2017 Fiscal Year Research-status Report
カルバペネム耐性E. cloacaeの薬剤耐性機序と分子疫学に関する研究
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16K09931
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
八木 哲也 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (70333573)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | E. cloacae complex / カルバペネマーゼ / K. pneumoniae / IMP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.名大病院と連携している施設で2014-2016年に行った耐性菌サーベイランスで得られた菌株を解析した。対象となる菌種は、大腸菌、Klebsiella属菌では、「CTXまたはCAZが耐性」かつ「CMZまたはFMOXが耐性」、「CTXまたはCAZが耐性」かつ「IPMまたはMEPMのMICが2以上」、Enterobacter属菌では、「CTXまたはCAZが耐性」かつ「CFPMまたはCPRまたはCZOPが耐性」、「CTXまたはCAZが耐性」かつ「IPMまたはMEPMのMICが2以上」のものとした。 2.収集された対象菌株数は、2014年から2016年でそれぞれ、53株(19施設)、67株(22施設)、76株(24施設)で、菌種別にはE. cloacae complex(ECC)が最も多く(82株)、大腸菌(59株)、K. pneumoniae(KP:41株)がこれに続いた。これらの中でカルバペネマーゼを産生する菌株は、ECC(17株)、大腸菌(4株)、KP(18株)で、ECCとKPが経年的に増加傾向であった。 3.ECCの産生するカルバペネマーゼは、メタロ-b-ラクタマーゼであるIMP-1であり、KPではIMP-1産生株が多くIMP-6産生株も少数見られた。現在カルバペネマーゼ産生菌の分子疫学的解析を行っている。 4.昨年解析した名大病院で検出されたカルバペネム耐性ECC株の解析では、まず正確な菌種同定をhsp60遺伝子のシークエンス解析により試みている。また、カルバペネム耐性ECC検出のリスクファクターの解析も追加して行っている。カルバペネマーゼ産生ECC株のうち、異なるSequence typingを示す代表株を選定し、プラスミドの全ゲノム解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体的に進行は少し遅れ気味である。 サーベイランスで得られた薬剤耐性菌株の分子疫学的解析は、DiversiLab法が使用不可能となることに伴い、それに代わる方法で解析を行っている。Enterobacterial Repetitive Intergenic Consensus-PCR(ERIC-PCR)法、DiversiLab法以外のRep-PCR法を試しているが、今後Multi-Locus Sequence Typing(MLST)を行うかどうか検討する。 E. cloacae complexについては、近年hsp60遺伝子の塩基配列によるさらに詳細な菌種同定が必要となってきており、当初の予定になかったその解析を加えることとした。また成果の海外発表を行ったところ、その際のディスカッションに基づき、28年度に行ったカルバペネマーゼ産生E. cloacae complex検出例と非カルバペネマーゼ産生のカルバペネム耐性E. cloacae complex検出例の比較解析ではなく、カルバペネム耐性E. cloacae complex検出のリスクファクターの解析も必要と考え、追加して行っている。全ゲノム解析は、当初安定した結果を得るまでに時間がかかったが、研究協力者平林(国立感染症研究所に異動)、稲垣の協力の下解析が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画になかった解析を追加していることもあり、研究の進捗はやや遅れ気味であるが、それぞれの解析を進める。 名大病院で検出されたカルバペネム耐性E. cloacae complex株の解析:hsp60遺伝子の塩基配列による菌種同定、カルバペネム耐性E. cloacae complex検出のリスクファクターの解析を進める。平成30年度中には論文投稿まで持って行きたい。(研究協力者:手塚) 名大病院との地域連携サーベイランスで得られた薬剤耐性菌株の解析:カルバペネマーゼ産生菌ではカルバペネマーゼ遺伝子の解析を、さらに菌株の分子疫学的解析を進める。(研究協力者:原) カルバペネマーゼ産生E. cloacae complex株の全ゲノム解析:国立感染症研究所に異動した研究協力者平林とも連携して解析を進める。主に異なるSTを示す株の持つプラスミドの構造について解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度の予算を執行するにあたり、計画通り遂行したが、消耗品で計上できない端数があり、次年度に繰り越した。 (使用計画)平成30年度に消耗品費用として使用する。
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Research Products
(6 results)