2017 Fiscal Year Research-status Report
結核を中心とした感染制御のための新規ワクチン開発と免疫学的評価
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16K09946
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
相澤 志保子 日本大学, 医学部, 准教授 (30513858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 三男 日本大学, 医学部, 客員教授 (20117378)
早川 智 日本大学, 医学部, 教授 (30238084)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抗酸菌 / 結核 / BCG / CD8エピトープ / 非結核性抗酸菌症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度までに明らかになった、我々が開発した新規組換えBCGワクチンであるrBCG-Ag85B接種によって、誘導可能であるAg85B特異的CD8細胞傷害性T細胞について研究を行った。マウスH2-Kdに拘束される結核菌のAg85BタンパクのふたつのCD8エピトープ、Pep8とPep9について解析した。マウスH2-KdとPep8とPep9のコンプレックスをそれぞれ作成し結晶化を行い、結晶構造解析を行った。その結果、Pep8とPep9は共にCD8のエピトープとして機能するが、H2-Kdのペプチド収容溝のポケットとの結合は構造的に異なることが明らかになった。そのため、Pep8とH2-Kdのコンプレックスを認識するCD8細胞傷害性T細胞とPep9とH2-Kdのコンプレックスを認識するCD8細胞傷害性T細胞はポピュレーションが異なることがわかった。 また、本年度は新規組換えBCGワクチンによる結核防御効果をマウスを用いて検討した。rBCG-Ag85B単独、もしくはrBCG-Ag85B接種後にAg85Bを発現するプラスミド(DNA85B)をDNAワクチンとして3回追加免疫するプライム・ブーストの系でマウスを免疫した。コントロールとして対照群(免疫無し)もしくは既存のBCG接種群と比較することとした。最初のrBCG-Ag85BもしくはBCG接種の10週間後に結核菌を噴霧感染させた。感染後6週目に解剖し、組織内の生菌数を検出した。その結果、rBCG-Ag85B-DNA85Bのプライム・ブースト免疫群は既存のBCG群と比較して有意に肺内の生菌数が抑制された。rBCG-Ag85B単独群でも、マウスの系統によってはプライム・ブースト免疫群と同レベルまで肺内の生菌数が抑制された。新規rBCG-Ag85Bワクチンは既存のBCGよりも、結核感染防御効果が高いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCD8エピトープについての詳細な解析と、rBCG-Ag85B接種マウスにおける結核菌感染実験を計画していた。この2つの実験については研究実績の概要に記載した通り実験を進めることができた。またこれらの研究成果については、2017年度生命科学系学会合同年次大会ConBio2017(第40回日本分子生物学会年会)、第46回日本免疫学会学術集会でワークショップに採択され口演発表した。rBCG-Ag85Bワクチンは近年患者数が増加傾向の非結核性抗酸菌症(NTM症)のワクチンとしてもはたらく可能性があるため、非結核性抗酸菌のひとつであるMycobacterium kansasiiの感染実験も計画していたが、結核感染実験はマウスの免疫から組織内生菌数検出までおよそ20週間ほどかかるため、M. kansasii感染実験は施行できなかった。また、CD8エピトープがヒトにおいても機能するかどうか検討する予定であったが、当初の予定通り検体数が集まらなかったため、次年度以降引き続き検討を続ける。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は前年度までに明らかにした抗酸菌のAg85BのCD8エピトープがヒトにおいても機能するかどうか検討する。前年度は結核の既往歴のある患者、もしくは潜在性結核患者に絞って対象者を集めたが、想定通りに検体数が集まらなかったため、次年度は非結核性抗酸菌症患者にも対象を広げる予定である。また、検体の入手先の病院を増やす予定である。当該施設の倫理委員会の承諾を得て検体を入手する。 また、本年度に実施できなかったrBCG-Ag85Bが非結核性抗酸菌症ワクチンとしても有効かどうかの検討もマウスモデルを用いて行う。具体的には、マウス(BALB/c, C57BL/6, CB6F1)にrBCG-Ag85Bを単独接種、あるいはrBCG-Ag85B接種後にAg85Bを発現するプラスミド(DNA85B)をDNAワクチンとして3回追加免疫するプライム・ブーストの系でマウスを免疫し、最初のrBCG-Ag85BもしくはBCG接種の10週間後に非結核性抗酸菌の一つであるM. kansasiiを感染させる。コントロールとして対照群(免疫無し)もしくは既存のBCG接種群と比較する。
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Causes of Carryover |
(理由)次年度使用額として3,370円生じた。試薬などを購入するには中途半端な金額であり、無理に年度内に使い切るよりも、次年度分の予算とあわせて次年度に使用する方が有意義であると考えたため。 (使用計画)ヒト全血サンプルを採取するためのチューブ、PBMCを分離用の試薬・チューブ、フローサイトメトリー用の抗ヒト抗体、マウス、マウスの飼育費用、M.kansasii培養用の試薬・培地、細胞培養用の試薬・培地、その他基本的な実験器具であるピペット、チップ、チューブ、シャーレ、フラスコ等の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)