2016 Fiscal Year Research-status Report
既存の自己抗体が未特定の自己免疫疾患における網羅的抗リン脂質抗体の検討
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16K10031
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
是松 聖悟 大分大学, 医学部, 教授 (60264347)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抗リン脂質抗体 / 脳梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
【緒言】小児の脳梗塞は稀で、もやもや病や先天性凝固異常症、抗リン脂質抗体症候群、心疾患、ミトコンドリア病などに併発することがあるが、原因が特定できないこともある。われわれは、抗カルジオリピン(CL)抗体が陰性であったSLEに網膜中心静脈閉塞症を合併した症例において、血管内皮細胞のリン脂質の主要構成成分である抗ホスファチジルコリン(PC)抗体が上昇している例を見いだし報告した。今回は、基礎疾患未確定の小児の脳梗塞例の中に、リン脂質抗体が上昇している例がないかを検討した。 【対象と方法】対象は2009年-2014年に大分大学医学部小児科に入院し、脳血管病変、凝固異常、心疾患、代謝疾患等の特定にいたらなかった小児の脳梗塞の患児3名(3か月、1歳、5歳)。3か月あけた2回の採血から得られた血清を用いて、CL、PC、PE(ホスファチジルエタノラミン)、PS(ホスファチジルセリン)に対するIgG抗体をELISA法にて測定した。病的対照児としてProtein C欠損症による脳梗塞例2名(1か月、7歳)の1回の血清とし、Cut off値は、自己免疫疾患、血液凝固異常のない食物アレルギーの対照児6名の平均+2標準偏差とした。 【結果】対象児のうち、2回ともに抗CL抗体がCut off値を超えて上昇していたのは1名のみであったが、抗PC抗体、抗PE抗体は3名、抗PS抗体は2名に継続した上昇がみられた。Protein C欠損症による脳梗塞例2名にこれらの抗体の上昇はみられなかった。 【結論】抗CL抗体以外のリン脂質抗体の病的意義は検討課題である。ただしリン脂質の微量構成成分に対する抗CL抗体が陰性の場合でも、主要構成成分に対するリン脂質抗体の上昇している例があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、血清抗カルジオリピン(CL)IgG抗体、抗β2GPI抗体、ループスアンチコアグラントは陰性であった症例にCL以外のリン脂質抗体:抗ホスファチジルコリン(PC) IgG抗体、抗ホスファチジルエタノラミン(PE) IgG抗体等の上昇を見いだし(Korematsu S et al. BMC Pediatr 2014)、また、インフルエンザワクチン関連し神経炎2例に、抗PC IgG抗体の上昇を見出してきた(Korematsu S et al. Vaccine 2014)。 そこに新規に、小児では珍しい脳梗塞例において抗PC IgG抗体、抗PE IgG抗体が上昇していることを見出し、臨床検査として用いられている抗CL IgG抗体だけなく、網羅的抗リン脂質抗体の測定が有用であることを証明しえている(Korematsu S et al. Brain Dev 2017)。英論文として受理されており、その新規性が評価されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、抗カルジオリピン抗体が陰性の習慣性流産症例、自己免疫疾患例を対象として、網羅的抗リン脂質をELISA法にて測定する。これらの疾患におけるそれぞれの抗リン脂質抗体の動態を把握する。方法は以下である。① 患児と保護者の同意を得て採血し、血清を分離する。② PC、PE、CL、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、エタノラミンプラズマロージェン、リゾホスファチジルコリン、それぞれをエタノールで50 µg/mlに懸濁し、ELISAプレートにcoatingする。③ 1/10希釈の血清を3 wellずつ添加反応させる。④ 次いで1/2,000希釈のperoxidaseでラベルされたヤギ抗ヒトIgG抗体を添加反応させ、o-phenylenediamineによる発色を行い、吸光度を測定する。 また、動物モデルを用いてポリクロナル抗体を作成し、ヒトの血管内皮細胞、大脳、視神経の病理切片に免疫染色し、それぞれの臓器への抗体の親和性を検討する。方法は以下である。① ウサギにPC、PE、CL等をアジュバントとともに感作させ、ポリクリナル抗PC抗体、抗PE抗体、抗CL抗体等を作成する。② 保存されている大脳、視神経、脊髄等の病理切片に、抗PC抗体、抗PE抗体、抗CL抗体等が高値の患児の血清を重層し、4℃、overnightで培養する。③ Wash、Blocking後、1/1,000希釈のマウス抗ヒトIgG抗体を重層し、4℃、overnightで反応させる。④ Wash後、peroxidaseでラベルされたヤギ抗マウスIgG抗体を重層する。⑤ 3,3’-diaminobenzidine, tetrahydrocholorideにて発色する。
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