2017 Fiscal Year Research-status Report
インスリン様成長因子とその結合蛋白の異常に起因する成長ホルモン不応症の解明
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16K09989
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
神崎 晋 鳥取大学, 医学部, 教授 (90224873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 晋一 鳥取大学, 医学部, 准教授 (50343281)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インスリン様成長因子 / インスリン受容体基質 / IGF結合蛋白 / IRS1 / ALS / SGA性低身長症 |
Outline of Annual Research Achievements |
インスリン様成長因子(insulin-like growth factor, IGF)-1および2は、出生後の成長に加えて胎内での発育にも重要な成長因子で、大部分はその結合蛋白(IGF binding protein IGFBP)に結合して体液中に存在している。IGF-1, 2は1型IGF受容体(IGF-1R)を介してその作用を発揮する。従って、これらの蛋白の異常はsmall for gestational age (SGA)性低身長症をきたす。SGA性低身長児にIGF結合蛋白である結合蛋白であるacid labile subunit (ALS)をコードするIGFALS遺伝子とIGF-1受 容体の細胞内情報伝達に関与するインスリンレセプター基質1(IRS 1)をコードするIRS1遺伝子に遺伝子変異を見いだした。 【症例】在胎40週、出生体重2495 gr (-1.9 SD)、身長42.5 cm (-3.74 SD)のSGAで出生し、6歳時に身長が-2.5 SDのためSGA性低身長症として成長ホルモン(GH)治療を受けた女児。GH治療を行うも13歳の身長が-2.5 SDとGH治療の効果をみとめなかった。母と姉もSGA性低身長症と診断されている。家族歴とGH治療効果が不十分のため、IGF系の異常を疑い遺伝子検索を行った。 【遺伝子解析】発端者と正常身長をしめす父親にIGFALS遺伝子に点変異(p.Arg229His)をヘテロ接合体で見出した。また、発端者およびSGA性低身長を呈した姉と母において、IRS1遺伝子に部分欠失(p.Ser685_Ser686del)をヘテロ結合体で見出した。 【考察】 IGFALS遺伝子異常(p.Arg229His)は、正常身長の父親にも認められており、発端者のSGA性低身長の原因とは考えにくい。IRS1遺伝子異常(p.Ser685_Ser686del)は発端者以外にSGA性低身長を呈した姉と母に見出されており、病因の可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成長ホルモン治療に対する反応が不良のSGA性低身長児を対象に、IGF系の遺伝子解析を行い、IRS1遺伝子の点突然変異をヘテロ接合体で見いだした。この変異はSGA性低身長をみとめる発端者、姉、母に見いだされており、低身長の原因の可能性が高い。 今後機能解析を行う必要があるが、新しいSGA性低身長の原因の可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、1)原因不明の低身長児,特に血中IGF-1値が低値を示す症例,を対象にIGF-2、IGFBP-3、ALSおよびIGF受容体系の遺伝子觧析を行いIGF系の異常に起因する成長障害を明らかにする。2)ln vitroの系を用いて、見出したIGF系の遺伝子異常とその機能異常の関連を検討する。 この研究目標に従い次年度は 1.臨床での検討:前年度に引き続き、原因不明の、特に血中IGF-1値が低値を示す低身長児あるいはSGA性低身長児を対象に、IGF系遺伝子異常の検索を行う。 2.In vitroの検討:1)前年度に見いだしたIGFALS遺伝子およびIRS1遺伝子変異を対象に、それらの導入細胞を作成し、細胞増殖能、IGF受容体以降のリン酸化などの検討を行い、変異遺伝子の機能を評価する。2)今後の検討で見いだされたIGF系遺伝子異常の機能評価を変異遺伝子導入細胞で行う。
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Causes of Carryover |
今年度は原因不明のSGA性低身長児が少なく、年度後半に極めて希なIGF受容体の細胞内情報伝達に関与するIRS1遺伝子異常とIGF結合蛋白ALS(IGFALS)遺伝子異常の両方を有する症例が見いだされた。本来は遺伝子変異の機能解析を年度内に行う予定であったが、次年度にずれ込み、こ予定の物品費が十分に使用できなかった。次年度は本年度見いだした遺伝子変異の機能解析を行う。 使用計画:1)見いだされた変異IRS1遺伝子および変異IGFALS遺伝子を導入した細胞を作成する。2)それを用いて細胞増殖能、変異IRS1遺伝子においては細胞内リン酸化を、変異IGFALS遺伝子についてはALS蛋白産生能、あるいは変異ALS蛋白とIGF-1との結合能を評価する。3)更に原因不明のSGA性低身長児のIGF系遺伝子異常の探索を行う。
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[Journal Article] Increased IRS2 mRNA Expression in SGA Neonates: PCR Analysis of Insulin/IGF Signaling in Cord Blood2017
Author(s)
Fujimoto M, Sonoyama YK, Fukushima K, Imamoto A, Miyahara F, Miyahara N, Nishimura R, Yamada Y, Miura M, Adachi K, Nanba E, Hanaki K, Kanzaki S.
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Journal Title
J Endocr Soc
Volume: 1
Pages: 1408-1416
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Incidence of diabetes mellitus and neoplasia in Japanese short-statured children treated with growth hormone in the Genetics and Neuroendocrinology of Short Stature International Study (GeNeSIS).2017
Author(s)
Yokoya S, Hasegawa T, Ozono K, Tanaka H, Kanzaki S, Tanaka T, Chihara K, Jia N, Child CJ, Ihara K, Funai J, Iwamoto N, Seino Y
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Journal Title
Clin Pediatr Endocrinol
Volume: 26
Pages: 229-241
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Book] SHOX異常症2017
Author(s)
緒方勤、神崎晋、深見真紀
Total Pages
45
Publisher
診断と治療社
ISBN
978-4-7878-2317-5
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