2016 Fiscal Year Research-status Report
内在性変異導入分子による白血病クローン多様性獲得機構の解明
Project/Area Number |
16K10026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丹羽 明 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (20546999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 白血病モデル / クローン進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバルな遺伝子解析は、AMLの発症・進展に関与する遺伝子変異を新規に同定するとともに、AML細胞が新しい変異を獲得してクローン進化していく経過を観察可能にした。しかし、それらの変異がなぜ獲得されたのか、 単にランダムな変異導入の結果なのか、あるいは標的細胞特異的、標的遺伝子特異的な変異獲得機構が存在するのかについての疑問には、まだ答えられていない。近年、内在性変異導入分子と固形腫瘍のクローン多様性獲得との関わりを示唆する報告が出始めている。本研究はこの遺伝子に注目し、 本分子が個々のAML体細胞変異獲得に働く機構を探索・解析し、AMLのクローン進化・悪性化の機序についての新しい知見を得ることを目的としている。 28年度は、iPS細胞を用いた内在性変異遺伝子の発現解析:iPS細胞から誘導した造血前駆細胞を骨髄球系、赤芽球系、巨核球系といった系統ごと、 成熟段階ごとに区別して回収し、内在性変異遺伝子の発現を測定した。結果として、造血細胞系では特定のサブファミリー遺伝子に偏った発現が見られること、またその強度は細胞の系統・成熟段階ごとに異なることが明らかになった。同様の検討を臍帯血由来造血幹前駆再棒を用いても行ったところ、その傾向はiPS細胞由来造血細胞と類似しており、iPS細胞由来造血細胞が本研究のリソースとして妥当であることを確認した。そこで、次にAML1-ETO, MLL-AF9を含む数種の白血病遺伝子導入iPS細胞を作成し、それらの細胞から誘導した造血前駆細胞において、正常クローンとの比較を行った。その結果、白血病変異導入細胞においては、前述の前駆細胞に加えて、より未熟な一部の造血幹前駆細胞レベルで内在性変異導入遺伝子の発現の高い細胞が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常な造血細胞、iPS細胞において内在性変異導入遺伝子の発現プロファイルを予定どおり獲得することができた。また、それら遺伝子変異の発現の高い分画を明らかにすることができた。 一方、当初予定では続いて網羅的遺伝子発現を計画していたが、サンプル調製の最適化に時間を費やし年度内の解析には至らなかった。今後引き続きこの点から研究を続行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Tg-iPS細胞の作製:各内在性変異遺伝子のもたらす遺伝子改変作用を詳細に検討するため、強制発現またはノックアウト (KO)iPS細胞を作製する。具体的には、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて遺伝子をDox(Tet)誘導的に発現させるカセットを導入する。申請者の研究室ではCRISPR/Cas9技術で両ア リルにターゲティングベクターを効率よく挿入する技術を確立している。
AML関連遺伝子座へのアクセスの検出:AMLで高頻度に検出されている遺伝子変異について、上段で同定した変異導入遺伝子のアクセスを検証する。手法としては、Chip-Seq、FISH等を用いるが、申請者らの研究室ではいずれも安定に施行できる 手技を確立している。
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