2017 Fiscal Year Research-status Report
がん治療を目指した重陽子照射で発生する高速中性子を用いたCu-67の新たな製造
Project/Area Number |
16K10374
|
Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
橋本 和幸 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (80414530)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 靖彦 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60252425)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | RI製造 / 加速器 / 中性子 / がん治療 / 銅67 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、加速器中性子によって製造したCu-67の実用化を目指し、基礎研究で得られた高純度Cu-67分離精製技術を発展させ、Cu-67製造システムの基盤技術を完成させることを目的とする。昨年度の結果から有用性が認められた3段階カラムクロマト分離法によって得られたCu-67溶液中のCuの全化学量をDOTA標識法により求め、Cu-67の比放射能を評価した。その結果、実用規模重陽子加速器(40 MeV, 2 mA)で製造するCu-67の比放射能は、陽子反応を利用した従来法で製造されたCu-67に比べて数倍高いことが認められた。また、今後取扱う放射能量が増大した場合、分離装置の遠隔操作が必要となるため、装置内の流路切り替えに使用している手動式コックを電磁弁に変更するための装置を試作し、電磁弁を利用した場合の溶液の流れなど、基本的作動試験を行った。 さらに、大量ターゲットの分離可能性を有するCu-Zn熱分離法の検討を開始した。真空ポンプで減圧した石英管内に試料(Cu, Zn)を入れ、電気炉で加熱して蒸気圧の高いZnを昇華させ、Cuを残す分離法である。加熱条件(温度、時間)を検討した結果、1時間以内の加熱で、約90%のCu-67を残しつつ、99%以上のZnを除去することが可能であった。本結果から、熱分離法により、Znの化学量を短時間に少量化することが可能であり、その後、小スケールのカラム分離法を適用することにより、残った少量のZnとCu-67の分離を短時間に達成できる目途が立った。 Cu-67標識薬剤の基礎検討として、神経内分泌腫瘍の次世代診断/治療薬の開発を念頭に、somatostatin (SST)誘導体を基本構造に持つ新規化合物を設計、合成した。非放射性Cuを配位させた複合体(Cu-SST)による物性評価では、脂溶性、タンパク結合率ともに良好な結果を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、3段階カラムクロマト分離手順の最適化に加え、更なる大量製造法の観点から熱分離法の検討を行い、その有用性を見出した。加えて、製造したCu-67の比放射能評価を実施し、加速器中性子製Cu-67の比放射能は、陽子反応を利用した従来法で製造したCu-67よりも数倍高いことを明らかにする等、本課題で開発している加速器中性子製Cu-67製造分離法の有用性をさらに示すことができた。さらに、分離装置の遠隔・自動化を見据えた検討も実施した。 Cu-67標識薬剤の基礎検討では、4種類の薬剤候補化合物の合成に成功し、良好な物性を有することを明らかにした。 Cu-67の製造に利用していた量研機構 高崎研サイクロトロンの不具合による性能低下(重陽子エネルギーの低下等)が継続中であるが、平成29年度は東北大学サイクロトロン加速器及び原子力機構タンデム加速器を利用することができたため、当初予定通りの実験が実施できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までに得られた結果を基にして、熱分離法とカラム法を組み合わせた分離法の検討並びに遠隔自動化の検討を進め、加速器中性子によるCu-67製造・分離システムの確立を図る。そのため、Cu-67の製造のため、平成30年度も引き続き、東北大学サイクロトロン加速器及び原子力機構タンデム加速器の利用申請を行う。 また、Cu-67標識SST誘導体を合成し、担がんモデルマウス実験等でがん診断/治療薬剤としての有効性を基礎的に検討する。
|
Causes of Carryover |
今回分子設計したSST誘導体のうち、合成過程中の副反応により合成することができないものがあった。そのため、分子設計を変更したことにより、Cu-67を用いた標識条件検討、担がんモデルマウスにおける腫瘍集積性の検討は30年度以降に実施することになり、次年度使用額が生じることとなった。 30年度はCu-67 標識SST誘導体を合成し、担がんモデルマウスにおける腫瘍集積性を検討する。Cu-67の製造とヌードマウスの購入で全額を使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)