2017 Fiscal Year Research-status Report
致死性の低い手段による自殺未遂者の予後に関する研究
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16K10244
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
竹内 崇 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (70345289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 仁志 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (50782710)
冨重 智徳 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (10782724) [Withdrawn]
治徳 裕美 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 看護師 (30782742)
村上 一徳 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 臨床心理士 (40644795)
奥村 泰之 一般財団法人医療経済 研究・社会保険福祉協会(医療経済研究機構(研究部)), 医療経済研究機構, 主任研究員 (50554383)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自殺未遂 / 過量服薬 / 救急医療 / 救命救急センター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「致死性の低い故意の自傷」も自殺の危険因子であるという考えに基づき、自殺関連行動により救命救急センターに搬送される症例のなかから、致死性の低い手段である致死量に至らない過量服薬による救急搬送症例を対象として、その受診状況の実態を詳細に検討し、患者背景の解析および病状評価に基づいて非致死性自殺関連行動に関与する因子群を統計学的に解析することが目的である。さらに、その後の前方視調査を施行することにより自殺関連行動の反復や自殺既遂の予測因子を同定する。これによって得られた結果を活用することにより、最終的には自殺関連行動の再発防止および深刻な救急医療の負担軽減を図ることを本研究の目標としている。 現在の救命救急センターにおける精神科医診療体制としては、曜日別にリエゾン・コンサルテーション当番医を2名配置しており(精神保健指定医と研修医)、原則として彼らが患者の状態像の把握と処遇の決定を行うこととしている。また、精神科リエゾンチームによる毎朝の救命救急センターの回診、及び週1回のカンファランスにてその妥当性について検証を行っている。 本学における倫理審査委員会において本研究が承認されたのが平成28年9月であり、さらに同年12月に研究実施計画に若干の改定を行ったため、平成28年度中の対象患者数は13で、研究の同意を得ることができたのが4、過量服薬以外の比較対象とする患者数は11となっていたが、平成29年度は対象患者で同意が得られたのが18、比較対象患者は19となっており、全体でそれぞれ、22件と30件となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度までは毎年100例以上の「致死性の低い手段である致死量に至らない過量服薬」による救急搬送症例が入院していたが、平成28年度は全体で約60例にとどまっている。平成29年度においては、さらに前年度を下回る水準となっており、全例精神科医が診察を行っているが、対象患者の入院数のコントロールは我々には対応困難である。その背景として、日本における自殺者数の減少があると考えられる。日本の自殺者数は平成23年度までは年間3万人を超えていたが、自殺防止のための様々な取り組みの結果、平成24年度に3万人を下回って以来、毎年減少傾向となっている。よって、自殺の最大のリスクファクターとされる自殺未遂も減少傾向にあると推測され、対象患者の絶対数の減少が目標症例数に達していない主要因と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き精神科リエゾンチームによる毎朝の救命救急センターの回診を継続し、対象患者をもれなく抽出していくこととする。なお、前述した通り、日本の自殺者数は近年減少傾向にある。「致死性の低い手段である致死量に至らない過量服薬」による救急搬送症例が減少しているのも、その状況を反映している可能性は否定できない。自殺未遂者の減少は望ましいことであるが、救急搬送症例が減少している原因について救急科医師と検討し、対応方法があれば実施していく。
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Causes of Carryover |
当院では、自殺関連行動により救急搬送される患者の半数以上が近隣の精神科診療所に通院しており、受診後の経過を追うためには通院先の診療所の協力が重要である。よって、患者本人と連絡がつかない場合は、必要に応じて、当該診療所と連絡を取り調査を行うこととしていたため、協力が得られた精神科診療所に対する謝金を計上していたが、現時点で全例患者本人と連絡が取れており謝金が発生していない。これが次年度使用額が生じた主要因であると考えられる。今後、この使用額については、統計処理のために必要なツールや文献などを購入することに利用する予定である。
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