2017 Fiscal Year Research-status Report
ニーマンピック病C型における免疫系による神経変性誘導
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16K10006
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
安田 徹 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 成育遺伝研究部, 研究員 (50468576)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニーマンピック病C型 / ミクログリア / 単球 / マクロファージ / 自然免疫 / 獲得免疫 / 細胞治療 / RNAシークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
ライソゾーム病の一つであるニーマンピック病C型(NPC)における神経変性のメカニズムを解明し、新たな治療法を開発することを目的に研究を行っている。小脳プルキンエ神経細胞の脱落のメカニズムとして、脳内ミクログリアおよび浸潤マクロファージなどの自然免疫系が関与するという仮説を立て、その検証を行なっている。 まず始めにミクログリアの関与を調べるため、ミクログリアを欠損するモデルマウスを作成した。CSF1R阻害剤の混合食餌により、神経変性後期にミクログリアの死滅を誘導したところ、プルキンエ細胞の神経変性に影響はなかった。また神経変性初期における関与を調べるため、ミクログリアを先天的に欠損するCsf-1欠損opマウスとNPCモデルマウスとの交配を行なっている。 次に脳内浸潤マクロファージの神経変性への関与を調べた。ジフテリア毒素受容体を単球・マクロファージに特異的に発現するマウスを用いて、NPCモデルマウスにおいて単球を欠損させたところ、プルキンエ細胞の脱落が有意に抑制された。このことは脳外から浸潤してくる単球・マクロファージが神経変性を誘導することを示している。現在は、恒常的に単球を欠損するCcr2-RFPノックインマウスを用いて検証を行い、NPCマウスの寿命の変化を調べている。 また脳内浸潤マクロファージを分離してRNAシークエンスによるトランスクリプトーム解析を行っている。浸潤マクロファージにおいて神経変性誘導に関わるキーモレキュールを同定したいと考えている。 また、自然免疫以外にも獲得免疫が関与する可能性を考え、リンパ球を欠損するRag1欠損マウスを用いた。これにより、NPCモデルの神経変性が促進されることを示唆する結果を得ることができた。現在、詳細に検証を行っているところであり、またCD4陽性T細胞による細胞治療の効果を検証する準備ができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、クロドロン酸リポソームのマウス脳内投与、CSF1R阻害剤Pexidartinib混合食餌によりミクログリアを欠損するモデルマウスの作成を試みた。 クロドロン酸リポソームについては、定位脳手術法により直接小脳へあるいは脳室内へ投与を行なったが、小脳内でのミクログリアの死滅を確認することはできなかった。クロドロン酸リポソームの小脳内への拡散が不十分であった可能性が考えられる。CSF1R阻害剤Pexidartinib混合食餌によるミクログリア除去については、神経変性後期に処置することで確認することができた。このとき、プルキンエ細胞の脱落には影響がないことがわかったため、神経変性後期にミクログリアは関与していないことがわかった。現在、神経変性初期の変性誘導にミクログリアが関わるかを調べるため、定常的にミクログリアを欠損するモデルマウスCsf-1欠損opマウスを用いて実験を行なっている。NPCモデルマウスとの交配を行い、目的とするマウスが得られつつある。ロタロッドによる行動学的評価を開始している。 脳外から血流に乗って浸潤する単球・マクロファージの神経変性誘導能を調べるため、血流中の単球を欠損するモデルを作成した。これにより、浸潤する単球・マクロファージが神経変性を誘導する作用を有することを見出した。現在は恒常的に単球を欠損するCcr2-RFPマウスを用いてNPCモデルマウスとの交配を行なっている。 また自然免疫以外に、獲得免疫が神経変性に関わっている可能性を見出した。獲得免疫を欠損するマウスとNPCモデルマウスを交配させ、神経変性がより強く誘導されることを確認した。ヘルパーT細胞を用いた細胞治療の可能性について検証を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ミクログリアはNPCモデルマウスにおけるプルキンエ神経変性の後期プロセスには関与しないことが明らかとなったため、次にミクログリアを先天的に欠損するモデルマウスCsf-1欠損opマウスを用いて、プルキンエ細胞の初期変性誘導にミクログリアが関わる可能性を検証する。現在マウスの繁殖を行なっていて、少数ではあるがモデルマウスが産まれてきており、ロタロッドによる行動学的評価を開始している。 またCD11b-DTRマウスを用いて、NPCモデルマウスにおける小脳プルキンエ神経細胞の脱落に脳内浸潤マクロファージが関わることを確認した。現在恒常的に末梢血中の単球を欠損するCcr2-RFPマウスとNPCモデルマウスを交配しており、マクロファージの浸潤抑制がNPCマウスの寿命をどの程度まで伸ばすことができるかなどを確認する予定である。さらに脳内浸潤マクロファージをセルソーターにより分離し、トランスクリプトーム解析を行っている。神経変性を誘導するキーモレキュールが同定できれば新たな治療候補薬の選別に利することができると考えている。 さらに自然免疫だけでなく獲得免疫細胞も神経変性に影響を与える可能性を見出した。この結果を受け、新たに細胞治療による効果の検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では当該年度中に脳内浸潤マクロファージのトランスクリプトーム解析を行う予定であったが、マウスの繁殖や細胞分離・RNA精製方法の確立に時間がかかってしまったため、当該年度末に外注しており次年度への繰越後すぐに予算を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)