2016 Fiscal Year Research-status Report
表皮角化細胞の分裂・増殖に対するIL-33の機能解明
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16K10135
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
津田 英利 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (30414923)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | IL-33 / siRNA / 細胞質分裂 / 細胞収縮管 / 細胞遊走能 / ケラチノサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
ケラチノサイトにおいて、IL-33をノックダウン(KD)すると2核の細胞が増えることを見出した。この現象が、分裂が不完全になることにより起こるのか、別々の細胞が融合して起こるのか確認するために、IL-33 KD後の細胞の状態をタイムラプス観察した。その結果、コントロール細胞では問題なく分裂出来る細胞が、IL-33KD細胞では、染色体分裂を行い、2核になった後の細胞質分裂が出来ず、娘細胞同士が融合してしまうことが解った。また、撮影の回数から細胞分裂、細胞質分裂自体の時間も遅延していることが解った。また細胞分裂時に重要である、Ect2、RhoA、リン酸化Myosin Light Chain (MLC)の蛍光免疫染色を行った。その結果、蛍光顕微鏡の観察では、局在などに大きなさを見つけることはできなかった。一方、細胞収縮管の構成に重要であるアクチンの重合度の違いを、IL-33KD細胞とコントロール細胞で重合アクチン(F-actin)と遊離アクチン(G-actin)の量比をウエスタンブロット法によって比較を行った。その結果、G-actinの量に大きな違いは見られないが、F-actinの量がIL-33KD細胞において減少していることが見つけられた。このことにより、IL-33KD細胞では細胞収縮管の機能が低下していることが再度確認出来た。 また、この結果を踏まえて、ボイデンチャンバー法を用いて細胞遊走能の比較を行った結果、F-actinの量が減少しているIL-33KD細胞では、コントロール細胞と比較して、細胞遊走能が落ちていることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に計画した、細胞のタイムラプス観察、及びウエスタンブロット法によってIL-33KD細胞において、発現及び活性化の減少が観察されたRhoA、Ect2、リン酸化MLCの蛍光免疫染色を行った。タイムラプス観察においては、コントロール細胞を用いて、最適な撮影条件(細胞が光毒性によってアポトーシスを起こさない光源量、撮影時間、撮影間隔)を見出すことが出来た。このことにより、より細かい、細胞の分裂の様子を観察することが出来た。蛍光免疫染色についてはコントロール細胞及び、IL-33KD細胞いずれにおいても、今回行ったRhoA、Ect2、リン酸化MLCの発現パターンや局在について違いを見出すことは出来なかった。蛍光免疫染色についてアクチンの重合度に比較検討については、市販のキットによって、何度か細胞数や細胞を回収するタイミング等を検討しながら比較を行った結果、IL-33KD細胞において遊離したアクチン(F-actin)の量が減少していることを明らかにすることが出来た。同時に、ボイデンチャンバー法を用いて、細胞運動能の比較を行った結果、こちらも予想通りIL-33KDよって細胞運動能が低下していることが明らかとなった。以上の結果から蛍光免疫染色以外についてはほぼ予定位通りに実験を行い、結果を得ることが出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、IL-33をケラチノサイトに一時的に過剰発現させた場合にIL-33をKDした場合と逆の減少が起こるか否か、検討を行う。すなわち、IL-33のfull lengthを発現するプラスミドをケラチノサイトへトランスフェクションすることによってIL-33を過剰に発現する系を構築する。この時にEct2の発現、RhoAの活性化、リン酸化MLC量のいずれもが増えるか否か、IL-33KD時と同様に比較検討を行う。また、同時に以前発見した、IL-33のスプライシングバリアントもトランスフェクションを行い、細胞の局在を詳細に観察するとともに、バリアントによって効果に差や違いがあるかどうかも検討を行う。細胞については引き続き、初代培養正常表皮ヒト角化細胞を用いることとする。マウスを用いた乾癬モデルについては今年度から処置の仕方、期間、などの検討を行い、IL-33の有無によって乾癬用皮疹の状態に違いが出るか否か、検討を始める。細胞のEct2、RhoA、リン酸化MLCの蛍光免疫染色による細胞内局在の違いの検討については引き続き実験を行い、可能であれば、IL-33の過剰発現時の違いについても検討を行うこととする。IL-33を過剰発現させた系においては、研究計画書にあるとおり、UV-Bに対する抵抗性の有無についても検討を行う。その為に以前我々の研究室で報告した、IL-33が誘導される系を再現できるか否か、検討を行い、その条件のもと、UV-B照射に対するIL-33の過剰発現の効果を検討することとする。
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Causes of Carryover |
予定通りに研究が進んだが、当初予定したケラチノサイト量を下回る量で実験を行うことが出来たため、余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算と併せて免疫染色に適した抗体を新たに探す等して有効に活用する。
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Research Products
(7 results)