2016 Fiscal Year Research-status Report
銅の体内動態の発達変化に基づいたMenkes病治療薬の開発
Project/Area Number |
16K09959
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宗形 光敏 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30312573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 浩子 帝京大学, 医学部, 講師 (00093386)
高橋 秀依 帝京大学, 薬学部, 教授 (10266348)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Menkes病 / macular mouse / 銅錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
Menkes病では銅トランスポーターの異常のため銅の吸収や体内送達が行なわれず、重篤な銅欠乏を来している。我々はこの病態に対し、経口投与により負担無く銅を供給できる製剤の開発を目指してきた。これまでの検討から、有機銅錯体Cu-gtsmの経口投与が致死的Menkes病モデルマウス(マクラマウス)を生存させることを見出し、本錯体やその関連化合物をMenkes病治療薬として導出できないか検討することにした。 Cu-gtsmの経口投与は2週齢のマクラマウスにしばしば一過性の下痢を引き起こし、本化合物を経口治療薬として導出するにはこの下痢の病態を明らかにする必要が生じた。そこで、本年度の計画に先立ち、Cu-gtsmによる下痢の病態を検討することにした。Menkes病モデルマウス(マクラマウス)にCu-gtsmを投与し、下痢を来した個体の消化管をHE染色し、Cu-gtsmを投与しなかったマクラマウスおよび同腹の正常個体と比較した。下痢をきたしたCu-gtsm投与群の消化管を十二指腸、空腸、回腸、大腸において観察したが、現時点では炎症性細胞の浸潤や上皮の脱落や変性は認められなかった。次に、小腸各部位(十二指腸、空腸、回腸)を灰化処理し、ICP-MSにて組織中銅濃度を計測した。銅製剤を投与したマクラマウスの消化管では正常対照よりも銅濃度は有意に高値となった。また、マクラマウスに塩化銅を投与しても一部に下痢が見られた。 以上から、Cu-gtsmの経口投与による下痢は、消化管の炎症によるものではなく、消化管への銅の過剰な蓄積による機能性の下痢であると考えられた。Cu-gtsmが緩徐に吸収されるような製剤上の工夫が必要である。この結果を29年度の製剤設計に生かしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Cu-gtsm経口投与時に下痢がしばしば観察されたことから、この下痢についてそのメカニズムを検討する必要が生じた。そのため、消化管の病理染色、各部位の組織の銅濃度の測定等を行なったため、遅延が生じた。引き続き、29年度計画に沿って、Cu-gtsm製剤の母体への予備的投与を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
消化管の検討をほぼ終えることができたので、この知見も経口製剤の評価に生かし、引き続き徐放化した銅製剤の効果を検討する。計画の手順に変更はないが、母体マウスへの投与実験と仔マクラマウスへの投与実験を平行させて行ない、研究の進捗を図りたい。
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Causes of Carryover |
開発薬により、想定外の一過性の下痢が認められたため、本年度の実験計画に先立ち、下痢の病態の検討を行なった。その結果、本年度実験計画で購入予定であった試薬、実験消耗品の一部の購入が次年度への繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に次年度使用額を用いて試薬等購入し、28年度にできなかった実験を実施する。
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