2016 Fiscal Year Research-status Report
肺血管幹細胞の同定と肺血管発生における分子機構の解明
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16K10074
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
前田 潤 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00255506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 敬子 慶應義塾大学, 保健管理センター(日吉), 講師 (50286522)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肺血管幹細胞 / 肺血管内皮前駆細胞 / 肺間葉系細胞 / 先天性心疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス胎仔、成獣肺を用いて、細胞表面マーカーSca-1陽性・CD31陽性細胞が、肺血管幹細胞であるという仮説の下に研究を行った。 研究初年度として、(1)マウス胎生期から成獣までの肺組織におけるSca-1陽性・CD31陽性細胞の時間空間的発現様式を明らかにすること、(2)マウス胎生期から成獣までの肺組織を用いて、細胞表面マーカーの蛍光ソーティング(FACS)により、Sca-1+CD31+細胞を単離し、肺血管幹細胞候補を特定することについて解析を行った。(1)については、胎生14.5日のマウス胎仔肺と、生後2日、成獣マウスの肺の新鮮凍結切片、パラフォルムアルデヒド固定のパラフィン切片を用いて、肺血管幹細胞マーカーとしてSca-1を、血管内皮細胞マーカーとしてCD31、Flk1、Tie2、VE-Cadherin、vWFを、血管平滑筋マーカーとしてαSMA、線維芽細胞マーカーとしてvimentinを選択し、これらに対する1次抗体と蛍光2次抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。抗Sca-1抗体とのこれらのマーカー抗体を用いた2重染色を行い、抗Sca-1抗体陽性細胞は、一部血管内皮に、大部分は肺胞壁、肺間質に発現していることが判明した。発現は、胎生14.5日、成獣よりも生後2日の切片で多く認められた。これらの細胞集団を単離するため、最もSca-1発現が認められた生後2日のマウス肺分散細胞に対して、抗Sca-1抗体および抗CD31陽性細胞を蛍光2次抗体で標識し、蛍光細胞をセルソーターで選別することを複数回行い、目的とするSca-1陽性・CD31陽性細胞の単離を試みた。現在実験を行った範囲では、当該細胞はごく少数の回収にとどまり、得られた細胞集団を培養し、機能解析する段階には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
免疫組織化学染色の至適条件の決定に時間を要した。当初、マウス肺の新鮮凍結切片を用いたが、凍結切片では免疫反応の過程で肺胞壁の破壊が多く、パラフィン切片を用いることとした。また、抗Sca-1抗体の蛍光シグナルが微弱であったため、パラフィン切片熱処理や、トリプシン処理による抗原賦活化、ビオチン、アビジン複合体法によるシグナル増幅、抗体濃度調整を行い、種々の組み合わせで予備実験を繰り返す必要が生じ、当初の計画よりもかなりの時間を要した。現在までのところ1/100濃度のビオチンでラベルし、1/1000濃度のストレプトアビジンでシグナル増幅を行うと、蛍光の検出感度が高まることが判明した。しかし、同じ条件ではFACSによるSca-1陽性・CD31陽性細胞の回収の効率が悪く、さらにシグナル増幅法を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
Sca-1陽性・CD31陽性細胞の蛍光シグナル増幅のため、トリプシン処理、ビオチン、アビジン複合体法における反応時間、濃度調整をさらに行う。アビジンは塩基性が強く、非特異的な反応が生じやすいため、中性のストレプトアビジンを用いたが、シグナル増幅のためには、アビジンの方が適している可能性がある。また、tyramide signal amplification (TSA)増感システムを用いたシグナル増幅も試みる。市販のTSA-Plusキットを用いたcatalyzed reporter deposition法は、他の研究で蛍光強度を増幅させ、明瞭な免疫組織化学染色が得られた実績があり、試みる価値はあると思われる。欠点として、市販キットが高価であること、非特異的な反応が増強される可能性があることが挙げられ、反応時間等の検討のため、複数回の予備実験が必要である。これらの検討でシグナル増幅が確認できた後に、FACSによるSca-1陽性・CD31陽性細胞の単離を再度行う。
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Causes of Carryover |
臨時職員(アルバイト)を雇用する必要がなくなり、申請した人件費がかからなくなったため、次年度使用額が生じた。当初は臨時職員に実験補助(試薬作製、マウス処理)を依頼する予定であったが、指導する大学院生が自らの実験、手技実習も兼ねて、自発的に実験補助を行ったため、臨時職員なしで実験を進めることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Sca-1陽性・CD31陽性細胞の蛍光シグナル増幅のため、当初は予定していなかった市販のTSA-Plusキットを用いた実験を行う必要が生じた。次年度使用額を用いてキットを購入し、TSA増感システムによるシグナル増幅検討を行う。良好な増幅が得られれば、そのプロトコールを用いてFACSを行い、Sca-1陽性・CD31陽性細胞の単離と、自己複製能、分化能、血管新生能の解析をすすめる。
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