2016 Fiscal Year Research-status Report
新生児死亡の原因となるエンテロウイルス感染症-CVBの危険性-
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16K10054
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
中田 恵子 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (50516747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エンテロウイルス感染症 / 新生児 / 無菌性髄膜炎 / 重症化リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
エンテロウイルス(EV)感染症は毎年夏期を中心に小児で流行を繰り返す。その病型は不顕性から死亡事例まで多岐に渡る。EV感染症は重症化する場合があることが知られているが、重症化リスク因子は解明されていない。近年、我が国では生後1カ月齢未満の新生児でEV感染による脳炎、心筋炎、肝機能障害、死亡等の重症化事例の報告が相次いだ。これまで収集した疫学データを解析することで、EV感染症では比較的重症度の高い無菌性髄膜炎で新生児とコクサッキーウイルスB(CVB)群感染の関連が示唆された。そこで、本研究では、EV感染症を疑う新生児の疫学情報および検体を系統的に収集し、ウイルス検出・情報解析を実施し、新生児EV感染症におけるリスク因子を明らかにすることを目的とした。平成28年は協力医療機関から68名分の新生児検体が搬入された。そのうち28名から検査対象としたウイルスが検出された。6名分(21%)はEV/Rhinovirusの型別ができなかったが、型別できたものはCVB5(25%),RhinovirusA(14%),ヒトパレコウイルス(HPeV)3型(11%),Echovirus(Echo)9(7%),HPeV4,エンテロウイルス71,Echo6,Echo25,CVA69,CVB1(4%)であった。しかし、重症と定義した死亡、脳炎、脳症、髄膜炎、肺炎、心筋炎、麻痺、臓器機能不全と診断された新生児がなかったため、重症化に対するリスク解析は実施していない。 平成28年度は大阪府において小児ではヘルパンギーナが流行し、その主な原因ウイルスはCVA4であったが、新生児からは検出されず、また新生児で検出されたウイルスもヘルパンギーナや手足口病の小児ではほとんど検出されなかった。一方で、小児の無菌性髄膜炎患者から検出されたEVと新生児から検出されたEVは類似していることが再確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、新生児EV感染症のリスク評価に対する統計学的解析を実施するために新生児検体として200名分以上検体の収集を目標としている。平成28年度最後に2医療機関の研究参加手続きが完了し、さらに検体収集が加速される可能性が高い。現時点においても、目標検体数の3分の1程度は確保できており、検査対象としているウイルスの検出が40%を超えていることからも、予定とおりの検体数およびウイルス検出が期待できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度末時点で当初予定していた5医療機関全ての研究参加が本格的になった。平成29年度は平成28年度以上に検体数が増加する可能性が高いため新生児のEV感染症のリスク因子の解析ができることが期待される。さらに、小児のEV感染症の動向と併せて精査し、解析を実施することで、新生児に特異的なEV感染の動向が明らかになる可能性がある。
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Causes of Carryover |
研究対象の患者の発生は予期できず、協力医療機関からの検体送付に係る輸送料金について一定の余裕をもって年度末まで予算を確保していたために残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度と同様、検体輸送料金および検査費用について検査検体数に応じて支出する予定である。平成29年度は平成28年度よりも検体数の増加が見込まれる。そのため、平成29年度は可能な限り検体輸送や検査をまとめて実施することで対応する。
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Research Products
(2 results)