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2017 Fiscal Year Research-status Report

うつ病における海馬と扁桃体の統合的理解を目指して

Research Project

Project/Area Number 16K10183
Research InstitutionHealth Sciences University of Hokkaido

Principal Investigator

泉 剛  北海道医療大学, 薬学部, 教授 (60312360)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywordsうつ病 / 動物モデル / ストレス / グルココルチコイド / HPA系 / 海馬 / 副腎 / SSRI
Outline of Annual Research Achievements

前年度に引き続き、うつ病の動物モデルである幼若期ストレス(3週齢での電撃ストレス5日間)および成熟期ストレス(7週齢での反復拘束ストレス7日間)の(視床下部-下垂体-副腎)HPA機能について検討した。前年度までの検討で、幼若期ストレスでは成熟後に血中コルチコステロンの基礎値が低下する一方で、ストレスに対するHPAの反応が亢進し、海馬ではグルココルチコイド(GR)受容体が減少していた。本年度は、このようなHPA系の変化をきたした原因を追究した。その結果、幼若期ストレスでは室傍核のCRH mRNAは増加しており、血中ACTHは正常であった。ACTH負荷による副腎からのコルチコステロン分泌も正常であった。さらに、海馬でのGR受容体減少の意義を明らかにするため、脳内でGR受容体を強制発現するレンチウイルスベクター(LVV)を作成した。まず、正常ラットの両側海馬歯状回にLVVを局所投与してGR受容体を強制発現させ、2週間後に高架式十字迷路試験と強制水泳試験をおこなった。その結果、GR受容体強制発現によって自発運動量の低下が認められたが、不安およびうつ様行動に変化は認められなかった。GR強制発現の効果がストレス負荷で増強することを予想して、両側歯状回にGRを強制発現させたラットに、さらに7日間の拘束ストレスを負荷した上で同様の行動試験を行ったが、自発運動量の低下が認められたのみであった。一方、成熟期ストレスに関しては、前年度までの検討で、GR受容体の阻害因子であるFKBP5が扁桃体で有意に増加しているという所見が得られていたため、本年度は、抗うつ薬(SSRI)であるエスシタロプラム(ESC)の投与によってこの所見が変化するかどうかを検討した。その結果、拘束ストレス負荷後、ESC 10 mg/kgの2週間の反復投与によって、扁桃体で増加していたFKBP5が正常レベルまで回復した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の計画では、ストレスによるHPA axis関連分子のエピジェネティックな変化を追及する予定であった。しかし、幼若期ストレスおよび成熟後の拘束ストレスによって、それぞれ海馬のグルココルチコイド受容体(GR)の減少、および扁桃体でのFKBP5増加という変化がタンパクレベルで認められたものの、いずれの分子もmRNAは変化しておらず、エピジェネティックな機序は関与していないものと思われた。そのため、本年度は、①幼若期ストレスによるコルチコステロン低下の機序、②幼若期ストレスによる海馬でのGR減少の意義、③成熟期ストレスによる扁桃体でのFKBP5増加とうつ様行動の関連、の3点について検討した。その結果、①に関しては、コルチコステロン低下は視床下部、下垂体、副腎のACTHに対する反応性のいずれにも起因せず、未知の機序によるものと思われた。②に関しては、レンチウイルスベクター(LVV)を用いて海馬でGRを強制発現させたが、自発運動量が低下したのみで、不安やうつ様行動に変化はなく、海馬GRがうつ様行動に果たす役割は現時点では不明である。③に関しては、成熟期ストレスによる扁桃体でのFKBP5増加が抗うつ薬(SSRI)であるエスシタロプラム(ESC)の投与によって拮抗された。これは強制水泳試験におけるうつ様行動(無動時間)と平行した変化である。これより、成熟期ストレスによる扁桃体でのFKBP5増加は、うつ様行動と関連した所見であることが判明した。

Strategy for Future Research Activity

本年度の検討で、幼若期ストレスによるコルチコステロン低下は、視床下部、下垂体、副腎のACTHに対する反応性のいずれにも起因せず、未知の機序によるものと思われた。文献検索を行ったところ、既知のHPA系システム以外にグルココルチコイド分泌を調節している機序として、β-arrestin biased receptorであるCXCR7受容体とそのリガンドであるBAN-22(プロエンケファリンのフラグメント)を介した機序が報告されていた(Ikeda et al, Cell 2013)。本年度は、幼若ストレスラットの副腎で、CXCR7受容体とBAN-22、および関連する分子について変化があるかどうかを検討する。海馬GRの生理的意義については、本年度は、神経終末から取り込まれて軸索を逆行し細胞体にGRを強制発現するウイルスベクター、および特定の神経投射回路を選択的に除去するウイルスベクターを用いて、海馬がGRを介してHPA系を調節する機序について検討する。FKBP5については、共同研究者から自殺者死後脳の検体を提供して頂けたので、当初の予定通り、死後脳のFKBP5を測定する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2018 2017

All Journal Article (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Repeated fluvoxamine treatment recovers early postnatal stress-induced hypersociability-like behavior in adult rats.2018

    • Author(s)
      Kumamoto H, Yamaguchi T, Konno K, Izumi T, Yoshida T, Ohmura Y, Watanabe M, Yoshioka M
    • Journal Title

      Journal Pharmacological Science

      Volume: 136 Pages: 1-8

    • DOI

      10.1016/j.jphs.2017.12.002.

  • [Journal Article] Aberrant telomere length and mitochondrial DNA copy number in suicide completers.2017

    • Author(s)
      Otsuka I, Izumi T, Boku S, Kimura A, Zhang Y, Mouri K, Okazaki S, Shiroiwa K, Takahashi M, Ueno Y, Shirakawa O, Sora I, Hishimoto A
    • Journal Title

      Scientific Report

      Volume: 7 Pages: 3176

    • DOI

      10.1038/s41598-017-03599-8.

    • Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
  • [Presentation] 幼若期ストレスによる視床下部-下垂体-;副腎(HPA)系の機能変化2017

    • Author(s)
      王册、泉剛、吉田隆行、大村優、吉岡充弘
    • Organizer
      第90回日本薬理学会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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