2017 Fiscal Year Research-status Report
うつ病発症機序の2-hitストレスモデルによる検証
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16K10194
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
井上 猛 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (70250438)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小児期虐待 / 小児期養育体験 / 特性不安 / うつ病 / 感情気質 / 自尊感情 / ネグレクト / 主観的社会的地位 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.平成29年度にはまずうつ病を含む一般成人404名を対象に実施した質問紙調査データを用いて、小児期の養育体験、虐待が特性不安への影響を介して、抑うつ症状とストレスの否定的評価を増強するという仮説を検証した。その結果、小児期の低養育、過保護、虐待(特にネグレクト)が特性不安を増強し、さらに間接的に抑うつ症状とストレスの否定的評価を増強することが明らかになった。このモデルでは小児期の低養育、過保護は直接抑うつ症状に影響を与えることはなかったが、小児期の虐待(特にネグレクト)は直接抑うつ症状に影響を与えていた。したがって、抑うつ症状に対する小児期の低養育、過保護の影響はほとんど特性不安によって媒介される経路が主であるといえる。一方、小児期の虐待(特にネグレクト)は特性不安以外のパーソナリティ特性への影響も介して抑うつ症状に影響を与えている可能性があり、低養育・過保護と虐待のうつ症状に対する作用機序が異なることが示唆される。 2.さらに、小児期ストレスが自尊感情や感情気質を介して一般成人の抑うつ症状に与える影響において、主観的社会的地位が媒介効果を示すことが明らかになった。近年、主観的社会的地位と精神疾患発症との関連が示唆されており、本研究結果は主観的社会的地位が抑うつ症状に影響する機序を示唆している。 3.上記の小児期体験、パーソナリティ特性、抑うつ・不安症状と睡眠、職業性ストレス、レジリアンスとの関連について、平成29年度に600名の一般成人を対象に大規模調査を実施し、集計解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに多数のデータを集め、多変量解析により精神医学にとって重要な所見がえられている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在研究計画を計画通りに推進して、研究成果を得たい。
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Causes of Carryover |
(理由)順調に研究費を使用して研究を進めたが、年度をまたぐ研究のため、少額年度内に支出しきれなかった。しかし、次年度に継続する研究において次年度使用額を使用する予定である。 (使用計画)引き続き、データ収集のための消耗品、謝礼に使用していく予定である。
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Research Products
(11 results)