2016 Fiscal Year Research-status Report
自覚的認知機能低下患者における臨床的アルツハイマー病発症前診断法に関する検討
Project/Area Number |
16K10223
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田渕 肇 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10286578)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アミロイドPET / アルツハイマー病 / 発症前 / 自覚 / 告知 |
Outline of Annual Research Achievements |
もの忘れを主訴に慶應義塾大学病院メモリー外来、ないしは精神神経科を受診したが認知機能低下があまりみられなかった症例のうち、文書にて同意が得られた48例(2017年3月まで)に対してアミロイドPET検査、認知機能検査、心理検査等を実施した。気分・不安の評価尺度であるCES-D,IES,STAIについては、PET検査の告知後6週間後、6ヶ月後に再実施しており、さらに1年後に再実施の予定である。これらの結果から、PET検査結果告知後の気分・不安の変化を評価した。本研究における「認知機能正常な自覚的認知機能低下患者」の選択基準に合致した42例中10例においてアミロイドPETで陽性所見が得られた(発症前アルツハイマー病と診断された)。またアミロイドPETを実施した全例から告知の結果告知の希望があり、希望された全例に告知を行った。 アミロイドPET陽性群と陰性群では、MMSEなどのスクリーニング検査や、全般性知能や注意機能検査などの結果に有意差はみられなかったが、論理性記憶検査の遅延再生課題の結果に有意差を認めた(陽性群で有意に成績が低下していた)。また陽性群・陰性群で、検査前の抑うつ気分・不安・意欲などに関する尺度の結果に関して、有意差はみられなかった。 アミロイドPETの結果告知、および告知後6週間の気分・不安尺度の調査が終了した27例について、陽性群・陰性群について告知後の気分や不安に関して差がないこと、有意差はないがむしろ陽性群で告知後に不安が軽減されたことなどを国際学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度末時点で48例にアミロイドPET検査を実施し、48例中42例が解析の対象となった。またアミロイドPET検査告知後6週間、6ヶ月、1年後のフォローアップもほぼ脱落することなく順調に実施できている。研究参加者には特に有害事象も発生していない。以上から、現状では当初の研究計画通り、ほぼ順調に経過していると思われる。メモリー外来では現在も研究対象となる外来患者さんが多く来院しており、また本研究への参加希望者が比較的高率であることから、今後の対象者リクルートも順調に進むことが予想される。 告知の結果の心理的影響(告知前と6週間後の気分・不安の変化)については、まだ限られた例数であるが、論文投稿中である。対象者のベースラインにおける認知機能の状態等についても、中間報告として論文投稿の準備をしている。また、グループスタディの解析対象とはならなかったが、アミロイドPET検査を実施した結果、陽性であった非認知症患者1例について、非典型的な臨床症状を認めたことから、本人・家族の同意を取得し、国際学会での症例報告を予定している。 以上から、研究目的の達成度はProgressing Rather Smoothlyとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度を含めた今後の目標は、さらに主観的もの忘れ患者の新規症例を組み入れ、アミロイドPET検査の実施、認知機能・心理検査等による評価を行い、発症前診断方法の確立を目指すことである。結果告知後の追跡(心理検査の実施)も継続し、告知による心理変化に関する検討を行う。平成29年度も28年度同様にデータ解析を行い、現状で得られた知見に関する学会報告を行う。本年度はさらに健常高齢者に対するアミロイドPETの実施を予定しており、すでに慶應義塾大学医学部の倫理委員会において研究計画の承認を得ている。これら健常者と自覚的もの忘れ患者の認知機能の差異についても調査を進める。 また、対象となった患者のうち、希望者はメモリー外来での診療を継続している。これらの患者に対して詳細な認知機能検査・心理検査を追加実施し、その経過をフォローアップすることで、精神的な症状を訴えて病院を受診する患者に於けるADの発症前診断方法の確立、および診断結果告知の心理的影響に関する新たな知見が得られることが期待される。 本研究全体を通じて得られたADの発症前診断方法・進行予測の方法・有用なAD診断方法に関する知見は、専門家だけでなく家族会などの患者団体によって催される講演会などでも発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、ほぼ予定通りの症例を組み入れ、検査等を実施したことにより、おおむね当初に見込まれていた程度の予算を使用したが、5万円程度の誤差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度も、積極的にリクルートを行い、データ収集し解析を実施するため、検査費用、人件費、解析費用等の支出を予定している。以上を目的に、当初の予算に次年度使用額を加えたものを次年度に使用する予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Extremely Low Prevalence of Amyloid Positron Emission Tomography Positivity in Parkinson's Disease without Dementia.2017
Author(s)
Mashima K, Ito D, Kameyama M, Osada T, Tabuchi H, Nihei Y, Yoshizaki T, Noguchi E, Tanikawa M, Iizuka T, Date Y, Ogata Y, Nakahara T, Iwabuchi Y, Jinzaki M, Murakami K, Suzuki N
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Journal Title
Eur Neurol
Volume: 77
Pages: 231-237
DOI
Peer Reviewed
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