2017 Fiscal Year Research-status Report
乾癬におけるカベオリン発現異常と末梢血単球の機能解析
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16K10131
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
山口 由衣 横浜市立大学, 医学部, 講師 (60585264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相原 道子 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (90231753)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乾癬 / カベオリン / 単球 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化性炎症において重要な働きをする単球は、多くの乾癬関連サイトカインを産生するだけではなく、その多彩な形質から、組織に遊走、接着し、マクロファージ(Mq)へ分化することで直接的に組織炎症に関与する。乾癬患者はメタボリック症候群を合併する率が高く、単球系細胞の形質異常などが病態に関与する可能性が示唆される。今年度は、患者由来末梢血単球におけるM1/M2マーカーのRT-PCRもしくはFACSによる発現解析を施行した。乾癬患者と健常人由来の末梢血単球における比較において、M1マーカー(CD11c、CCR2)の発現は差がなかったが、M2マーカー(CD163、CD206)は乾癬患者で有意に低下していた。また乾癬患者の生物学的製剤による治療改善後におけるこのM1への偏移は解消されていた。これは、乾癬患者の単球形質がすでにM1に偏移していることを示し、動脈硬化や乾癬炎症に寄与する可能性を示す。現在、単球由来MqにおけるM1/M2マーカーの解析やサイトカイン発現を解析中である。さらに、我々が着目するカベオリン1(Cav-1)は、細胞膜タンパクであり、脂質代謝を制御するほか、各種シグナル伝達因子に直接的に作用し抑制的に制御する。本研究により、乾癬表皮細胞だけではなく、乾癬患者由来の末梢血単球においても有意にCav-1が低下していることを見出した。さらに、末梢血単球のCav-1発現をRNA干渉法で低下させ、LPS刺激によるサイトカイン産生を検討したところ、Cav-1発現低下単球ではIL1βとIL6の産生が有意に増強し、さらに、MCP-1に対する走化性も増強した。これらの結果から、乾癬患者の単球ではM1に偏移した炎症性の形質異常があり、また、乾癬患者の単球におけるCav-1発現低下は、局所への遊走とサイトカイン産生の増強という観点から乾癬病態への関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に予定していた、末梢血単球におけるM1・M2マーカー発現などの形質異常の解析は、本年度に入り順調に進んだ。さらに、今年度計画されていた、乾癬患者および健常人における末梢血免疫細胞のカベオリン発現の検討やその機能解析は予定通りに進行しており、マウスを用いた実験系も確立していることから、全体的には、おおむね順調に進展していると考えている。現時点では、患者由来の単球をMqに分化させた上でのサイトカイン発現の解析がやや遅れているが、原因は適切な患者サンプルの収集に時間を要するためである。現時点では、徐々に結果が集積してきており、最終年度内には問題なく終了すると考えている。なお、末梢血単球からMqへの分化誘導実験系はすでに確立している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、患者サンプルの獲得が必要な解析にはやや時間を要するが、これまでの進行状況を考えると、3年間の計画は期間内に完了できると考えている。最終年度は、イミキモドを用いた乾癬モデルマウスの末梢血免疫細胞におけるCav-1発現解析、および、Cav-1機能ペプチドを用いることでの臨床的改善評価を通じて、単球の関与する乾癬の病態解明、およびCav-1発現是正を考慮した新規治療法開発につながる結果をだすことを目標としている。現時点で乾癬モデルマウスを用いた実験系は確立しており、これまでの検討では、乾癬モデルマウスの末梢血免疫細胞においても、Cav-1発現の有意な低下を認めている。Cav-1の機能ドメインを含むペプチドを全身性に投与した際の、乾癬様皮膚炎の臨床的・病理学的検討、浸潤細胞の解析をさらに予定している。また、細胞培養実験系では、Cav-1発現低下単球がMqへ分化する際のM1およびM2マーカーの発現解析、サイトカイン産生解析などを通じて、Cav-1発現低下単球由来Mqにおける形質異常を解明できる。これら視点によって、Cav-1発現の低下した単球が、乾癬性炎症もしくは動脈硬化性炎症へどのように寄与するのか、という疑問に対する答えの一端を明らかにできると考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は4488円の次年度使用金が生じたが、次年度は、動物実験がメインとなるため、マウス購入代、飼育代、さらにCav-1機能ペプチド、免疫染色やPCR,ELISAなどを含めた試薬代を含めて、さらに多くの購入資金が必要となる。
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