2016 Fiscal Year Research-status Report
幼若期ストレスにより誘発する成熟期情動行動異常の分子基盤解析
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16K10182
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 隆行 北海道大学, 医学研究科, 助教 (60374229)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 幼若期ストレス / 情動機能 / 神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
不安障害や気分障害は脳内のセロトニンなどのモノアミン系神経伝達物質の低下が原因とする仮説が提唱されているが、このような精神疾患を有する思春・青年期層にはSSRIなどの抗うつ薬に反応しない患者が一定数存在する。このため、これらの精神疾患の「モノアミン仮説」の範疇を超え、かつ生後発達過程に応じたメカニズム解明が必要である。本研究では、モノアミン/コリン作動性神経系に加えアミノ酸類および神経ペプチド類に着目し、情動機能調節に重要な脳部位である扁桃体における神経伝達修飾メカニズムを電気生理学的、神経化学的ならびに行動学的に検討する。思春/青年期のストレス障害の発症機序ならびに神経精神基盤の成熟に与える影響について新規の分子・神経回路・行動メカニズムを見出すことを目的として研究を行なっている。 幼若期(生後3週齢)と壮年期(生後10週齢)のそれぞれのマウス扁桃体神経細胞におけるセロトニン、神経ペプチドおよびカンナビノイド受容体感受性について電気生理学的に解析することを計画した。幼若期にストレスを負荷されたマウスの壮年期(生後10週齢)における情動機能の行動学的解析と扁桃体神経細胞の活動電位に対するセロトニンの効果について以下のような結果を得た。幼若期ストレスによって成熟期の扁桃体錐体細胞の活動電位の発生頻度が対照群に比較し有意に増大していた。また、対照群で認められるセロトニン濃度依存的な活動電位発生頻度の増大が幼若期ストレス負荷マウスでは認められず、セロトニンの感受性に差が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の2つの新知見1)および2)を得たとともに、計画にはなかった新たな知見として3)を得たため。 1) 幼若期ストレスによって成熟期の扁桃体錐体細胞の活動電位の発生頻度が対照群に比較し有意に増大していた。 2) 対照群で認められるセロトニン濃度依存的な活動電位発生頻度の増大が幼若期ストレス負荷マウスでは認められず、セロトニンの感受性に差が見られた。 3) 幼若期ストレスを受けたラットが成熟期にうつ様行動を示すことを確認し、この症状に対してケタミンの単回投与によって急性に回復効果を発揮した。
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Strategy for Future Research Activity |
幼若期ストレスによって神経細胞の活動電位の発生頻度およびセロトニン感受性に差が見られたことから、今後は興奮性および抑制性シナプス入力強度や棘突起密度や形態変化について解析するとともに、どのようなセロトニン受容体が変容しているのかサブタイプを追求する。また、幼若期ストレスによるうつ様行動に対してケタミンが効果的であることを踏まえ、ケタミンの作用機序についても検討する。
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Causes of Carryover |
オーダーメイド型の試薬を海外企業に発注を検討したが、納期に数カ月を要する事が年度末に判明し、年度内に購入できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
オーダーメイド型の試薬を海外企業に発注する。
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