2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒト誘導多能性幹細胞を用いた遺伝性筋疾患の創薬研究のための基盤技術の開発
Project/Area Number |
16K09988
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
粟屋 智就 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (20589593)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / 骨格筋 / 遺伝性筋疾患 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「細胞-細胞外基質の相互作用や培地・細胞解離試薬などの細胞外 環境がその後の分化誘導の効率を変化させる」という仮説に対して、MyoD-iPS細胞を用いた分化誘導実験とその分化課程における網羅的遺伝子発現解析によりアプローチし、最終的には均質な骨格筋細胞を 96-well ないしは 384-well 細胞培養プレートで効率的に培養し、ハイスループットな薬剤スクリーニング系 (HTS) に発展させることを目的としている。
研究計画では平成28年度中に種々の未分化培養条件の検討と馴化培養を行いその基礎試料となる検体採取を目標としていたが、市販の各種培養試薬等の変更などにより、対象とする培養条件をいくつか変更した。 研究開始時は、マウス胎仔由来線維芽細胞あるいは SNL 細胞上で 20%KSR を含有する培地で維持培養を行う原法を基本とし、mTeSR1(STEMCELL Technologies), StemFit AK02N(Ajinomoto), PluriSTEM(Merck), E8(Invitrogen) の各種培地を用いて、Matrigel(Corning), VTN-N(Invitrogen), Geltrex(Invitrogen), iMatrix-511(nippi) 上での培養を行ったが、組み合わせにより細胞の接着状況や増殖状況がかなり異なり、全ての条件を同一のタイムコースで評価することは困難であった。
当初は馴化培養として3継代を予定していたが、解析タイムラインを変更して検討を開始している。このため、全体としては均一な検体を収集できておらず、場合によっては純化出来た条件のみでの比較も検討している。しかしながら概ね必要な培養条件が確立されてきているため、HTS系への移行については期待が持てると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画として、様々な培養条件における細胞の発現解析を手法としているが、iPS細胞が培養条件 (培地と細胞外基質の組み合わせ) においては接着しなかったり増殖しなかったりし、市販の培地や細胞外基質の組み合わせにおいても宣伝されているほどの安定性がみられないものが複数条件みられた。
当初は馴化条件を3継代と定義して解析を進める予定であったが、3継代の安定した培養がみられないものも少なくなかった。タイムラインの変更と経時的な評価へと計画を切り替えたため、全体としての検体収集にやや遅れがみられているが、様々な培養特性の把握が出来たことで、最終目標であるハイスループットな薬剤スクリーニング系 (HTS) への発展には予備情報として有益であったため、全体としては概ね順調な進展といえる。
また、年度途中で主任研究者の学内異動があり、一時期研究が停止したため、それによる遅れが多少みられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
馴化培養については上記に記載した検体採取のタイムライン変更を行い、引き続き様々な培養条件における検体を収集する。当初の予定通り、平成29年度中に網羅的遺伝子発現解析を行うと同時に骨格筋細胞への分化誘導を行い、実際の分化誘導効率と遺伝子発現の変化の相関などについて検討する。
|
Causes of Carryover |
研究責任者の学内異動により実験を一定期間中断していたこと、及び、前年度より継続的に実施していた予備実験が進行状況により部分的に学内資金によって実施することが可能であったこと、の2点により、今年度の物品費の使用を当初より少なく抑えることが可能であったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降で必要な実験を遂行するために、引き続き物品費として消耗品の購入に充当する。
|