2017 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the functional characteristics of human hair keratin K85
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16K10139
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
安藤 祥司 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (20193104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 裕子 佐賀大学, 医学部, 教務職員 (60295053)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘアケラチン / 中間径フィラメント / 貧毛症 / 蛍光蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
毛髪の形成機構と貧毛症の発症機序の解明に向けて、動物培養細胞にヒトのヘアケラチンK85および貧毛症のK85変異体をそれぞれ発現させ、K85の機能および遺伝子変異の影響を解明することが本研究の目的である。 昨年度までに、ヒトのK85(タイプⅡ)とK35(タイプⅠ)の合成遺伝子をそれぞれ発現ベクターであるpAcGFP1-Hyg-N1とpDsRed-Monomer-N1に連結した。また、対照としてヒトのサイトケラチンK5(タイプⅡ)とK14(タイプⅠ)を、それぞれpAcGFP1-Hyg-N1とpDsRed-Monomer-N1に連結した。今年度は、貧毛症に関連する変異をもつ2種類のK85遺伝子をpAcGFP1-Hyg-N1に連結した。さらに新たな対照として、マウスのサイトケラチンmK8(タイプⅡ)とmK18(タイプⅠ)を、それぞれpAcGFP1-Hyg-N1とpDsRed-Monomer-N1に連結した。 現在、リポフェクション法を用いて、種々の動物培養細胞に上記の遺伝子を導入し、中間径フィラメント(IF)などの構造物の形成の有無を、蛍光顕微鏡観察によって評価している。これまでにHaCaT細胞では、K5-K14とK85-K35のペアはそれぞれ、細胞質全体に広がるIFを形成した。MCF-7細胞でも、K85-K35とmK8-mK18のペアはそれぞれ、細胞質全体に広がるIFを形成した。一方、SW-13細胞では、K85-K35は細胞質全体に広がるIFではなく、短いIF様のフィラメントを核の周囲に形成した。現在、貧毛症に関連する2種類のK85変異体のそれぞれとK35を共発現させた場合について詳細を解析中であるが、これまでのところMCF-7細胞で変異の影響を観察している。 一方、2種類のK85変異体の試験管内での機能を解析する目的で、K85変異体の組換え蛋白質を大腸菌で発現する系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.貧毛症に関連する変異をもつ2種類のK85遺伝子をそれぞれpAcGFP1-Hyg-N1に連結し、動物細胞内で発現する実験系を構築できた。 2.HaCaT細胞とMCF-7細胞では、K85-K35、K5-K14、mK8-K18の各ペアは、細胞質全体に広がる中間径フィラメント(IF)のネットワークを形成することがわかった。 3.一方、SW-13細胞では、K85-K35は短いIF様のフィラメントを核の周囲に形成した。上記2.の2種類の細胞との違いは、内在性の中間径フィラメントの有無に起因することが考えられる。 4.貧毛症に関連するK85の2か所の遺伝子変異が、K85のフィラメント形成能にどのような影響を及ぼすかについては、解析中である。これまでのところ、MCF-7細胞で変異の影響を観察している。 5.貧毛症に関連する2種類のK85変異体の組換え蛋白質を量的に調製する大腸菌発現系を構築できた。
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Strategy for Future Research Activity |
HaCaT細胞とMCF-7細胞には、内在性のサイトケラチンによるIFが存在するが、構成蛋白質の種類が異なる。一方、SW-13細胞には内在性のIFが存在しない。K85-K35がフィラメントを形成するか否かや、フィラメントの形状は、細胞の内在性サイトケラチンの影響を受けることがわかった。そのため異なる種類の細胞ごとに、野生型K85と変異型K85の比較を、蛍光顕微鏡に加えて共焦点レーザー顕微鏡などを用いて注意深く行うことが必要である。また、野生型K85と変異型K85の組換え蛋白質を用いて、試験管内の機能の違いを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)HaCaT細胞にK85-K35のペアを発現させた場合には比較的容易にIFのネットワークが確認できたが、SW-13細胞の場合にはauthenticなIFのネットワークを確認することが難しいことがわかった。このため、SW-13細胞に遺伝子を導入するリポフェクション法の条件を種々検討するなどしたために、多く時間が経過してしまった。また、この間、生きた細胞内のK85-K35の挙動を観察できるか検討するため、観察機器の選定に手間取り、消耗品を予定より使わずに済んだためである。
(使用計画)平成30年度は繰り越された研究費を使って、他の動物細胞(例えばHeLa細胞)を購入する。また、細胞に内在するサイトケラチンおよび遺伝子導入したヘアケラチンの種類、発現量、細胞内局在を確認するために、種々の抗体を購入する。一方、組換え蛋白質の試験管内でのIF形成を評価するために、組換え蛋白質精製用のカラム類や電顕観察用の消耗品を購入する。
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