2017 Fiscal Year Research-status Report
MDA5、抗MDA5抗体の機能解析による重症間質性肺障害発症機構の解明
Project/Area Number |
16K10022
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小林 法元 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (00362129)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MDA5 / 間質性肺炎 / 若年性皮膚筋炎 / 抗MDA5抗体 / 抗Mi-2抗体 / 筋炎特異的自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
・Melanoma differention-associated gene 5(MDA5)は細胞内受容体であるが、患者血清中にMDA5に対する抗体が存在することは、細胞外に放出されたMDA5が樹状細胞に取り込まれ抗原提示されたことを示している。抗MDA5抗体陽性若年性皮膚筋炎(juvenile dermatomyositis: JDM)患者血液中のMDA5の存在を確認するため、抗MDA5 polyclonal 抗体を用いたMDA5 ELISAを作成している。治療経過中のいくつかの時期の患者血清を準備しており、測定をおこなう予定である。 ・本学における遺伝子研究の倫理審査が受理されたため、昨年度に引き続き機能解析のための融合蛋白の合成を行っている。るMDA5のアミノ酸配列が3Kbp以上あるため全蛋白を一括に合成することが困難だった。そのためMDA5の疾患の原因と関連する可能性のある構造の選別を行っている。また、同時に市販されているMDA5蛋白を用いた解析も進めている。 ・患者血清の実験への利用に際し、異なる筋炎特異抗体の有無を確認するため、保存されている患者血清での抗Mi-2抗体をELISAで測定した。34例中2例で陽性となった。間質性肺炎(interstitial lung disease: ILD)の合併との関連では、急速進行性ILD合併例では5例中0例、慢性または軽快したILD合併例では20例中1例、ILD非合併例では19例中1例が陽性であった。抗MDA5抗体および抗TIF1-γ抗体と重複して検出された例は無かった。以上より、抗Mi-2抗体は、日本のJDMにおいて検出される頻度が低い可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の計画では、リコンビナントMDA5を作成して、刺激実験を行う予定であったが、本学における遺伝子研究の倫理審査の遅れもあり、また、MDA5は分子量が大きく、蛋白合成を行っている段階である。平成30年度に刺激実験を行う計画である。 患者肺病理組織を用いた研究については、MDA5の作用について刺激実験の結果を確認後、病態におけるMDA5の役割について評価が可能な最適な方法により検討する方針とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、若年性皮膚筋炎患者血清中におけるMDA5の有無について確認する。ELISAは現在進行中である。また、免疫沈降法でも解析を行い、タンデムマスを用いてペプチド配列を解析することにより病態に関与している可能性のあるMDA5の部分構造を確認する。 融合蛋白質を用いて、ヒト末梢血単核球、Tリンパ球、単球、気道上皮細胞株などを刺激する。上清中のサイトカインをCytometric Bead Arrayまたは、ELISA法により測定する。ILDでの上昇が報告されている、インターロイキン-18やIP-10、BAFF、APRILなどを中心に、探索する。また、MDA5のリガンドであるpoly(I:C)や患者血清および市販されているポリクローナルMDA5抗体による共刺激を行い、抗体の作用を確認する。その後、マルチプレックスmRNA発現測定によりMDA5固有のシグナル伝達を解析したい。 その後、RNAiを用いてMDA5の細胞内シグナル伝達の解析を行う。解明されたMDA5の細胞内シグナルに関係する分子についてsiRNAを作成する。これらのsiRNAを細胞に移入することにより対象となる分子をノックダウンし、シグナル伝達の阻害により、MDA5によるサイトカイン産生が抑制されるかを確認する。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度は、リコンビナントMDA5などの融合蛋白を作成し、刺激実験を行う予定であった。しかし、癒合タンパクの合成について時間がかかっている。したがって、融合蛋白による末梢血細胞や気道上皮細胞への影響を解析するための刺激実験の費用が次年度への繰り越しとなった。 (使用計画)平成30年度に、融合蛋白による刺激実験を行う。また、平成29年度に行う予定であった細胞内シグナルの解析についても完了する予定であるため、次年度使用額と予定されていた平成30年度の研究費を合わせて使用する。
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