2016 Fiscal Year Research-status Report
がん幹細胞を標的とした重粒子線および温熱治療の基礎的研究
Project/Area Number |
16K10341
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高橋 昭久 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 教授 (60275336)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線科学 / 重粒子線 / ハイパーサーミア / がん幹細胞 / 感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの治療効果向上には、「がん幹細胞」を制御することが重要である。がん幹細胞は普段分裂を停止しており、DNA修復能(NHEJ修復)と生存シグナル(Akt生存経路)が亢進しているため、通常の治療が効きにくく、再燃・再発・転移の原因になることが報告されてきた。これまでに我々は、温熱ではNHEJ修復を、重粒子線ではAkt生存経路を抑制することを見出してきた。最近、Lin28未分化誘導経路は胚性幹細胞で特異的に発現し、分化の際は発現減少することからヒト胚性幹細胞の未分化マーカーとして知られ、Akt生存経路を亢進してがん幹細胞化に関与することが報告され注目されている。そこで、Lin28未分化誘導経路を遺伝子操作したがん幹様細胞を利用して、重粒子線と温熱による治療効果の向上を目指して、がん幹細胞を標的とした殺細胞効果を高める方法を明らかにすることを目的とした。 数あるがんの中でも、悪性黒色腫はX線抵抗性を有し、進行の早い難治性のがんとして知られている。悪性黒色腫G361, A2058, A375, SK-MEL5を用い、内在性Lin28の発現量の少ないG361およびSK-MEL5細胞に、Lin28未分化誘導経路を遺伝子操作した悪性黒色腫細胞を作製し、(1)がん幹細胞形質の確認(スフェア形成能) 、(2)重粒子線による感受性をコロニー形成法で解析し、それぞれの親株と比較した。その結果、Lin28強発現の悪性黒色腫細胞はスフェア形成能が高く、X線に抵抗性であるものの、重粒子線には親株と比べても感受性に大きな違いは認められなかった。X線と比べて重粒子線のアドバンテージを示唆した。 また、これまでに温熱の生物影響の基礎的研究をすすめ、温熱はNHEJ修復を抑制して、HR修復を阻害することで感受性が高まることを明らかにし、論文発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに温熱の生物影響の基礎的研究をすすめ、温熱はNHEJ修復を抑制して、HR修復を阻害することで感受性が高まることを明らかにし、当初より早く、論文にまとめることができた。また、Lin28未分化誘導経路を遺伝子操作した悪性黒色腫細胞を作製し、(1)がん幹細胞形質の確認、(2)重粒子線の感受性を明らかにすることができ、これらの結果についても、当初より早く、論文を投稿することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に作製した細胞を用いて、(1)重粒子線+NHEJ阻害剤併用、(2)温熱+Akt阻害剤併用による感受性を、それぞれの親株と比較検討する。さらに、低酸素・低栄養状態での重粒子線および温熱処理によるDNA損傷生成量の比較検討を新たに計画することとした。 なお、ポスドクが帰国したため、その対応策を検討する。
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