2018 Fiscal Year Research-status Report
低線量X線動画イメージングによる肺機能診断法の開発
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16K10271
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田中 利恵 金沢大学, 保健学系, 准教授 (40361985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 寿郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (30272967)
松本 勲 金沢大学, 医学系, 准教授 (80361989)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 画像 / X線 / 放射線 / 情報工学 / 生理学 / 医学物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸過程を撮影した胸部X線動画像には,肺換気および血流動態がX線透過性(=画素値)の変化としてあらわれている.この変化は,単位容積あたりの肺血管・気管支密度および血液量の変化に起因する.すなわち,X線透過性(=画素値)変化の理解は,肺の動的変化の理解だけでなく,肺機能の理解にまでおよぶ重要な評価項目である.本研究では,肺の動的変化として,肺野内局所のテクスチャ変化,移動ベクトル,画素値の変化率に注目した.これらの動的変化から肺機能評価を可能にする画像解析技術を開発するために,今年度は,申請時に計画した4番目の課題「診断ロジックの確立」に取り組んだ. 本学附属病院で稼動しているX線動画撮影システム(試作機,コニカミノルタ)を用いて,2015年12月~2019年3月までに肺癌,間質性肺炎,肺線維症,喘息,COPDなどの約450症例のX線動画像を取得した.取得した胸部X線動画像から骨陰影を抑制したX線動画像を作成し,肺野領域の領域を対象に,肺野内テクスチャ変化,移動ベクトル,画素値の変化量や変化率,標準偏差等を解析し,正常組織の計測結果と比較した.さらに,他の検査結果(肺シンチグラフィ,CT,肺機能検査)や臨床所見をもとに計測した動的変化について考察した.正常組織との比較においては,画素値の変化量が有意に低下することを確認した.また,人体の4次元CTをもとにコンピュータシミュレーションで作成した仮想人体ファントムを対象に,異常検出能の評価を並行して行った.その結果,画素値変化量の低下は,異常領域の前後に残存する正常組織量に比例することが明らかとなった.その他の計測項目については一定の傾向は認められなかったため,今後,症例数を増やして検討する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
画像解析プログラム開発・改良と,新規症例データの収集を並行して行うことで,研究を効率的に推進した.症例数は150症例/年のペースで順調に増え,CT・肺機能検査・肺シンチグラフィ等の他の臨床データを包含した総合的な各種肺機能データベースの構築も順調に進んでいる.また新たに,肺野形状変化に追従しながら肺野内局所の動的変化を計測・定量化するプログラムを開発した.疾患・重篤度ごとの症例数が十分でないため統計的な検討には至らなかったものの,人体の4次元CTをもとにコンピュータシミュレーションで作成した仮想人体ファントム(Computational phantom)を検証対象に加えることで,臨床試験における検証を補うことができた.仮想人体ファントムによる異常検出能評価で得られた知見を国内外の学会で発表し,現在,論文化を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度の上記成果にもとづき,H31年度は(4)診断ロジックの確立:定量化した肺の動的変化について正常肺のパターン化と異常肺の特徴の解明を継続して行いつつ,(5)コンピュータ支援診断(CAD)システムの開発:正常パターンからの逸脱を根拠に異常を検出するCADシステムを開発,に取り組む.さらに,これらの研究開発と同時並行で新規症例を収集し,疾患・重篤度ごとの症例数の増加を図る.4次元CTをもとにモデル化した仮想人体(Computational phantom)を対象に,シミュレーション研究を並行して行い,異常検出能の予備検討や各種可変パラメータの最適化等の問題に並行して取り組み,最終的な研究成果の充実を図る.
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Causes of Carryover |
これまでの研究成果を北米放射線学会(2018/11/24-30,シカゴ,採択率約25%)にて発表するための海外旅費として予算を確保してあったが,演題不採択により渡航中止となった.このため残金が生じ,次年度使用額が生じてしまった.生じた差額及びH31年度に請求した助成金については,モバイルコンピュータと通信機器を組み合わせた試作システムの作成や,設備品管理や個人情報保護のためのセキュリティ対策に必要な物品,本申請課題の最終成果を海外に向けて広く発信するのに必要な費用(国際学会参加,論文化にかかる費用(英文校閲,カラー印刷代))に充てる.
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