2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒト化マウスを利用した高放射線障害治癒効果をもつ間葉系幹細胞の模索
Project/Area Number |
16K10377
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
滝澤 和也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線障害治療研究部, 研究員(任非) (20739388)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 造血幹細胞 / 放射線障害 / ヒト化マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、超免疫不全マウス(NOG)にヒト造血幹細胞(HSC)とヒト間葉系幹細胞(MSC)を共移植することによりヒトの造血環境を再現したヒト化マウス(huNOG)において、MSCによりもたらされる複数の組織損傷治癒効果を評価するためのマウスモデルを構築することを目的とする。 平成29年度には、課題となっているNOGマウスでのヒト骨髄単核細胞(BM-MNC)由来のHSC(CD34陽性)とMSC(CD271陽性)の生着率を上げるための検討を行った。しかし、現在までのところマウスの下肢大腿骨内にHSCとMSCを直接注入することによる、6ヶ月長期のヒト造血細胞の生着は認められなかった。またFACS解析の結果からは骨随以外の臓器についてもヒト細胞は少数か、若しくはほとんど認められない。移植した細胞の造血能力はコロニーアッセイにより確認しており、移植した細胞数から考えても予想される生着率からは著しく低いものとなっている。また、移植マウスの大腿骨において、対象マウスに比べ、むしろ細胞数が減っていることが示唆されたため、移植方法の根本的な見直しが求められた。 他方、より治癒効果の高い細胞特性を有するMSCを選別・作出する課題の一環として、ヒトiPS細胞から誘導間葉系幹細胞(iMSC)への分化誘導の検討を続けた。複数の誘導法を試みた結果、7株中6株をiMSCとして分化させることが出来た、特に2株はいずれの条件においても、効率良くiMSCへと分化し、安定した形質まま良好に継代できることが分かった。対して7株中1株は誘導直後にはFACS解析によりiMSCとしての表現系を示したが、継代することはできなかった。現在、引き続きin vitroにおいて放射線障害に対する防護効果の有効性を複数のヒト組織由来のMSCとの比較から検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では、本年度までにhuNOGマウスを用いた放射線障害評価モデルを確立し、MSCのHSCに対する放射線障害防護・治癒効果を検証している予定であった。しかし、依然として照射実験を行うだけのhuNOGを揃える事が出来ず、in vitro実験に支障が出ている。そのため、放射線障害に対する防護機序を検討する方法は、主にヒトiPS細胞から誘導されたiMSCを用いたin vitro実験となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の趣旨として、マウス大腿骨内にヒト骨髄内の造血環境を再構築することを始めの目的としていたため、移植細胞を単一ドナーMNCから得られるHSCとMSCに限定していた。しかし、現状を鑑み、実験の再現性を得るためには、より高い生着率が見込めるドナー細胞、もしくは移植法に変更する必要がある。近年ヒト造血細胞のソースとして臍帯血由来の造血幹細胞が用いられることも多くなってきた、臍帯血からは同一ドナー由来の幹細胞を大量に得られるという利点があるため、本研究においても検討に値する。 huNOGマウスの生産が改善された後、γ 線照射実験を行い、骨髄内のヒトHSCへの影響を評価するが、造血障害の回復程度を測定するには長期間の解析が必要となるため、比較的短期間に造血障害への影響を評価出来るコロニーアッセイ等のin vitroによる解析を先行する。また同時に、骨髄、肺、胸腺、リンパ節、脾臓、皮膚、小腸上皮などの組織を採取し、病理組織学的に放射線障害の程度を評価する。 他方、放射線障害防護効果の高い機能的なMSCを選定する試みについては、iPS細胞から分化誘導されたiMSCが組織由来のヒトMSCと同様な生物活性を有していることが示唆されたことから、過去の論文において組織障害に対して有用性が報告されているMSC内の亜集団とも比較し、有効性の基軸となる作用機序の解明を進める。 更には、各組織の障害防護に対して有効性の高いと予想される分子を選択し、遺伝子改変技術を用いたMSCへの遺伝子導入を行う。in vitroにおいて目的分子の制御を確認した後、実際に生体内において組織障害防護に寄与するかを本研究で構築した放射線障害モデルを用いて検証する予定である。
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