2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K10303
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
菊池 達矢 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 主任研究員(定常) (90392224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線内用療法 / 軟β線 / 腫瘍 / 14C / 35S |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、がんは本邦における死因の第1位であり、死因の約30%を占める。また、欧米などにおいてもがんは死因の上位に位置することから、がんを対象とした種々の治療法が国内外を問わず精力的に研究されている。この治療法のうち、放射性核種を患者に投与することでがんに集積させ、がんの内部から放射線を照射する方法(放射線内用療法)は、特定のがんに対して非常に有効な治療法である。従来の放射線内用療法では高エネルギーのβ-線を放出する核種が用いられ、また近年では、飛程が短く正常組織への影響が少ないα線やオージェ電子放出する核種を利用する研究が盛んに行われている。しかしながらこれらの核種の利用においては、化合物や抗体への核種の導入や、体内安定性などの点で克服すべき課題も多い。そこで本研究では、これらの課題を克服し得るもののこれまで注目されてこなかった、軟β線と呼ばれる比較的低いエネルギーのβ-線を放出する14Cや35Sを利用した放射線内用療法の可能性について検討を進めている。 平成28年度では、14Cや35Sのβ-線の細胞への影響を検討することで、放射線内用療法に用いる14Cや35Sを導入した化合物や抗体の設計や選定に有用な指針を得ることを目的として、まず軟β線による細胞障害のシミュレーションを行った。その結果、比較的低いエネルギーのβ-線においてもDNAに対する直接的作用を生じることが推定された。また、正常組織に対する軟β線の影響についてアミノ酸の一種であるα-アミノイソ酪酸の14C標識体を用いて検討したところ、腫瘍の増殖抑制効果が認められる投与量においても一過性の体重減少はあるものの、正常組織に障害は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い軟β線による細胞障害のシミュレーションを行い有用な知見を得たが、軟β線による細胞障害に主として働くと考えられている間接作用のシミュレーションに関してはさらなる検討が必要である。一方、最終年度に実施を計画した11C標識について、アミノ酸の標識に有用な[11C]HCNの簡便な製造法を確立することが出来たことから、今後の研究も円滑に遂行できると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、臨床において14Cよりも有用と考えられる35S標識化合物の設計を行う。35S標識化合物の候補にアミノ酸の類似物であるタウリンがあるが、タウリンは平成28年度に確立した[11C]HCNにより11C標識が可能と考えられる。そこで35S標識タウリンの体内動態を追跡するための11C標識体の合成も行う。また、軟β線による細胞障害に主として働く間接作用のシミュレーションを推進する。
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Causes of Carryover |
おおむね順調に研究が進んだものの、当初計画していた国内学会の参加を見送ったため旅費相当分の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度から平成29年度に繰り越す研究費は比較的少額であることから、平成29年度の研究費と併せ、計画に従った研究を推進する。
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