2018 Fiscal Year Research-status Report
胎盤細胞で働くエンドソーム膜タンパク質MLN64のコレステロール輸送における役割
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16K10113
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
奈良 篤樹 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (60387959)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MLN64 / エンドソーム / ミトコンドリア / オルガネラ近接 / 3D電子線トモグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
オルガネラ膜間が生む極小ゾーンは,コレステロール等の低分子物質の移動が起こる極めて重要な機能を有する。この極小ゾーンで起こる輸送機能を明らかにする研究が世界的に進められているが,得られた知見は意外に少ない。研究代表者は,胎盤細胞においてエンドソームとミトコンドリアが接近することを発見し,小胞体を経由したミトコンドリアへのコレステロール輸送経路の説に新たな展開が期待された。また研究代表者は,脂質の有無によってエンドソームとミトコンドリアとの間で接近と離脱を繰り返すことを見出し,オルガネラ間の極小空間で起こる接近と離脱の動的平衡を制御する巧妙な未知の機構の存在に興味を持った。そこで本研究は,エンドソーム-ミトコンドリア膜間ゾーンが生むコレステロール輸送機構の詳細解明を目的とする。 そこで本年度は,下記(1)~(4)の成果を得た。 (1)この接近を免疫電顕法により定量的に評価することで,エンドソームとミトコンドリアとの間のオルガネラ近接を確実に証明した。 (2)エンドソーム膜タンパク質MLN64ノックダウン細胞では接近できないことを明らかにすることを目的に,免疫染色を介した3D電子線トモグラフィーによる新規解析法を考案して実施し,MLN64がエンドソームとミトコンドリアの接近に必要であることを示した。 (3)JEG3細胞抽出液を用いたショ糖密度勾配遠心法によりオルガネラ分画を行った。MLN64抗体を用いたimmuno-isolationをし,MLN64を含むエンドソームの単離を試みた。培地の血清から脂質を除いた培地を用いた条件も検討し,脂質有無のエンドソームを準備した。 (4)MLN64のN末領域と相互作用する因子を免疫沈降実験により同定する目的で,MLN64のN末から膜貫通領域までの領域とGFPとの融合遺伝子を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト胎盤細胞におけるエンドソーム-ミトコンドリア間オルガネラネットワークは,大量かつ恒常的なプロゲステロン産生に極めて重要な役割を持っていると考えられている。しかしながら,プロゲステロン産生に必要なコレステロールがどのようにミトコンドリアへ輸送されているのか,未だ謎は多い。そこで本年度研究計画は,コレステロール輸送を担うエンドソーム-ミトコンドリア間極小ゾーン理解に務めた。(1)エンドソームとミトコンドリアとの間の接近を定量的に評価するため,MLN64ノックダウン細胞と,そのコントロール配列導入JEG3細胞のエンドソームを,エンドソームマーカーであるLamp1抗体で標識し,電子顕微鏡を用いてエンドソームとミトコンドリアとの接近を観察した。その結果,コントロール細胞においてLamp1標識区画にミトコンドリアが接近している割合は15.8 ± 2.8%(n=497)に対し,MLN64ノックダウンでは4.1 ± 1.1%(n=372; p < 0.01)まで減少した。(2)抗Lamp1抗体標識したノックダウン細胞での3D電子線トモグラフィー解析を行ったところ,MLN64ノックダウンではエンドソーム膜の面においてもミトコンドリアと接しておらず,離れていることがわかった。(3)MLN64が存在するエンドソームの生化学的単離を目的に,JEG3細胞の破砕抽出液をショ糖密度勾配遠心による細胞分画を行ったところ,オルガネラに乗るMLN64は本来の分子量サイズより若干大きいバンドも得られ,MLN64のリン酸化の新規知見を得ることができた。(4)エンドソーム~ミトコンドリア間極小ゾーンを制御する候補因子MLN64のN末領域で相互作用する因子を免疫沈降実験により同定する目的で,MLN64のN末から膜貫通領域までの領域とGFPとの融合遺伝子を作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から,MLN64がエンドソームとミトコンドリアとの接近に必要であることがわかった。この結果は,研究代表者が考案した免疫標識法とカップルさせた3D電子線トモグラフィーを行うことでクリアに証明された。さらに,MLN64のリン酸化の新規知見を得ることができたことから,脂質の有無によるMLN64の挙動やリン酸化を検討することを今後積極的に行う。エンドソーム~ミトコンドリア間極小ゾーンを制御する候補因子MLN64のN末領域で相互作用する因子を免疫沈降実験により同定する目的で,MLN64のN末から膜貫通領域までの領域とGFPとの融合遺伝子を作製した。この融合遺伝子の発現や局在などを確認するとともに,N末領域で相互作用する候補因子の検索実験を今後行ってゆく。候補因子の機能として,エンドソームとミトコンドリアとの間の接近を制御するものである可能性もあり,本研究の発展性が期待される。
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