2017 Fiscal Year Research-status Report
脳内NADPHオキシダーゼ活性測定を目的とするPETトレーサの開発
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16K10302
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
岡村 敏充 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 研究員(任常) (80443068)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | NADPHオキシダーゼ / PET |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化ストレスや生体防御システムに重要な役割を果たすニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸オキシダーゼ(NOX)活性のインビボ測定は脳疾患の病態解明や早期診断に大きく貢献すると期待される。これまでに酸化還元トレーサとして開発した1-[11C]methyl-1,4-dihydroquinoline-3-carboxamide([11C]DHQ1)あるいはこの類似化合物を用いて脳内のNOX活性を測定できるのではないかと考え、前年度は、代謝変換型の候補化合物としてこれらの合成を行った。今年度は、予定していたインビトロでの評価に先立ち、[11C]DHQ1とその類似体の脳内動態を比較検討した結果、新規[11C]ジヒドロキノリン誘導体は[11C]DHQ1よりも高い脳内取り込みが認められた。しかしながら、脳内放射能は最大値に達した後、酸化されることなく速やかに減少したことから、新規[11C]ジヒドロキノリン誘導体はNOXトレーサとして不適当であると判断し、インビトロにおける特異性の評価には[11C]DHQ1のみを用いて行った。マウス脳ホモジネート中の[11C]DHQ1の酸化速度はNOX阻害剤アポシニンおよびML171により濃度依存的に低下したが、VAS2870およびplumbaginでは対照群と同程度であり酸化速度の低下は認められなかった。アポシニンは非選択的なNOX阻害剤であり、ML171はNOX1に対する特異性が高いことから、[11C]DHQ1はマウス脳内でNOX1により特異的に酸化されるものと考えられる。以上、今年度の研究により、代謝変換型トレーサ[11C]DHQ1による脳内のNOX活性イメージングの可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究では、前年度未実施のマウス脳ホモジネートにおける候補化合物の酸化速度に対するNOX阻害剤の影響の評価および本年度計画の候補化合物の動態の評価を行った。その結果、新規[11C]ジヒドロキノリン誘導体はNOXトレーサとして不適当であったものの、[11C]DHQ1のインビトロにおける酸化速度がNOX1特異的阻害剤により低下したことから、[11C]DHQ1によるNOX活性イメージングの可能性を示すことができた。しかしながら、本年度計画のNOX欠損マウスを用いたトレーサの評価を行うところまで至らなかったので、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、NOX欠損マウスを用いた[11C]DHQ1のインビトロにおける酸化速度の評価および脳内動態の評価を行い、NOXに対する特異性/アイソフォーム選択性を調べる。また、インビボにおける僅かなNOX活性の変化を捉えるために、より適切な速度バランスを有するトレーサの探索を並行して行う。さらに、NOX発現の変化が認められている脳虚血モデル動物やパーキンソン病モデル動物を用いて、トレーサの応答性を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
初年度、候補化合物の合成に時間がかかったため、研究実施計画全体が少し遅れている。このため、物品の購入が遅れているので次年度使用額が生じた。
平成30年度は、前年度未実施の実験を含めて研究を遂行する。また、並行して、最適な速度バランスを有するトレーサの探索も行う予定であり、その研究費は、主に物品費として、合成用の試薬やHPLCカラム、動物投与試薬および実験動物に使用する。
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