2017 Fiscal Year Research-status Report
肝臓におけるリンを用いたMRスペクトロスコピーの確立とその臨床的有用性の検討
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16K10318
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯田 裕義 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (20309214)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MRスペクトロスコピー / 肝臓 / 糖代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の検討にて、肝実質の31P MRスペクトロスコピーの至適撮像条件が固まってきたので、今年度はまず最適なポジショニングについて検討した。撮像には、シーメンス社製3T MRI 装置、31P/1H loop RF coil (12 cm 径, 高島製作所) を使用した。同一ボランティアを対象に仰臥位、腹臥位、右側臥位にて撮像し、ATPスペクトルピークの比較を行った。 ATP のスペクトルピークは、右側臥位、腹臥位、仰臥位の順で良好な結果が得られた。右側臥位では安定して良好なスペクトルが得られた。腹臥位では、半数で良好なスペクトルを取得できたが、半数では肝臓-コイル間の距離が広く、信号強度の低下が確認された。仰臥位では、スペクトルの信号強度が低い結果となった。仰臥位では、腹壁の動きが原因で良好なスペクトルが取得できなかったと考えられる。腹臥位と右側臥位では、腹壁の動きを抑制できるため、仰臥位と比較し、良好なスペクトルの取得が可能であったと考えられる。しかし、腹臥位では検査中の被験者負担が大きく、皮下脂肪が多い場合や腹直筋が発達した場合に、肝臓-コイル間距離が広がり、信号強度低下がみられた。良好なヒト肝臓 31P スペクトルを取得するために右側臥位が最も適したポジショニングと考えられた。なお本内容は、第45日本磁気共鳴医学会にて、発表した。 続いて本年度より、糖尿病患者における31P を用いた肝臓MRスペクトロスコピーの臨床的有用性の検討を開始した。同意を得られた糖尿病患者に対し、上記の検討で確立した至適撮像条件で31P を用いた肝臓MRスペクトロスコピーを、糖尿病治療食での食事療法直前と食事療法開始3週間後の2回撮像した。直接測定した肝臓内のATP等のスペクトルデータを31P MRスペクトロスコピー専用のソフトで現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝臓における31P MRスペクトロスコピーの研究報告は少なく、撮像条件の検討も1か ら始めないといけないので、31P MRスペクトロスコピーの至適撮像条件の確立に時間を要したものの、撮像体位を含めた31P MRスペクトロスコピーの至適撮像条件は固まることができた。さらにコイルの反対側に複数のP化合物を含有するファントムを設置した状態で31P MRスペクトロスコピーを撮像することで、直接測定した肝臓内のATP等のスペクトルデータを半定量的に評価する方法も確立しつつある。今年度までの検討で確立した至適撮像条件で31P を用いた肝臓MRスペクトロスコピーを用い、本年度より糖尿病患者における31P を用いた肝臓MRスペクトロスコピーの臨床的有用性の検討も開始できたので、おおむね順調にすすんでいると思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の3年目にあたる平成30年度には、糖尿病患者での31P を用いた肝臓MRスペクトロ スコピーの評価を引き続き行う。コイルの反対側に複数のP化合物を含有するファントムを設置した状態で31P MRスペクトロスコピーを撮像する。31P MRスペクトロスコピーは糖尿病治療食での食事療法直前と食事療法開始3週間後の2回撮像し、直接測定した肝臓内のATP等のスペクトルデータを半定量的に評価する。これら複数のスペクトルデータを肝臓の糖代謝及びリン脂質代謝に関する他の評価項目の結果と対比検討する。最終的には肝臓の糖代謝及び細胞膜のリン脂質代謝の変化を評価する方法として、31P を用いたMRスペクトロスコピーが有用であるかを検討する。 可能であれば、糖尿病治療薬と期待されている各種薬剤(特に受容体作動薬、受容体阻害薬) にて治療予定の糖尿病患者にも応用する。糖尿病治療薬投与前後で、肝臓における糖代謝を直接測定し、投与前後での変化が評価できるか検討し、各種薬剤の効果を直接確認できるかについても探求する。
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Causes of Carryover |
(理由)昨年度は、31P MRスペクトロスコピーの至適撮像条件の確立に時間を要したものの、撮像体位を含めた31P MRスペクトロスコピーの至適撮像条件は固まることができた。さらにコイルの反対側に複数のP化合物を含有するファントムを設置した状態で31P MRスペクトロスコピーを撮像することで、直接測定した肝臓内のATP等のスペクトルデータを半定量的に評価する方法も確立しつつある。ただ半定量的評価方法の検討は、現在進行形のものであること、コイル作成のための費用の一部が未使用になったのが、次年度使用額が生じた大きな理由である。また成果発表も限定的であったため、その費用も当初の予定より少額であったため。 (使用計画)研究の3年目にあたる今年度は、糖尿病患者での31P を用いた肝臓MRスペクトロスコピーの評価を引き続き行う。可能であれば、糖尿病治療薬と期待されている各種薬剤(特に受容体作動薬、受容体阻害薬)にて治療予定の糖尿病患者にも応用する。糖尿病治療薬投与前後で、肝臓における糖代謝を直接測定し、投与前後での変化が評価できるか検討し、各種薬剤の効果を直接確認できるかについても探求する。ある程度の数の症例が得られた時点で、その結果を評価する。これらの解析のための費用及び成果発表のための旅費に使用する計画である。
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