2016 Fiscal Year Research-status Report
マルチモーダル磁気共鳴イメージングを用いた脊髄脊椎疾患の評価法の確立
Project/Area Number |
16K10328
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
堀 正明 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40334867)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 脊髄 / MRI / 定量化 / 髄鞘イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
新たな、より恣意性の低い定量的な脊髄の解析手法である、spinal cord tool boxの導入を行い、それを用いた脊髄の各種MRI画像の定量値に関するより客観的な解析手法の構築およびその妥当性の検討を行った。 上記spinal cord tool boxの導入に関しては、2016年6月、カナダのモントリオールで行われた脳および脊髄組織におけるイメージングのワークショップに参加し、このtool boxの製作者である研究者らと直接検討を行い、その導入方法、有用性や妥当性に関する情報収集を行った。 また、当院における脊髄脊椎の撮像手法の検討として、軸索のイメージングとしては拡散強調像、特に脳と異なる解剖学的な特殊性を考慮した磁化率アーチファクトの低さや信号雑音比の担保を考慮したうえで、Simultaneous Multi-Slice(SMS) Readout Segmentation of Long Variable Echo-trains(RESOLVE)EPIを採用し、その撮像パラメーターの検討および至適化を行った。髄鞘のイメージングとしては、T1値計測によるものや磁化率移動(Magnetization transfer, MT)を用いた撮像方法を導入し、同様に撮像パラメーターの検討および至適化を行った。また、いずれのデータも後処理としての画像の構築が必要であるが、それに関しては先行論文を参照の上Matlabなどの数理計算ソフトを用いて独自に構築を行った。 また、実際に取得した正常および疾患群のMRIデータより、特に髄鞘や軸索のイメージングに比重をおいた定量値の初期的な検討結果に関して、2016年11月の北米放射線学会にて、ポスター発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、解析手法は特に髄鞘の定量化イメージングが当初の予想より複数可能となった結果、その手法も多岐にわたり、特にT1値および2あるいはそれ以上のMRI緩和定量値の組み合わせ(例:T1,T2およびプロトン密度など)による手法も複数可能となったことで、その撮像時および解析時における様々な条件の至適化や、正常値における妥当性の検討やそれぞれの手法における比較検討に若干時間がかかっているものの、総じてデータの解析そのものは順調に進行しているといえる。 また、他の撮像手法として、軸索のイメージングとして現状用いているSimultaneous Multi-Slice(SMS) Readout Segmentation of Long Variable Echo-trains(RESOLVE)EPIのような高度の新技術が可能となったことで、より高速かつ効率よくデータ収集が可能であるが、現状でも常に安定した完全な画質とは言い難く、結果軸索の定量値は症例によってはやや安定していない。従って、上記のような先端技術の使用を前提とした脊椎脊髄拡散MRIの撮像条件のより至適な条件、あるいは新たな画像補正(ノイズ除去等を含む)や解析手法を模索する必要がある。 また、脊髄の疾患群における臨床におけるデータに関しては、頻度の高い変形性脊椎症におけるデータは比較的良好に蓄積され、その結果の一部からは本疾患に伴う軸索や髄鞘の変化が初期経験としての結果を提示しうる程度までに至っているが、その他の個々の疾患(腫瘍性病変や血管性病変など)におけるデータ数が統計学的処理には実数が不十分なものもあり、今後もデータ収集が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現状の研究遂行に関して、基本的な方針に大きな変更はなく、引き続き脊椎脊髄におけるMRIデータの収集を、病的状態にある場合、および健常ボランティアで行う。研究計画当初と最も大きく異なる点は、従来脊髄の画像解析は主に観察者の主観が入りやすい手法が主であったのに対して、spinal cord toolboxのような、比較的客観性の高いといえる解析手法の導入が行われたことである。また、この内部には多数の健常者のデータより作成された標準脊髄といえるようなアトラスも内包されており、より高度かつ普遍性の高い研究、解析が可能となったものと考えられる。 また、新たに複数の撮像手法(例、ミエリンイメージ)や解析手法(例、複数の拡散のデータ解析)が可能となってきているが、場合によっては従来とは異なるMRIにおけるデータ収集が必要となる場合があり、実現可能なデータ取得時間内で、その有効性、妥当性を検討したうえで、データ取得の方法の変更を行う。実際、現状のデータ収集方法が最善とは言い難い面もあり、さらなる撮像時間短縮やより精度の高い定量値を可能とするようなデータの取得方法は検討する必要がある。 さらに、他施設のMRIあるいは臨床指標に関するデータに関して、一部他の機関からの協力の申し出、試験的なデータ提供が既に行われているので、他の研究機関との情報交換や解析結果の共有などを、今後積極的に推進していく。 本研究は、マルチモーダル磁気共鳴イメージングを用いた脊椎脊髄疾患の評価方法の確立が第一義であるが、その研究背景で最も重要なものは脊髄脊椎病変内の微細な構造変化の観察や可視化、およびイメージングと臨床指標との相関および関連であり、特にその点に関してもデータの取集および解析、統計を引き続き遂行する。
|