2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K09956
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
白土 東子 (堀越東子) 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (60356243)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 感染疫学 / ノロウイルス / 血液型抗原 |
Outline of Annual Research Achievements |
ノロウイルスは小腸上皮に発現する血液型抗原を識別して感染する個体を決めている。ノロウイルス感染への感受性は個体の血液型によって異なる。しかし、 ノロウイルスの流行拡大前後の疫学解析と、流行したウイルス株の血液型抗原への結合能の解析が両立されている報告はこれまでにない。本研究課題において、 流行株の疫学解析と血液型抗原への結合能のin vitroにおける解析を両立させた研究を実施する。 本研究課題では、ネパールにおいて2009年を境に急激に流行を拡大させたGII.13遺伝子型株を解析の対象とし、以下の1)-3)の順に解析を進めることによっ て、ノロウイルスの血液型抗原結合能獲得が流行の規定要因であるという基本原理を証明する。1) ノロウイルスGII.13遺伝子型の感染拡大前のNPL2008株のウイ ルス様中空粒子(VLP)の作製、感染拡大後のNPL2009株のVLP作製、世界的流行株 GII.4遺伝子型株またはGII.17遺伝子型株のVLP作製を行う。2) ELISA、SPRを用 いNPL2008株VLP(感染拡大前)、NPL2009株VLP(感染拡大後)、GII.4遺伝子型株またはGII.17遺伝子型株VLP(世界的流行株)の血液型抗原結合能の評価を行う。3) NPL2009株(感染拡大後)の血液型抗原結合能獲得の鍵となるアミノ酸をNPL2008株(感染拡大前)のアミノ酸に置換したVLPを作製し、血液型抗原結合能の減弱また は消失を確認する。 今年度は2)、3)に取り組んだ。ELISA、SPRを用いNPL2008株VLP、NPL2009株VLP、GII.4遺伝子型株VLPの血液型抗原結合能の評価を行うとともに、NPL2009株の血液型抗原結合能獲得の鍵となるアミノ酸をNPL2008株のアミノ酸に置換したVLPの作製を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題では、下記の1)-3)の順に解析を進めている。一昨年度は1)に取り組み、ノロウイルスGII.13遺伝子型の感染拡大前のNPL2008株のVLPの作出、感染拡大後のNPL2009株のVLP作出に成功し、電子顕微鏡下で粒子の形状を確認することが出来た。また、昨年度は2)のELISAに取り組み、ELISAで使用する抗VLPウサギ血清の作製を行うとともに、血液型抗原結合能比較のためのELISAの条件検討を行った。今年度は2)、3)に取り組んだ。ELISA、SPRを用いNPL2008株VLP、NPL2009株VLP、GII.4遺伝子型株VLP(世界的流行株)の血液型抗原結合能の評価を行うとともに、NPL2009株の血液型抗原結合能獲得の鍵となるアミノ酸をNPL2008株のアミノ酸に置換したVLPの作製を試みた。しかし、SPRでの結果を得るに至っていない。また、NPL2009株の血液型抗原結合能獲得の鍵となるアミノ酸をNPL2008株のアミノ酸に置換したVLPの作出に至っていない。このため、「遅れている」と判断した。 1) ノロウイルスGII.13遺伝子型の感染拡大前のNPL2008株のVLPの作製、感染拡大後のNPL2009株のVLP作製、 世界的流行株GII.4遺伝子型株またはGII.17遺伝子型株のVLP作製を行う。2) ELISA、SPRを用いNPL2008株VLP、NPL2009株VLP、GII.4遺伝子型株またはGII.17遺伝子型株VLPの血液型抗原結合能の評価を行う。3) NPL2009株の血液型抗原結合能獲得の鍵となるアミノ酸をNPL2008株のアミノ酸に置換したVLPを作製し、血液型抗原結合能の減弱または消失を確認する。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトに感染するヒトノロウイルスはヒトを唯一の感受性動物とし、感染モデル動物も培養細胞での増殖系も確立していない。ウイルス粒子の便への排出量は決して多くなく、in vitroでの解析に充分なウイルス粒子の調製は困難である。そこで、VLPの調製が有用であるが、VLP発現は容易ではなく、現在までに海外で発現の成功が報告されているのは約15株に留まっている。一方、代表者が所属する研究室では18遺伝子型25株のVLP発現に成功しており、代表者はこのうち13遺伝子型16株の血液型抗原19種類に対する結合パターンの解析を終えている。この13遺伝子型16株には2014年まで世界的に流行していたGII.4遺伝子型に属する Narita104株と日本国内の食中毒事例で分離されたGII.13遺伝子型Kashiwa47株を含む。 今後の研究を推進するため、既に解析を終えている13遺伝子型16株をコントロールに設定し、NPL2008株、NPL2009株のVLP-血液型抗原結合パターンの評価を行う。これにより、ウイルスカプシドタンパク質上の血液型抗原結合部位のアミノ酸変異が疫学的優勢に結びつくのか否かの検討を推進することが出来る。また、これら研究結果の確固たる裏付けとしてVLP作成に用いているプラスミドの塩基配列の確認を研究と平行して常に行い、スムーズな論文作成を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由) SPRを用いたNPL2008株VLP、NPL2009株VLPの血液型抗原結合能の比較において結果を得るに至っていない。また、NPL2009 株の血液型抗原結合能獲得の鍵となるアミノ酸をNPL2008株のアミノ酸に置換したVLPの作出に至っていない。さらに、論文作成の段階になって、共著者からVLPの作製に用いたプラスミドの塩基配列の確認の必要性を指摘された。このための追加実験の実施も次年度使用額が生じた理由の一つである。 (使用計画) 令和元年度は、平成30年度に引き続き、SPRによるNPL2008株VLP、NPL2009株VLPの血液型抗原結合能の評価を行うとともに、NPL2009株の血液型抗原結合能獲得の鍵となるアミノ酸をNPL2008株のアミノ酸に置換したVLPの作製と、血液型抗原結合能の減弱または消失の確認を行う。
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Research Products
(2 results)