2017 Fiscal Year Research-status Report
肺ラジオ波焼灼術効果判定におけるトリプトファン代謝物質の有効性に関する基礎研究
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16K10354
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中田 博 宮崎大学, 医学部, 講師 (00363599)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ラジオ波焼灼療法 / 肺 / 肺腫瘍 / 家兎 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺ラジオ波凝固療法においては、Safety marginを確保する目的で周囲正常肺実質を含めた焼灼を行うため、焼灼範囲には炎症性変化や出血、無気肺が混在する。このため、ラジオ波凝固療法直後に撮影したCTでは実際の腫瘍よりも拡大した高吸収域が出現する。この高吸収域は3ヶ月~1年をかけて緩徐に縮小し、長期間残存することもある。長期経過観察によるサイズ変化で治療効果を判断せざるを得ない場合が多く、治療効果判定の難しさが指摘されている。我々は、抗炎症剤投与を併用することで上記の問題を解決できるのではないかと仮定した。 経皮的ラジオ波凝固療法を家兎を用いた動物実験を計画した。抗炎症剤は臨床でも使用されているトラニラスト(トリプトファン代謝物質)を選択した。ラジオ波発生装置はRF2000(RTC社製)、電極針はLeVeen(Boston Scientific)電極針17G(シャフト長15cm,展開径2cm,電極針8本)を使用した。家兎肺へ電極針を穿刺し、半展開させた状態で焼灼部位の熱凝固を示すroll-offの状態まで通電を行った。トラニラスト投与群(300 mg・kg body wt-1・d-1)とプラセボ投与群に分け、治療後翌日,1,2,4週目に肺を摘出、組織学的評価を行った。組織学的に中心部の凝固壊死領域とその辺縁のうっ血帯と呼ばれる出血、炎症領域が認められた。 トラニラストの薬理作用として炎症や免疫反応抑制、サイトカイン(TGF-β1)の産生抑制による線維芽細胞増生・コラーゲン合成抑制、vascular endothelial growth factor (VEGF)に誘発される血管透過性と血管新生の抑制効果が知られている。うっ血帯の領域を測定し、免疫染色にてうっ血帯におけるTGF-β1産生の程度を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物実験を行う上で、動物愛護の観点から苦痛を与えない実験モデルの確立が必須である。家兎は肺ラジオ波焼灼術を行える最小の動物と言えるが、鎮静薬が効果を示す閾値の範囲が狭く、致死量に達しない程度に鎮静をかけるのは難しい。また、肺内には痛覚が無いが、胸膜に発熱が及ぶと苦痛を与える要因となる。そのため安定した実験体系を確立するのは難しい。 また、家兎に最適化された免疫染色用抗体は限られており、最適な染色性を示す抗体の選定に苦慮している。 以上の理由で研究の進行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
家兎動物実験における安全な鎮静・除痛の方法を確立する。これまで麻酔薬の持続静注にて鎮静を行っているが、吸入麻酔など他の方法も検討する。 家兎とヒトとの間には肺容積の差があり、ラジオ波焼灼術の焼灼プロトコールも体重・体表面積に合わせ、調整する必要がある。焼灼開始直後より高出力で通電すると電極針周囲の肺組織の水分が急速に失われ、早期に凝固壊死に陥り通電できなくなる状態「roll-off」に達し、焼灼域が想定よりも小さくなってしまう可能性がある。最適な焼灼域が得られるような電気エネルギーの初期出力量(ワット)と経時的な出力上昇の程度・間隔を次年度以降も研究していく。具体的にヒトであれば20ワットより焼灼を開始するが、家兎の場合はより小さな出力量(5~15W)から通電を開始することで、電極針の展開径内で均一な焼灼域が得られるものと推測される。 今回評価したTGF-β1抑制に加え、vascular endothelial growth factor (VEGF)抑制効果も周囲の炎症性変化や腫瘍増殖の抑制に寄与するものと推測される。次年度以降は、ラジオ波焼灼療法におけるトラニラストの血管新生抑制作用を評価する予定である。
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