグループには、感受性がよいEC株と耐性のEC株が混在し、カルバペネマーゼ遺伝子ののったプラスミドの伝播が疑われた。 4.CREC40株についてMulti Locus Sequence Typing(MLST)を実施したところ、30株は既存のSTで10株は新規のSTであると考えられた。CPECはそれぞれ、A及びBグループはST78、CグループはST113、DグループはST513、EグループはST53に属しており、DiversiLab法による分類とおおむね一致していた。ST78については、欧米でも報告のあるSTであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、2012年から2015年に名大病院で検出されたカルバペネム耐性Enterobacter cloacae (CREC)40株を解析した。分子疫学的解析、耐性因子の解析は比較的順調に進んだが、地域連携で追加収集した株のDiversiLab法による解析が困難(試薬の供給不全のため)になっている。 我が国の定義に基づくと耐性度のあまり高くない(第三世代セファロスポリンにも感受性)のCRECが入ってくることになるため、本年度はカルバペネマーゼを産生するE. cloacae株(CPEC)を検出した19例と非産生のCRECを検出した21例(こちら側に耐性度の低いCREC例が入る)を比較した検討を行った。 WGS解析を行う前に、まずCPECのDiversiLab法による分子疫学的解析MLST、そして耐性因子の解析を先行させた。結果の概要が判明したので、次年度よりWGS解析を用いたCPECのゲノム比較とプラスミドの比較解析を開始する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はCRECが分離された対照群とカルバペネムに耐性とならないE. cloacae株が分離されたコントロール群との臨床的背景の比較、つまりCREC獲得のリスクファクターの解析を行う。 WGS解析では、スピードアップのため国立感染症研究所の黒田先生の援助を受けて実施する。菌株の解析ではある程度の時期の間に検出された11株(CPEC10株と感受性株1株)に環境からのCPEC分離株1株を加えて解析する。プラスミドについては、4つの異なるST(ST53, 78, 113, 513)をそれぞれ代表する株を選んで比較解析する。 解析に用いたDiversiLab法は、試薬の供給が滞っている状態となっており、新たな菌株を加えた解析が困難となっている。Pulsed Field Gel Electrophoresisなど他の解析方法の追加も考慮する。 地域連携ネットワークでは、2016年も検出された株を収集したため、その解析をもとに2014年から2016年に分離された株の解析を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度の予算を遂行するにあたり、計画通り遂行したが、消耗品で計上できない端数が残り、次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に消耗品費用として使用する。
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Research Products
(2 results)