2018 Fiscal Year Research-status Report
川崎病の発症に係る細菌同定およびheat-shock蛋白の産生動態に関する検討
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16K10042
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
永田 智 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70266055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴田 敏久 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70197771)
千葉 幸英 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80567991)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 川崎病 / 病原体 / 上部消化管 / 分子生物学的検出法 / heat-shock protein |
Outline of Annual Research Achievements |
川崎病の原因を確定するため、過去に申請者が患者の上部消化管から検出した「病原体の遺伝子」および川崎病の主要な合併症である冠動脈瘤形成の発端となる 「病原体特異的なheat-shock protein(HSP) 」を川崎病患者の臨床検体から検出しうるツールの開発を試み、臨床検体への応用を試みた。川崎病の発症に関わる可能性の高いNeisseria属、Acinetobacter属Enterobacteriaceae属、Enterococcus属、Staphylococcus属、Streptococcus属の特異的プライマーを用いて、これまで川崎病患者急性期血液検体38検体、咽頭拭い液検体24検体を用いて、RT-qPCRによる菌数定量解析を施行した。その結果、N. sicca subgroup、N.cinerea subgroup、N. flav subgroup、N. weaveriの遺伝子は、それぞれ95%、79%、68%、63%と高率に川崎病患児の咽頭粘膜より検出されたが、2例の疾患対象患者からは検出されなかった。同様に、Acinetobacter属 も川崎病患者検体からのみ42%検出されていた。なお、Staphylococcus属、Streptocossus属は、上記のNeisseria、Acinetobacter属の菌株が検出された患者咽頭粘膜全例から同時に検出された。なお急性期血液検体からは、上述の菌遺伝子のうち、Enterobacteriaceae属、 Staphylococcus属、Streptocossus属が31検体中2検体(検出率7%)認められるにとどまった。 2. 病原体特異的HSP60タンパクの検出用の抗体による定量 川崎病急性期血清のAcinetobacter HSP60(Acinetobacter 125-138)およびNeisseria HSP60 (Neisseria 419-432)のサンドイッチELISA(間接法)によるHSP60 定量系の開発に成功した。この検討により得られたポリクローナル抗体を用いて、川崎病急性期血清31検体を解析したところ、1検体のみ高抗体価(640倍)の NeisseriaHSP60を検出するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来なら、疾患対照検体からの細菌遺伝子および細菌特異的HSP60タンパクの検出まで着手する予定であったが、新種のNeisseria株のプライマーおよびその産生 物であるHSP60を検出する抗体の開発に時間がかかったため、数検体の解析にとどまった。かなりの高精度のツールを完成させることができたことから、次年度は、疾患対照検体にも焦点をおいて臨床検体の解析に集中できることが最も大きな意義、重要性と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
新種のNeisseria菌株特異的HSP60タンパクの検出用の抗体による定量がわずか1検体でのみ高値であったのは予想外であったので、その原因を考察したところ、これらの検出用サンプルを川崎病回復期(冠動脈病変の出現頻度の高いとされる11-13病日)の患者血液検体に求めていたことがわかった。実際の病原菌特異的HSP産生時期は、ごく病初期でありこれが免疫グロブリン製剤により中和され冠動脈病変を抑制する機序を考えると、ごく病初期の患者血液検体における同タンパク産生量を測定する必要性があると考え、今年度は、同解析により重点を置く予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の研究経費は、前年度に請求した物品で賄えたので、翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画として、当該年度に開発した病原体の遺伝子を分子生物学的に検出するプライマーと病原体特異的HSP60タン パクの検出用の抗体を用いて、次年度に川崎病検体12例、疾患対照検体48例(それぞれ合計50例)を目標に、臨床検体(血液検体、咽頭拭い液検体)の解析および成果報告および策定 のための会議を予定している。
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