2017 Fiscal Year Research-status Report
MLL転座型白血病の白血病幹細胞の機能的マーカー探索と治療応用に向けた基礎的研究
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16K10030
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
江口 真理子 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (40420781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 榮一 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (20176126)
江口 峰斉 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (50420782)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MLL融合遺伝子 / 白血病 / 白血病幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
MLL融合遺伝子を有するヒト白血病細胞のマウス移植モデルを用いて解析を行った。免疫不全マウスにMLL-AF4融合遺伝子を有するヒト白血病(急性リンパ性白血病)より樹立された白血病細胞株を経静脈的に移植し、移植後早期に骨髄に生着したヒト細胞を回収、発現アレイ等を用いて検討した。移植後早期に骨髄に生着した白血病細胞では、TWEAK受容体(TNFRSF12A)の発現上昇を認めた。TWEAK受容体シグナルに関連して、MLL-AF4陽性白血病細胞において、TWEAK受容体であるFN14 (TNFRSF12A)のノックアウト細胞を作製し、その増殖能や細胞周期などの解析を行った。CRISPR-Cas9システムを用いてFN14の両アレルをノックアウトした白血病細胞株を作製した。FN14ノックアウト細胞の増殖能は野生型の白血病細胞と比較して有意な差はなく、また細胞周期にも有意な差は認めなかった。現在FN14ノックアウト白血病細胞を免疫不全マウスへ移植して白血病モデルを作製し、骨髄への生着能への影響を検討中である。 またMLL融合遺伝子を発現するマウスES細胞を作製し、造血幹細胞より未分化な細胞におけるMLL融合遺伝子の影響を検討するとともに、白血病幹細胞形成のモデルとして、白血病幹細胞への進展に必要な因子の同定を試みた。白血病細胞への進展に必要な付加異常を導入するために、MLL融合遺伝子を有するマウスES細胞へインサートを持たないレトロウイルスベクターを導入し、ランダムな挿入変異を導入した。挿入変異を生じたMLL-AF4陽性マウスES細胞由来の造血細胞はオリゴクローナルに増殖し、免疫不全マウスへの移植で腫瘍の形成が認められた。腫瘍細胞からDNAを抽出し、inverse PCR法によりレトロウイルスの挿入部位を同定した。現在挿入変異による増殖能獲得のメカニズムを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫不全マウスへの移植による白血病モデルの作製、遺伝子発現解析など実験系は確立し、概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
MLL融合遺伝子を有する白血病幹細胞の骨髄内での維持・増殖のメカニズムの解明に関して、29年度に得られた結果を基に研究を進めていく。 TWEAK受容体シグナルに関連して、MLL-AF4陽性白血病細胞において、TWEAK受容体であるFN14 (TNFRSF12A)のノックアウト細胞の骨髄への生着能を免疫不全マウスへの移植による白血病モデルを用いて検討する。その増殖能や細胞周期などの解析を行う。また免疫不全マウスへの移植による骨髄への生着能が影響を受けるかどうかを検討する。またTWEAK-FN14システムの阻害剤が白血病細胞の骨髄生着や増殖・進展を阻害しうるかどうかを検討していく。 MLL融合遺伝子を有するマウスES細胞から得られた未分化造血細胞にインサートを持たないレトロウイルスベクターを導入し、ランダムな挿入変異を起こさせると造血細胞の増殖能や造腫瘍能は増加する。しかしながら免疫不全マウスへの移植実験系では腫瘍の発生を認め、腫瘍細胞はBリンパ球のマーカーを一部発現しているが、移植したマウスに白血病の発症は認めなかった。今年度は挿入変異を導入したMLL-AF4発現ES細胞由来の造血細胞を各種サイトカイン(IL7やSCF、FLT3リガンド等)を用いてBリンパ球への分化を刺激することによりリンパ性白血病の再現を試みる。また挿入変異により遺伝子発現に影響を受けた遺伝子を同定し、その腫瘍科における役割を解明するとともに、これらの分子に対する抗体や阻害剤(低分子化合物)のスクリーニングを行い、白血病細胞の生着・発症が抑制されるかどうかをマウス移植モデルで検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、ある程度の免疫不全マウス購入費を他の研究資金で振り分けることができたため、最終的に研究費に次年度使用額が生じた。 使用計画としては、今年度も当初の研究計画通り、マウスES細胞や遺伝子改変ヒト白血病細胞を用いた免疫不全マウスへの移植実験と遺伝子変異導入による白血病発症能の実験を行う予定である。
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