2017 Fiscal Year Research-status Report
皮膚抗菌ペプチド発現異常の改善を利用した掌蹠膿疱症の治療開発
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16K10128
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
村上 正基 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20278302)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 掌蹠膿疱症 / エクリン汗腺 / 抗菌ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本学学術支援センターにて開発された無細胞タンパク質合成法により、GST-あるいはHis-tag標識した human cathelicidin: hCAP18 リコンビナントペプチドの作製に成功した。掌蹠膿疱症病変部水疱内に出現するhuman cathelicidin (hCAP-18)由来の異常フラグメントはTLN-58であることを同定した(JID2017)。 hCAP18リコンビナントペプチドを用いて、掌蹠膿疱症患者より採取された表皮内水疱内容物が実際にこの異常フラグメントを生じる反応を生ずるか確認するため、On column digestion実験を施行した。得られた産物を質量分析並びにアミノ酸シークエンスにより解析し、TLN-58であることが確認されたため、MASCOT database searchを用いてTLN-58を生成しうる原因proteinaseの検索を行った。数種類の候補がヒットしたが、掌蹠膿疱症の初期水疱内に単球・マクロファージが出現することをヒントに、neutrophiclic elastase (ELA2)に注目し、そのプロテアーゼインヒビターとして、α1antitrypsinを用いて反応阻害実験をおこなったところ、TLN58の生成が抑制されることが確認された。 これらの事実を踏まえて、α1antitrypsinによる皮膚角化細胞およびエクリン汗腺由来細胞(NCL-SG3)に対する細胞毒性の影響をCytotoxic AssayならびにApoptosis Assayにて検討したところ、前者に対する細胞毒性を認めるに至ったが、NCL-SG3細胞については皮膚角化細胞に対して用いた同濃度の実験系では細胞毒性を認めなかった。ところが、近年NCL-SG3細胞がprimary cultureで得られた汗腺細胞と比較して、外来刺激に対する種々反応性が著しく低いことが報告され、NCL-SG3に代わるprimary cell cultureを急ぎ樹立する必要が生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近年、本実験に用いているエクリン汗腺由来細胞NCL-SG3の生理活性が疑問視される報告があった。外来刺激に対する反応性が著しく低いことがこのことに由来する可能性が浮上し、確認実験を行うためにprimary culture cellを樹立する必要性が生じた(エクリン汗腺細胞は商用ベースで入手することはできないため)。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、急ぎ臨床検体からエクリン汗腺細胞のprimary cultureを行うため、organ cultureを施行し、P3まで継代をすることに成功している。この得られた細胞の特性を調べ、GCDFP115やCEAなどの表面マーカーを用いてフローサイトメトリーによるセルソーティングを行い、得られた細胞でsingle cell lineを樹立する。細胞が得られたところで、責任proteinaseおよびproteinase inhibitorによる細胞毒性の検証から実験を再開する。
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Causes of Carryover |
実験の中心となる培養細胞を新規樹立する必要性が乗じたため、本来予定していた実験の一部が中断されているため。 この問題に関しては、既にIRBの承認を得て多指症患者手術時の余剰手掌皮膚を提供してもらうことができるようになった。既に一症例より余剰皮膚の提供を受けることができたため、既報論文を参照にして器官培養を行うことに成功している。今後は、その後各部位ごとの初代培養細胞を分離するために細胞のsortingを行い、部位ごとのsingle cell lineの分離および培養をすすめる。cell lineが確保されたのち、現在中断している(1)TLN-58によるヒト角化細胞及びエクリン汗由来細胞への影響の検討を再開する。その後は実験計画書に従い、(2)TLN-58 processingに対する責任proteinaseが皮膚角化細胞及びエクリン汗腺由来細胞(NCL-SG3)に及ぼす影響及び細胞毒性の検討、(3)責任proteinaseに対するproteinase inhibitorの決定へと実験をすすめる。 支出予定:マウス購入・維持;300, リコンビナント蛋白作成;200, ウエスタンブロット試薬; 100, 培養細胞関連試薬;300, RT-PCR及びrealtimePCR関連試薬;100, ELISAキット; 100(千円)
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