2017 Fiscal Year Research-status Report
ニコチンによる表皮アセチルコリン受容体の活性化は掌蹠膿疱症の発症に関与するのか?
Project/Area Number |
16K10121
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
岸部 麻里 旭川医科大学, 医学部, 講師 (90431410)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニコチン / アセチルコリン受容体 / 自然免疫 / 細胞間接着分子 / 表皮ケラチノサイト / 汗腺 / 掌蹠膿疱症 |
Outline of Annual Research Achievements |
掌蹠膿疱症の病態形成には、表皮内汗管の閉塞、抗菌ペプチド(dermcidin、cathelicidin)の産生増加などが膿疱形成に関わるとされている。正常ヒト表皮角化細胞(NHEKs)と汗管細胞(NCL-SG3)をニコチン0-250nMで96時間刺激し、細胞間接着分子、表皮分化マーカー、抗菌ペプチドの発現が変化するか、RT-PCR法および細胞染色により解析した。ニコチン暴露96時間後、NHEKsにおけるタイトジャンクション構成分子(Occuludin, Claudin-23, ZO-1)、コルネオデスモシン構成分子(desmoglein 1, Corneodesmosin)、抗菌ペプチド(Cathelicidin、β-defensin-2)の発現が有意に低下した。一方、NCL-SG3では、変化がみられないことがわかった。以上から、ニコチン暴露は表皮角化細胞におけるホメオスターシスを変化させるが、汗腺細胞には影響しないと考えた。 さらに、TNF-α誘導性炎症反応が、ニコチン刺激によって増強するか検討を行った。NHEKsを高カルシウムで培養し分化を誘導すると同時に、0-250nMのニコチンで刺激し、72時間後にTNF-αを添加し、さらに24時間培養を行った。コントロールは、ニコチン前処置のないTNF-α刺激のみを使用した。培養細胞を回収し、サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-17、IL-22、IL-36等)の発現を定量的PCRとELISAにて解析した。その結果、ニコチン前処理群では有意にIL-6、IL-8の発現が上昇することがわかった。このことから、ニコチン暴露は表皮ケラチノサイトにおけるTNF-α誘導性炎症を増強させる可能性を考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、ニコチン刺激24時間後の培養細胞の変化を解析する予定であったが、細胞の状態に影響を与えないことがわかった。実臨床においては、喫煙者は長期間ニコチンの暴露を受けていることを踏まえて、培養細胞に長時間ニコチンを作用させるよう実験条件を修正している。また、マウスへのニコチン投与実験を検討していたが、煙草の煙を暴露するにあたって、器具が予定以上に高額であり入手困難なことから、ニコチン投与経路の再検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
TNF-α誘導性炎症反応に追加して、ニコチンがTLRアゴニスト刺激へ反応性を変化させるか検討を行う。NHEKsを高カルシウムで培養し分化を誘導すると同時に、0-250nMのニコチンで刺激し、72時間後に至適濃度のPam2CSK4、FSL-1などのTLRアゴニストを添加し、さらに24時間培養を行う。コントロールは、ニコチン前処置のないアゴニスト刺激のみを使用する。培養細胞を回収し、サイトカイン(TNF-α、INF-γ、IL-6、IL-8、IL-17、IL-22等)、抗菌ペプチド(Cathelicidin, Dermcisin、β-defencin等 )の発現を定量的PCRおよびウエスタンブロット法、免疫染色により解析する。
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Causes of Carryover |
当初の予測と異なる反応が得られたため、計画を一部修正の上、適正な研究費の使用を心掛けた結果、次年度使用額が生じた。今後、培養表皮細胞、TLRアゴニスト、マウスへのニコチン投与デバイスの購入に使用することを予定している。
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