2016 Fiscal Year Research-status Report
生化学診断が困難な原発性副腎皮質機能低下症の分子基盤の解明と新規責任遺伝子の同定
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16K09998
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
天野 直子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (70348689)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 副腎 / 発生 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発性副腎皮質機能低下症の中で、21 水酸化酵素欠損症などの酵素欠損症は17αOHP測定や尿ステロイドプロフィル上の特徴的な生化学所見により診断可能である。一方、「生化学診断が困難な原発性副腎皮質機能低下症」は、①先天性リポイド副腎過形成症(責任遺伝子:CYP11A1,STAR)、②先天性副腎低形成症(NR0B1,NR5A1)、③家族性グルココルチコイド欠損症(MC2R,MRAP,NNT,TXNRD2)に大別される。その他副腎低形成を伴う症候群としてtriple A 症候群(AAAS)、IMAGe 症候群(CDKN1C)、MCM4 異常症(MCM4)が報告されている。「生化学診断が困難な原発性副腎皮質機能低下症」54例を対象に遺伝子解析を行い、37 例で遺伝子変異を同定した(STAR 16 例、NR0B1 16 例、NNT 2 例、AAAS 2 例)。さらに遺伝子A 内に微細欠失を有する先天性副腎低形成症2 例を経験した。先行研究で遺伝子A がWnt-βカテニン系に関与する分子であると報告されている。我々はマウス副腎皮質由来Y1 細胞およびヒト成人副腎cDNA において遺伝子A の発現を確認した。さらに成獣および新生仔マウス副腎を用いてin situ hybridization を行い、副腎皮質被膜下における遺伝子Aの発現も確認した。遺伝子A の一過性強制発現系(HEK293細胞、CMV プロモーターによる遺伝子A 過剰発現下)におけるWnt-βカテニン機能解析系を確立し、野生型および変異体(該当領域欠失)のβカテニン産生能を比較したところ、遺伝子Aの過剰発現は、野生型・変異体ともにβカテニン産生を抑制した。この結果より、強制発現下の機能解析では検討困難と判断し、薬剤誘導性安定発現下の機能解析系を確立する方針とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)最終的に「生化学診断が困難な原発性副腎皮質機能低下症」の対象症例は9症例増加し、63 例となった。解析遺伝子は最近報告されたMIRAGE症候群(責任遺伝子:SAMD9)も含む12遺伝子(AAAS, CYP11A1, CDKN1C, DAX1, MC2R, MCM4, MRAP, NNT, SAMD9, SF1,STAR, TXNRD2)とした。全63例中54例で遺伝子変異を同定した(STAR 19例、NR0B1 20例、SAMD9 8例、AAAS 3例、NNT 2例、MC2R 1例、CDKN1C 1例)。対象症例の臨床データを用いて各単一遺伝子疾患の臨床的特徴および遺伝子型-表現型関連について検討を加え、現在論文投稿中である。 2)切断点未確定1例の切断点同定を目的として、カスタムアレイを行った。切断候補領域をさらに狭め、PCR-シークエンス法で切断点同定を試みたが、不可能であった。 3)既知責任遺伝子変異陰性例を対象に、遺伝子Aを含む領域のカスタムアレイを行い、1例に微細欠失を同定した。PCR-シークエンス法により切断点同定を行い、最終的に8kbの欠失であることを確認した。 4)遺伝子A cDNA を薬剤誘導性安定発現ベクター(具体的にはcumate誘導性PiggyBacトランスポゾン発現ベクター)に制限酵素処理で組み込んだ。さらに該当領域を欠失した遺伝子A 薬剤誘導性安定発現ベクターも同様に作成した。HEK293細胞に導入し、遺伝子Aの薬剤誘導性安定発現株の樹立を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1)予定通りに、論文投稿した。 2)切断点未確定1例について、次世代シークエンス法を用いて全ゲノムシークエンス解析を行い、切断点同定を試みる。 3)新たに微細欠失を同定した1例について、可能であれば両親の解析を行う。 4)遺伝子A 薬剤誘導性安定発現株を用いた機能解析系(ルシフェラーゼアッセイによるβカテニンの定量)を確立する。遺伝子A 薬剤誘導型安定発現株にルシフェラーゼ発現ベクター(TCF/LEF レポーター)を導入する。誘導薬剤(cumate)とヒトWnt3a とヒトRSPO1 を培養液中に添加後にONE-GLO reagent を添加し、蛍光強度を定量する。誘導薬剤の添加量と添加時間などの条件検討により、Wnt3a とRSPO1添加量増加に伴い、βカテニン産生量が増加する遺伝子A 発現誘導薬剤添加量と添加時間を決定する。
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Causes of Carryover |
平成28年度はほぼ予定通りに遂行できた。残金1円は次年度(平成29年度)に使用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画を遂行する。
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