2021 Fiscal Year Research-status Report
てんかん患者の社会適応を阻害する認知機能障害の客観的評価ツールの開発
Project/Area Number |
16K10263
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
岡崎 光俊 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 研究生 (50568756)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | てんかん / 高次脳機能 / 心理検査 / うつ / 自閉症スペクトラム障害 / 注意欠陥多動性障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
てんかん患者の社会参加を促進する上で認知機能障害・高次脳機能障害を適切に評価することは重要課題である。てんかん患者における主観的な無能力感、生活上の困難さや社会適応上の問題がMMSE,WAIS-Ⅲ,WMS-Rなどの標準的に行われている知能検査では十分に評価しきれていないことは臨床的にしばしば遭遇する事実であり、本研究の目的は従来の高次脳機能検査の概念を超えた心理検査・精神医学的検査を多面的に組み合わせた心理バッテリーからてんかん患者の実生活上困難となる社会認知的問題を定性的・定量的に具体性をもって測定する方法を開発することにある。 外来を受診したてんかん患者および入院患者のうち同意を得られた患者から得られたデータをもとに生活の質にかかわる主観的な自己評価項目(①QOL②心理・精神状態③表現④理解⑤正当な評価⑥過大な評価⑦発作による制約⑧薬による制約)に関するスケールとAQ,CAARS,BDI-II,およびWAIS-IIIの項目、および患者の発作状態(発作頻度、罹患歴、抗てんかん薬の数)との関係性を検証した。統計解析の対象は集計の完了した171名のうち自己評価スケールとAQ,CAAR,BDI-IIを施行した131例を対象とした。BDI-II,AQ, CAARSの各項目は①-⑧の主観的評価の多くと有意な相関を示した、一方で発作頻度、抗てんかん薬の数、罹患歴などの発作状態は「発作頻度と⑦発作による制約」以外では有意な相関を示さなかった。またWAIS-III得点は①-⑧の主観的評価のいずれの項目とも有意な相関を示さなかった。てんかん患者ではAQ,BDI-II,CAARSといった精神・行動の評価スケールの得点は発作状態以上に主観的な自己評価と幅広く相関し、これらの評価は意義があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度は2名のエントリーにとどまった。COVID-19の影響により特に長時間の対面を要する心理検査の施行を避けることが強まったことが大きな問題である。今年度も厳しい状況は予想されるが研究全体としては193名の研究参加をいただいているため、さらに1年の研究期間の延長をいただき統計解析上信頼に足るデータを取得することを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
てんかん患者を引き続き研究施設の外来受診者から募集する。引き続きCOVID-19の蔓延に伴う患者受け入れや心理テストに関する制限をかなり受けることが予想されるため目標は10名/年とし、中間結果を踏まえてよりデータ解析に適した患者にターゲットを絞り長期対面を避けるための検査室の工夫も行う。達成のため研究施設に患者アクセスが可能な医療機関にも研究の存在と意義について説明を行い引き続き協力を求める。
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Causes of Carryover |
理由)継続した患者リクルート、エントリーを行い、患者に対して心理検査バッテリーを施行するため。 使用計画)心理検査を行う心理師への謝金・患者への負担軽減費・物品購入
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