2016 Fiscal Year Research-status Report
川崎病の発症に係る細菌同定およびheat-shock蛋白の産生動態に関する検討
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16K10042
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
永田 智 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70266055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴田 敏久 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70197771)
千葉 幸英 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80567991)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | heat-shock protein / プライマー / ELISA / 16S rRNA遺伝子 / Western blotting / 分子系統樹 |
Outline of Annual Research Achievements |
川崎病の原因を確定するため、過去に申請者が患者の上部消化管から検出した「病原体の遺伝子」および川崎病の主要な合併症である冠動脈瘤形成の発端となる「病原体特異的なheat-shock protein(HSP) 」を川崎病患者の臨床検体から検出しうるツールの開発を試みた。 まず、病原体の遺伝子を分子生物学的に検出するプライマーの完成を目指した。その結果、目的菌の一つであるAcinetobacter属細菌株は16S rRNA遺伝子の塩基配列を解読したところA. radioresistensであったので、これに対する特異的プライマー を作成した。目的とするNeisseria属菌株は、新種の細菌であったため、分子系統樹上、subgroupとして認識するプライマーの開発を行った。 更に、病原体特異的HSP60タンパクの検出用の抗体作製を検討した。これまでに既報の配列より、A. radioresistensおよびNeisseria属HSP60遺伝子の全長を増幅可能なプライマーを設計し、このプライマーを用いて当該株におけるHSP60遺伝子配列を決定した。これらの遺伝子配列から予想されるアミノ酸配列について近縁菌種とのアライメントを行い、種あるいは株特異的アミノ酸の特定およびエピトープの推定を試みた。その結果、各菌のHSP60を対象とした特異抗原を決定することができた(Neisseria 419-432; Acinetobacter 449-462; Enterobacter 426-439)。各抗HSPペプチド抗血清を用い、各HSP60 1/2,000希釈を一次抗体として、Western blotting法により、目的とするバンドが60 kDa付近に得られることを確認した。これより、ELISA系の構築に進み、標的菌種とそれ以外の菌種間で、定量的に閾値設定が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来なら、患者検体からの細菌遺伝子および細菌特異的HSP60タンパクの検出まで着手する予定であったが、ほとんどの川崎病患者検体から抽出されたNeisseria株が新種であったことから、この遺伝子をPCRで検出するプライマーおよびその産生物であるHSP60を検出する抗体の開発に時間がかかった。しかし、かなりの高精度のものを完成させることができたことから、次年度以降は、臨床検体の解析に集中できることが最も大きな意義、重要性と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記プライマーとモノ・ポリクローナル抗体の開発と同時に次年度から集中的に解析を予定している臨床検体を、1年間で川崎病だけで17検体収集できたことから、4年間で川崎病検体50例分、疾患対照検体50例分を収集できる見通しが十分立った。次年度以降は、実際の臨床検体を用いての解析を順調に進めることができる見込みである。
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Causes of Carryover |
次年度以降に、当該年度で開発した病原体の遺伝子を分子生物学的に検出するプライマーと病原体特異的HSP60タンパクの検出用の抗体を用いて、川崎病および疾患対照の臨床検体を用いた解析に進む予定であったが、当該年度中に血液6検体について解析を行ったので、その検討に次年度使用額の一部を使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、当該年度に開発した病原体の遺伝子を分子生物学的に検出するプライマーと病原体特異的HSP60タンパクの検出用の抗体を用いて、当該年度に解析した6検体を検証するとともに、川崎病検体15例、疾患対照検体15例を目標に、臨床検体(血液検体、咽頭拭い液検体)の解析を計画している。
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