2016 Fiscal Year Research-status Report
アクアポリンが透過するH2O2による皮膚の炎症形成機構の解明
Project/Area Number |
16K10125
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
竹馬 真理子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40531736)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アクアポリン / 皮膚炎症 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
アクアポリンが透過するH2O2が調節する細胞内シグナル伝達の制御機構の解明と、皮膚の慢性炎症・炎症性疾患形成への関与を解明することを目的としている。 皮膚を構成する表皮細胞および免疫細胞を研究対象とし、慢性炎症形成過程において、アクアポリンが細胞内へ透過させたH2O2がセカンドメッセンジャーとして制御しているシグナル伝達系を明らかにし、細胞機能への影響と、その作用機序を解明する。さらに、炎症反応誘発過程でおこる表皮細胞と免疫細胞間クロストークへのH2O2の関与を検証する。 初年度である2016年度は、表皮細胞およびマウス皮膚におけるH2O2の測定方法の検討と、H2O2が関与する炎症刺激・皮膚疾患を検討した。表皮細胞では、H2O2感受性遺伝子Hyperを導入した安定細胞株を樹立したことで、細胞内のH2O2濃度を可逆的に測定することを可能にした。マウス皮膚でのH2O2測定方法については、来年度も検討を継続する。 H2O2が関与する炎症刺激として紫外線照射を検討し、照射条件と細胞でおこる反応について条件検討を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで細胞内のH2O2濃度測定は、H2O2を含めたROSに感受性のあるCMDCF蛍光試薬による検出が一般的であった。しかしこの化合物はH2O2特異的でないことや、ROSにより誘発される蛍光強度が不可逆的であり、細胞内のH2O2代謝や変動を測定できていなかった。そこで、H2O2感受性遺伝子Hyper (サイトゾール発現型、ミトコンドリア発現型)をヒトおよびマウス表皮細胞株(HaCaTおよびPAM212)に導入し、発現安定株を樹立した。様々な刺激により、表皮細胞内のH2O2濃度が上昇することと、細胞内の局在の解析が可能になった。 また、H2O2を多く産生する刺激・条件を細胞系およびマウス皮膚で検討した。今年度は、紫外線B(UVB)照射による細胞内H2O2レベルの変動や、細胞シグナル活性化を検討した。UVB照射直後から、MAPK/p38シグナルが活性化されることを確認し、この活性化には細胞内ROS/H2O2が関与していることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、UVB照射による産生が亢進するH2O2の蓄積・代謝の、細胞内における局在を調べ、またH2O2が関与している細胞シグナル・遺伝子変動を検討していく。また細胞膜にあるアクアポリンが、H2O2の輸送・蓄積・代謝および、刺激により誘発される細胞シグナルにどのように関与しているかを、細胞レベルで解析する。 またH2O2産生に関与するNADPH oxidase 1 (NOX1)およびNOX2遺伝子欠損マウスを用い、種々の刺激により誘発されるH2O2の産生経路について検証する予定である。
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