標識アミノ酸の設計・合成-新規アミノ酸PETトレーサーの開発

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K10304
• Research Institution: National Center of Neurology and Psychiatry
• Principal Investigator: 加藤 孝一 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 室長 (50382198)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: PET / アミノ酸 / デュアルイメージング

Outline of Annual Research Achievements

アミノ酸はペプチドやタンパク質の構成要素であり、代謝を介してクエン酸回路の中間体、あるいは神経伝達物質を供給する。疾患によってペプチドやタンパク質の合成、ATP産出やシナプス化学伝達は亢進・抑制することから、アミノ酸の代謝や細胞への取り込みの変化が様々な疾患診断の指標になると考えられる。この様な背景から、11C標識アミノ酸はPET画像診断の有力なツールとして注目されてきた。本研究では11C標識アミノ酸の合成法、およびとがん、脳神経疾患等を対象とした疾患診断トレーサーの開発を行う。
平成28年度はアルキル側鎖の炭素鎖長が異なる種々のアミノ酸に対するα位の11Cメチル標識を自動合成化した。その結果、α-11C-メチルアミノ酸類の安定供給を確保し、側鎖の構造の違いによる取込みとトランスポーターの特異性の評価が可能となった。
各アミノ酸トレーサーの細胞内への取込のトランスポーターの特異性は、11C標識AIBがシステムAにより細胞に取り込まれるのに対し、わずか一炭素増炭した11C標識IVAはシステムLにより細胞内に取り込まれることが明らかになった。
上記の結果を踏まえ、側鎖の長さへの検討はここで終了し、次いで、α側鎖の官能基の影響を調べることを目的とし、新規11C標識アミノ酸の合成・評価を開始した。本件については側鎖上においても11Cメチル標識が可能であること、およびα位の11Cメチル標識ではラセミ体が生じることから、当初の計画であったα11Cメチル化標識によるトレーサー合成にこだわらず、あらゆる部位への標識の可能性考慮しPETトレーサーを設計、合成している。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成28年度に予定していた種々のアルキル側鎖の炭素鎖長が異なるアミノ酸に対するα位の11Cメチル標識の自動合成化を可能にした。ついで、α-11C-メチルアミノ酸類の安定供給を確保した。担癌マウスを用いて小動物PETを撮像し、側鎖の構造の違いによる取込みとトランスポーターの特異性を評価した。その結果、11C標識IVAの細胞内への取り込み様式を明らかにしている。
一方、同様に28年度に予定した11C標識グリシンの合成は、自動化し常時トレーサーとして供給するには困難な点があることが判明した。そのため本計画に関連する研究は一旦停止し、上記の炭素鎖長の違いに関連したアミノ酸の取込みの結果も踏まえて、新規なアミノ酸トレーサーの開発に着手している。
このように本研究計画は概ね予定通り進んでいると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

29年度以降についても11C標識アミノ酸のα側鎖の官能基の影響を調べることを中心として、計画に述べた研究を実施する。
現在進行中の新規11C標識アミノ酸の合成・評価を実施する。評価は担癌マウスを用いて行う。
新規18F標識MALA誘導体の合成を開始する。合成が達成できた際には担癌マウスを用いて評価をすることとする。特にMALAを用いたPET-蛍光デュアルイメージングは、グリオーマに対するイメージガイド手術に有効と考えられているため、本件に関連したモデルの作成にも可能な限りチャレンジしたい。
新規なアミノ酸骨格の分子を標的としたトレーサー開発を行う。本件では通常のアミノ酸トレーサーでは標的とならない炎症モデルを研究対象としトレーサーの評価を行う。

Causes of Carryover

２８年度はα側鎖長の違いによるアミノ酸トレーサーの取込みの検討に関して、予想外にわずか一炭素の鎖長違いで特異性がことなることが判明したため、本計画に関連する物品を購入することがなかった。

Expenditure Plan for Carryover Budget

２９年度以降、新たに側鎖の官能基の違いによるアミノ酸トレーサーの取込みの検討を行うことを計画している。翌年度分として請求する助成金を本計画に関連する物品費に当てる予定である。